「キングダム」の名言・台詞まとめ

マンガ「キングダム」の名言・台詞をまとめていきます。

 

キングダム

1巻

上古より幾千幾万の時空(とき)が流れ、聖者の刻(とき)は終わった。(ナレーション)

 

その時代──人間の欲望は解放されていた。
五百年の大戦争時代、「春秋戦国時代」である──。(ナレーション)

 

「えーっとこれで…」
「333勝332敗587引き分けだな!」(漂)

 

「(聞かれても)かまうもんか! もう限界だ!」
「あいつらみんなぶんなぐって、こんな家出て行ってやる!」(信)

 

「まだ早い」
「二人だけで食っていけるほど、俺達には生活力がない」
「飢え死にするだけだ」(漂)

 

「信。そんなもん(盗賊)になるために今まで鍛えて来たんじゃないだろうが」
「バカか、お前」(漂)

 

「俺達は孤児です」
「二人とも戦争で親兄弟を亡くした」
「当然親から残された財などなく…」
「あるとすればこの頑丈な体だけ」(漂)

 

「だけどそれで十分!」
「剣さえ振れる体があれば、俺も信も十分なのです!」(漂)

 

「戦いで全てを奪われた分、俺達も戦いで奪い取る!!」(漂)

 

「俺達は早いうちに戦に出て武功をあげる!」
「これまで二人で鍛えてきた武で大功をあげる!!」(信)

 

「二人の名は中華全土に響きわたる!!」
「俺達は天下最強の大将軍になるのだ!!!」(信、漂)

 

 

「この出会い…わが秦(くに)の暗雲を切りさく出会いになるやもしれぬ」(昌文君)

 

「否!! 儂が連れて行くのは一人!!」
「漂! お前だけだ!!」(昌文君)

 

「俺は自分の力で一歩一歩踏み上がっていくために、ここまで鍛えてきた…」
「こんな裏道使うために、お前と切磋琢磨してきたわけじゃない…」(漂)

 

「なんて言わないぜ、信」
「俺は行くぞ」(漂)

 

「しばしの別れってやつさ!」
「とっとと追いついて来いよ!」
「二人の行き着く所は同じだぞ!!」(漂)

 

「痛みがない。医者は、もう……いい」(漂)

 

「(漂は)触らせねェし、一人も生かしちゃ帰さねェ!!」
「一人も!!」(信)

 

「その威勢が聞けてうれしいよ、信…」
「だけどお前に頼みたいことがある」(漂)

 

「いいな、信!! 託したぞ!!」(漂)

 

「(二人で大将軍?) なるさ!」(漂)

 

「信、俺達は力も心も等しい。二人は一心同体だ」
「お前が羽ばたけば、俺もそこにいる」(漂)

 

「信…俺を天下に連れて行ってくれ」(漂)

 

「だけど関係ねェ。何が起こっていようが…」
「そこがチンピラ共の巣窟だろうが関係ねェ」(信)

 

「漂は行けっつった。だから行くだけだ!!」(信)

 

「(化け物?) 当たり前だ」
「お前らチンピラの剣とは違うんだ」
「俺の剣は、俺達の剣は、天下に轟く剣だ!!」(信)

 

「一度(下僕に)おちるとずっとそうなんだ」
「抜け出すには剣しかない!」(漂)

 

「(漂?) 違う、政だ」(嬴政)

 

「ああ(秦王は)殺す、ぶっ殺してやる」
「だけどその前にお前だ」(信)

 

「漂を殺したお前の腹ワタ、引きずり出してやる!!」(信)

 

「何も考えるな」
「ただ──漂の無念を晴らすことだけを考えろ」(嬴政)

 

 

「ああ、下らねェ!!」
「俺たち底辺の人間には、誰が王かなんて興味ないんだよ!!」(信)

 

「二人で死合いをすると全くの互角です」
「しかし──私が勝てない猛者がいたとしても、信はその猛者に勝てます」(漂)

 

「(面倒くさい?) そうなんですよ!」
「しかし……本当に強いですよ、信は!!」(漂)

 

「大王様。もしも私が倒れた時は、信におつかまり下さい」
「あいつはきっと、誰よりも高く翔ぶ!!!」(漂)

 

「お前の罪(とが)とお前の子は、関係ない」(嬴政)

 

「次はどうする。俺を殺すか?」(嬴政)

 

「もしそうなら俺もだまってやられるわけにはいかない」
「俺を守るために死んでいった人間が、少なからずいるからな」(嬴政)

 

「漂も、そのうちの一人だ」(嬴政)

 

「(軍と戦う気?) 当たり前だ!!」
「こんな所で死ねるか!!」(信)

 

「(なぜ助ける?) あんたらの話をこっそり聞いてた。王様なんだろ、あんた」
「ってことは大金持ちだ」(河了貂)

 

「オレは秦人じゃない、はるか西の山民族だ」(河了貂)

 

「なぜか知らないけど、一族が山を追放になって黒卑村に流れ着いたらしい…」
「もう皆、死んじまったけどね」(河了貂)

 

「反乱を未然に防げなかったのは、俺にただ力が無かった」
「それだけのことだ」(嬴政)

 

「戦争をやってるんだ」
「それもかなり分が悪いな!」(嬴政)

 

「利用できるものはだましてでも利用するさ」
「下賤のガキならなおさらだ」(嬴政)

 

「自信はあっても絶対の確信がないから影を必要としている」
「はっきりそう言え」(嬴政)

 

「田舎村の下僕が一日にして王宮に仕えるなど」
「よほど大変なことが待っていると覚悟して参りましたが」
「まさかこれほどの大任をお受けできるとは夢にも思いませんでした!」(漂)

 

「(死ぬかもしれない?) 友と二人、身の程をわきまえぬ大望があります」
「もとより全てを懸ける覚悟です」(漂)

 

「お前は今、二つの岐路にある」
「里(り)に帰って下僕を続けるか」
「薄弱の王を援け、共に凶刃の野を行くか」(嬴政)

 

「お前らのバカげた夢にどちらが近いかは」
「言うに及ばんな」(嬴政)

 

「ああ、ついて行く」
「だが勘違いするなよ」
「漂のことを忘れるわけじゃない」
「王であるお前にひざまずくわけでもない」(信)

 

「俺と漂の”路”のために、お前を利用するだけだ」(信)

 

「どこへいくのォ、昌文君ン?」
「宴は城で始まったばかりでしょォォ?」(王騎)

 

2巻

「400年前の秦王”穆公”は、まれに見る”名君”だった」(嬴政)

 

「ある日、そんな穆公の軍馬が」
「山に住む野人達に殺され食われるという事件が起きた」(嬴政)

 

「(皆殺し?) いや、王は野人達に酒をふるまった」
「馬肉にあういい酒をな」(嬴政)

 

「それが穆公という王だ」
「人を愛でるのに、秦人も野人も区別ないのだ」(嬴政)

 

「しかしこの出来事は、秦国に大きな幸を呼びこむことになった」
「”山の民”の心を深くうったのだ」(嬴政)

 

「中華では一里の領土を争って数十万の人間が死んでいるとき」
「穆公は西に百里の地を開いたのだ」(嬴政)

 

「彼ら(山の民)は400年たった今も、穆公のことを忘れていない」(嬴政)

 

「仲間──か……バカ言ってんじゃないよ」
「こっちは物心ついた時から秦(平地)で育ったんだ」
「今さら山民族の仲間入りなんてできっこないだろ」(河了貂)

 

「いいのだ!」
「オレは政から大金せしめて、一人で贅沢三昧の生活を送るんだ!」(河了貂)

 

「(相手が強い?) 知ってるよ」
「だがこんなところで負けるようじゃ、この先いくつ命があっても足りないぞ」
「信」(嬴政)

 

「退がるな、信っ!!」
「不退こそがお前の武器だぞ!!」(嬴政)

 

「この王騎と戦ったら、たいていそういうクチャクチャな首になるでしょォ」
「うそだと思うんならァ、その辺の誰かで試してさし上げましょォか?」(王騎)

 

「(何を望む?) 血沸き肉踊る世界!」(王騎)

 

「なんちゃって!」
「そんな世界あるわけないじゃないっ」(王騎)

 

「だけど──もしこれからそんな世界が来るとしたら──」
「たまりませんねェ」(王騎)

 

「我が王に何の真似だ、貴様」(昌文君)

 

「脱出の手立ては万全と言っておきながら、この有様」
「全ての責任は、この愚臣に依るところであります」(昌文君)

 

「仰せとあらば今すぐこの岩で頭を砕いて果てまする」
「しかし……しかしまずは何よりも……よくぞご無事で!!」(昌文君)

 

「(なぜ参戦?) 熱き血潮、渦巻く戦いを求めて!!」(王騎)

 

「呂商の秦になってから、戦争は恐ろしくつまらないものになったわ」
「昭王の時代が懐かしくてたまらないわねェ」(王騎)

 

「ご冗談を。そんな不遜な戦争で私の血がたぎるとでも思ってるのォ?」
「私の心はとても繊細なのよォ」(王騎)

 

「あきらめるな!! 隊列を組み直せ!!」
「密集して突破をはかるぞ!!」(漂)

 

「漂殿の一声で絶望しかけた我らに、再び闘争の火が灯った」
「その姿はすでにもう──将であった」(壁)

 

「そう簡単にはいかないみたいだな」
「信、俺に力を!!」(漂)

 

「今の俺は何も分からないんだ、だから教えてくれ」
「俺はどうしたら将軍になれるんだ?」(信)

 

「ああ、分かったぜ」
「じゃあ政が玉座を取り戻した暁には、俺は土地をもらって、家を建ててもらって」
「財をもらえばいいんだな!!」(信)

 

「(敵しかいない?) だから言ったろう」
「凶刃の野をゆく薄弱の王だと」(嬴政)

 

「それでは……身分の高い者は皆弱いみたいじゃないか…」(壁)

 

「たしかに壁家は名家だが、金で地位を買ったことはない!」
「私は文武共に他より秀でていたため、殿のもとで副官を務めるに至ったのだ」(壁)

 

「文官になったとは言え、まだまだ現役武人のつもりであったが……」
「そうでもなかったようだ」
「老いとは怖いものだな」(昌文君)

 

「お前らの言い分は分かったぜ」
「次はこっちの言い分だ」(信)

 

「お前らこそ皆殺しにされたくなかったら」
「俺達を王の所までとっとと連れて行きやがれ!!」(信)

 

「話し合いに剣は必要ない」(嬴政)

 

「行け、信」
「口惜しいが、今の儂よりお前の方が役に立つ」
「王を追ってくれ、頼む」(昌文君)

 

「信、漂のことはすまなかった」
「こんなはずではなかった、許せ」(昌文君)

 

3巻

「秦人(われわれ)は山の民について考えを改めねばならんようだ」(壁)

 

「この国は外敵が近付けない天然の要害だ」
「これだけのものを造り出せる知恵と技術は決して野人と侮れるものではない」
「彼らの力は本物だ」(壁)

 

「秦国のすぐ背後にこれほど強大な世界が広がっていて」
「今まで気付かなかったとは背筋が凍る思いだ」(壁)

 

「今から四百年前、かの秦王穆公と山界が盟を結んだ刻(とき)──」
「我々の祖は友好のうちに新しい国の広がりに至る兆しを見た」(楊端和)

 

「しかし穆公が去りし後──」
「それが幻だったと気付かされた」(楊端和)

 

「祖霊の怨念を鎮めるために、現秦王のそなたの首をはねねばならん」(楊端和)

 

「非はこちらにある。過去の愚行、秦国の代表として心から謝罪する」
「だが、俺の首をはねるまでの理由にはならない」(嬴政)

 

「復讐よりも前にやるべきことは山ほどある」(嬴政)

 

「(一族の者が殺される痛み?) そんなことをする必要はない」
「俺はすでにその痛みを十分に知っている」(嬴政)

 

「山の王よ。恨みや憎しみにかられて王が剣を取るのなら、怨嗟の渦に国は滅ぶぞ」
「王ならば”人を生かす”道を拓くために剣をとるべきだ」(嬴政)

 

「全国境の廃除!」
「できないなら力づくでやるまでだ」
「戦国の世らしくな」(嬴政)

 

「(人を生かす道とは正反対?) 否」
「今まで五百年の騒乱が続いたならばあと五百年続くやも知れん」
「俺が剣をとるのは、これから五百年の争乱の犠牲をなくすためだ」(嬴政)

 

「玉座は”俺の路(みち)”の第一歩にすぎぬ」(嬴政)

 

「俺は中華を統一する最初の王になる」
「その協力を得に、山の王に会いに来た」(嬴政)

 

「我が年を重ねるごとに山界の防壁も幾重にも屈強になっていく」
「すると国の狭さを感じる」(楊端和)

 

「”戦”でも”和”でも何でもいい」
「我はただ──世界を広げたいんだ」(楊端和)

 

「無念無念って、うっせェんだよ!!」
「だいたい一番の無念は、夢見てたものが幻に終わったことだろうが!!」(信)

 

「……もしお前らが本気で死んだ奴らのことを想うのなら」
「奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!!」(信)

 

「秦王よ、一つ質問がある……我らは手荒い!」
「玉座奪還の際、王宮は血の海になるやも知れぬが構わぬか?」(楊端和)

 

「…そうやって奪われた」
「何の躊躇があろうか」(嬴政)

 

「皆の者、よく聞け」
「山界の王・楊端和は、秦王・嬴政とかつてない強固な盟を結ぶ!!」(楊端和)

 

「その盟のためにこれより不当に追われた秦王の玉座を奪還しにゆく」
「周囲の山々からも兵を集めよ」(楊端和)

 

「全軍死闘の覚悟で出陣準備!!」
「目指すは秦国…王都咸陽也!!」(楊端和)

 

「あいつがいると緊迫感もなくなるね」(河了貂)

 

「昌文君の妻子を引き渡せと?」
「しかし彼の領土はすでに私のものですよォ」(王騎)

 

「つまり領内の人間は全て私の奴隷(もの)です」
「それを渡せとは、面白いことをおっしゃいますねェ」(王騎)

 

「”勢い”は戦に勝利する要素の一つだ」
「だがそれだけで勝てるのは、せいぜい小団隊の野戦程度」(楊端和)

 

「我らはこれから秦王都に攻め込むのだ」
「敵の軍容を知り、城壁を越える策が必要となる」(楊端和)

 

「帰るぞ、咸陽へ」(嬴政)

 

「王宮の中で漂は、お前の話ばかりしていた」
「まるで自分の宝物を見せるかのように目を光らせてな」
「漂を思い出すと、その光景ばかりが目に浮かぶ」(嬴政)

 

「決着の刻(とき)だ、信!」(嬴政)

 

「天下の大将軍への第一歩だ!」
「ンなとこでコケるかよ!!」(信)

 

「楊端和、共に戦ってくれることを感謝する」(嬴政)
「感謝の言葉は勝利の後に言うものだ」(楊端和)

 

「お前らについてって、オレも手柄を上げてやる!」
「そして大金持ちだ」(河了貂)

 

「黒卑村の河了貂様がそう簡単に死ぬかよ!」(河了貂)

 

「悪いな。漂の弔い合戦兼ねてっから容赦しねェぞ」(信)

 

「束の間の栄華は楽しんだか、丞相!?」
「もう十分だな?」(嬴政)

 

「健気な大王ではありませんか」
「面白くなって来ましたねェ、ンフフフフ」(王騎)

 

4巻

「大丈夫だ。大王には殿や山の王がついている」
「私たちは私たちの仕事をするんだ!」(壁)

 

「(気合いが入ってる?) 当たり前だ!」
「漂の脱出のときからここまで多くの犠牲が出た」
「副官としてその責任は言葉にできぬほど重い!」(壁)

 

「皆の死を無駄にせぬためにも、私の生命をかけて成蟜を討つ!」(壁)

 

「(一度退がる?) その必要はない」
「矢如きに屈する山の民(われら)ではない!」
「突撃態勢!!」(楊端和)

 

「調子に乗りすぎだよ、貴様ら」(左慈)

 

「調子に乗りすぎだよ、ハゲ!」(信)

 

「君が本当に大将軍になるのだとしたら」
「君は中華統一を目指す大王の片腕となって天下に羽ばたく!」(壁)

 

「ならば、ここで死なせるわけにはいかない」
「私は一人死なせている」
「この少年は絶対に殺させぬ!!」(壁)

 

「剣は力、剣は速さ」
「共に最上を極めるこの俺は──天下最強だ」(左慈)

 

「戦況は…すごく不利だよ。すごく……」
「でも大丈夫だ!」
「だってこっちには信がいる」(河了貂)

 

「あいつはどんなにボロボロになっても負けはしない」
「どんなにボロボロになっても絶対勝つ!!」(河了貂)

 

「誰が天下最強だって!?」
「さァ、立てよ」
「誰が天下最強か教えてやる!!」(信)

 

「馬上にふんぞり返っておる割には…随分と軽い剣だな」(昌文君)

 

「余力は一刀のみ、だがそれで十分だ」
「これは木剣じゃねェ、これは漂から受け継いた王の剣だ!!」(信)

 

「壁のおとしまえだ、しっかり受け取れ!!」(信)

 

「全軍聞けェィ!!」
「戦意を断つな!! 勝利は目前だぞ!!」(嬴政)

 

「俺たちは、ただ耐えしのげばいい」
「耐えしのげ!!」(嬴政)

 

「剣が折れても、腕を失くしても、血を流し尽くしても耐えしのげ!!」
「耐えしのげば、俺達の勝ちだ!!」(嬴政)

 

「本人ガ進モウトシテイルノダ、止メルコトハナイ」
「モシソノセイデ死ンダトシテモ、ソレハソレデイイ」(バジオウ)

 

「見ろよ、いよいよだぜ」
「全てがあそこから始まったんだ──」(信)

 

「終わりだ、悪党共!」(信)

 

「オイオイ、お前こそ頭おかしいんじゃねェか?」
「秦の大王は政だ!!」
「お前はただの反逆者(クソ)だ!!」(信)

 

「二人共退がっていろ、俺がやる」
「しばし昔に戻るぞ」(バジオウ)

 

「はっきり分かってることはよォ」
「どんなにお前が偉ぶってても」
「結局身を呈してお前を護ろうとする人間は一人もいねェってことだ!」(信)

 

「それが生の現実だ…気色悪ィんだよ、てめェら」(信)

 

「もっと”剣”を信じろ、信」(壁)

 

「剣とは500年の争乱が育んだ最強の武器だ!」
「剣で倒せぬ相手無し!」(壁)

 

5巻

「戦意のねぇ奴は、寝てろ!!」(信)

 

「おどしじゃ檄にはならねェよ」
「そいつはもう立たねェ、今度こそ終わりだ!」(信)

 

「(有り得ぬ?) あるんだよ、戦争だからな」
「しかもお前が始めたんだ!」
「大人しく観念しろ」(信)

 

「残念ながらここを通すわけには参りませぬ」
「我が殿の命により、扉に近づく者は斬り捨てさせて頂きます」(騰)

 

「降りそうで降らないこの曇天」
「嫌いじゃァありませんねェ」(王騎)

 

「(大王につく?) ンフフフ、ご冗談を」
「あまりに可愛いらしいじゃれ合いが続いていたので」
「少々場を濁しに来ただけですよォ」(王騎)

 

「貴方様はどのような王を目指しておられます?」
「じっくり考えてお答え下さい」(王騎)

 

「この宝刀は不遜な言葉を許しませんよォ」
「相手が誰でありましょうとねェ」(王騎)

 

「(どのような王に?) 中華の唯一王だ」(嬴政)

 

「昭王の名を二度と口にするな!」
「それがお前のためだ」(嬴政)

 

「もし俺と共に戦いたいと願うのなら、昭王の死を受け入れ一度地に足をつけよ」
「中華に羽ばたくのはそれからだ”秦の怪鳥”よ!」(嬴政)

 

「しかし(昭王が亡くなれば)熱き夢を求める戦場は無くなります」(王騎)

 

「(他にもいる?) 口だけですよ」
「目を見れば分かります、本気で夢を描いて恋焦がれているかどうかは」(王騎)

 

「……口おしい。あと20年生きていれば…」
「夢をつかめたやもしれぬ」(昭王)

 

「王騎よ、飛ぶのはやめても牙は磨いておれ」
「お前ほどの武人が地に埋もれるのは許せぬ」(昭王)

 

「今はいなくとも、この先ワシのような王が再び現れるやも知れぬ」
「王騎よ、その刻(とき)は今以上に大きく羽ばたくのだ」(昭王)

 

「昭王よ、また熱い時代が来ようとしているかもしれませぬ」(王騎)

 

「成蟜。お前は生まれの良さが人の価値の全てと勘違いした、ただのバカガキだ」
「お前のような愚か者には決して王などつとまらぬ」(嬴政)

 

「世を知らぬ、人を知らぬ」
「だからお前はいつも唯一人だ!」
「お前では王はつとまらぬ」(嬴政)

 

「成蟜、お前は少し」
「人の痛みを知れ」(嬴政)

 

「下らぬことで血を流しすぎた!!」
「これ以上の流血は無用!!」(嬴政)

 

「全員の命を保障してやる故、直ちに投降せよ!!」
「必要最低限の犠牲をもって、反乱の決着とする!!」(嬴政)

 

「聞こえなかったのか、とっとと武器捨てて投降しやがれ!!」
「この戦ァ、俺達の勝利だァ!!!」(信)

 

「まだ戦は終わっておらぬ!」(昌文君)

 

「大王の本当の敵は呂丞相だ」
「呂氏の反対勢力である竭氏の残党は、できうる限り残す必要がある」(昌文君)

 

「(王宮の衛兵?) 冗談だろ、そんな退屈なことやってられっかよ」(信)

 

「俺は戦場に出る!」
「一こ一こ積み上げてって将軍になる!」(信)

 

「加冠すれば必ず呂氏から権力をはぎ取る」
「そして中華に出る」(嬴政)

 

「信──その刻(とき)までには必ず登って来い」(嬴政)

 

「(ボロ小屋?) 十分だ」(信)

 

「漂──何も持ってなかった俺たちがついに土地と家を手に入れたぞ」
「こうやって武功をあげて土地も家もでっかくしていくんだ」(信)

 

「最初はボロ小屋でも何でもいいよな」
「これが俺たちの最初の城だ、最初の城だ!!」(信)

 

蛇甘平原編

「う~~む、まさに平穏」
「……三か月前のあの戦いがウソみたいだ」(河了貂)

 

「信は働いて少しゃ稼ぐし、オレも山菜とか採って食費助けるし」
「何かとふつーにやっていけてるよな」(河了貂)

 

「うん、ふつーにやっていけてる」
「いーよな、こーゆーの…」(河了貂)

 

「急ぐのと焦るのは違う、明日すぐに戦場へ行けるわけでもない」
「まずは身体を治すことに専念しろ」(嬴政)

 

「焦らずとも刻(とき)は来る」
「準備だけは怠るなよ」(嬴政)

 

「(歩兵募集) よかったな、信。いよいよ初陣だ」
「派手にぶちかまして来いっ」(河了貂)

 

「(墓参り?) いや、やめとく」
「行くのは二人の夢がかなってからだ」(信)

 

「(名は)羌瘣。嫌いなことはしゃべること、以上」(羌瘣)

 

「ちょっと想像してたら気持ち悪くなった」
「こんだけの人数(15万)が殺し合いをしたら、どんな光景になるのかなって…」(尾到)

 

「四君だの食客だの、あだ名はどうでもいい!」
「そんなイカレ野郎は、ただぶっ殺すだけだ!!」(信)

 

「(後処理が大変?) では反乱そのものをなかったことにしろ」(嬴政)

 

「(城の)援軍ではない」
「うす汚い侵略者が我が魏の地を踏むことは断じて許さぬ」(呉慶)

 

「いいですか皆さん、心の準備をしておいて下さい」
「攻めるはずの秦(こっち)が後手後手に回っている」
「こういうときは大勢死にます」(澤圭)

 

6巻

「新参だろうと関係ない」
「千人将同士、遠慮なく意見させてもらう」(壁)

 

「ここは、すでに戦場だ!!」
「理解したならばその場で荷を降ろせィ!!」
「荷を降ろすと同時に心を入れかえよ!!」(壁)

 

「魏兵の血で平原を朱く染めよ!!」
「諸君らの武運を祈る!!」(壁)

 

「(自信をつけた?) 逆だ」
「あの戦い──何より痛感したのは自分の無力さ……」(壁)

 

「殿と私は長く語りあった。そして決心した」
「殿は文官の極み、丞相へ」
「私は武官の極み、大将軍になる!!」(壁)

 

「私の伍はいつも最弱と言われていますが──」
「私の伍は今まで一人も死んでいません」(澤圭)

 

「弱者には弱者の戦い方があります」
「これは卑怯ではなく戦法です」(澤圭)

 

「五身一体。私たちは”伍の結束”で生き残りましょう」(澤圭)

 

「怖い?」
「……ああ…俺はずっとこの時を待ってたからな」(信)

 

「何だ? もう息が上がってきやがった」
「初陣で力んでんのか?」(信)

 

「それだけじゃねェな、いつもより体が重い」
「空気が重いんだ、これが戦場か」(信)

 

「(援軍?) そんなもん、最初から期待してんじゃねェよ」
「自分の生きる道は自分で切り開く、それだけだろ」(信)

 

「結局このままじゃ、いずれ全滅する」
「攻めねェと道はねェ!!」(信)

 

「いろいろと気を散らしすぎだ、さっき倒した一台を思い出せ」
「お前の相手は戦車そのものだ」(羌瘣)

 

「各地で同じように戦っておるように見えるが」
「それぞれは実に多様に盤上を揺り動かす」(麃公)

 

「一の働きが十を動かし、千につながり万を崩す」
「小から始まる連鎖が大火を呼びこみ、戦局は一気に終局に向かう」(麃公)

 

「そして今、異彩を放つ場所があった」
「そういうところには”何か”がある」
「戦とはそういうものじゃのォ、皆の者」(麃公)

 

「丘を下ってくる勢いにまかせ、敵の行軍は早い」
「その波を逆につき進むのは、想像を絶する過酷な路」
「だがその分、斬り結ぶ時間は短い」(羌瘣)

 

「お前と同じだ」
「こんなところで死ぬわけにはいかない」(羌瘣)

 

「退却? 今さら退いて何になる」
「すでに3万の兵を失ったんだぞ」
「勝たねば何も残らぬ!!」(壁)

 

「先陣も後陣も騎馬も歩兵も等しく死線の上にいる」
「全ては勝利のために」
「それが”軍”というものだ」(縛虎申)

 

「貴様の頭では何が起こっているか理解できまい」
「座して謀る兵法が、戦の全てと思っている貴様の頭ではな」(縛虎申)

 

7巻

「呼吸が尽きた」
「”戻る”までしんがり頼む」(羌瘣)

 

「勇猛と無謀は違う」
「そこをはき違えると、何も残さず早く死ぬ……」(縛虎申)

 

「誰も参戦するとは言ってませんよォ」
「私はただ、あの丘に登りたいと思っただけですよォ」
「途中邪魔なものは排除いたしますが」(王騎)

 

「さすが殿、完璧な言い訳です」(騰)

 

「殿がおっしゃっていた」
「将軍自ら先頭を行くとき、王騎軍は鬼神と化すと!!」(壁)

 

「オヤァ? もうお帰りですかァ?」
「せっかく面白くなってきたんですけどねェ」(王騎)

 

「解からねェ!? 強さも怖さも」
「こ……こいつ…でかすぎて解からねェ!!!」(信)

 

「私に剣を向けた者は一人残らずこの宝刀で両断されてますが」
「覚悟はありますか?」(王騎)

 

「分かってますかァ?」
「あなた、さっきからずっと死地に立ってるんですよォ?」(王騎)

 

「”知略”対”本能”!」
「これは武将の中の永遠の題目ですよォ」(王騎)

 

「永き戦乱で軍の規模は増大し、今では数十万の戦い」
「しかし軍が大きくなればなるほど」
「それを率いる将の才力が戦の勝敗を左右する」(王騎)

 

「結局、戦は武将のものです」(王騎)

 

「どちらが是か、どちらが非か」
「これはどちらか一方の首が飛ばねば分かりかねますねェ」(王騎)

 

「(麃公軍の突撃) ンフフフ。これには呉慶さんもビックリです」(王騎)

 

「今ここにある状況は全て、あの二人が勝つために描き導いたもの!!」
「そうそれが”将軍”という存在(もの)です」(王騎)

 

「王騎将軍。ウマを一頭貸してくれ、下さい」
「大将首が見えてんのに、行かない手はない」(信)

 

「大将自ら先頭をゆくという常軌を逸したあの突撃、敵は必ず先頭の一騎を狙います」
「当然です、その一騎さえ討てば戦が終わるのですから」(王騎)

 

「しかし討てないんですよ、その一騎が」(王騎)

 

「麃公の前に立つということは、麃公軍の前に立つということ」
「将が先に立つことで極限まで昂ぶった全軍の闘気が一丸となって襲いかかる」(王騎)

 

「……これだからやめられぬのだ、戦争は!」(呉慶)

 

「丸城の皆殺しから始まり、これまで両軍多くの血を流した」
「呉慶ェ、ようやく会えたのォォ」(麃公)

 

「これから先は”退く”計略、その数は五十ある」
「だが──この呉慶、侵略者に対し退くことは絶対にない!!」
「たとえこの身が砕け散ろうともだ」(呉慶)

 

「どんな下らぬ理由で、この儂に挑んで来たァ」
「殺す前に聞いておいてやろうぞォ」(麃公)

 

「武人の血などよりも熱きものが我の中にあることを」
「この剣をもって教えてやろォ」(呉慶)

 

「侵略者に対しここまで退くことができぬとは、正直自分でも驚きだ」
「人の感情とはままならぬものだな」(呉慶)

 

「家族だけではない」
「殺されたのは…国そのものだ!!」(呉慶)

 

「下らん負け犬の感傷だな!!」
「戦場にあって身の上話など、何の意味も持たぬ!」(麃公)

 

「将ならば、敵軍にどうやって勝つか!!」
「それ以外に心囚われることはない!!」(麃公)

 

「将の責務よりも私情を優先させた貴様に待つのは、敗北の二文字」(麃公)

 

「来い呉慶!」
「秦国大将軍の名において、引導を渡してやる!!」(麃公)

 

「久方ぶりにいいものを見せて頂きました」
「これ以上の延戦は、蛇足以外の何ものでもないでしょォ」(王騎)

 

「それとも先程の一騎討ち以上のものを」
「この王騎と繰り広げる自信がおありですか?」(王騎)

 

「一度昇華した大炎、すぐさま起こすは至難この上無し!」(麃公)

 

「伽は宮女にとって戦いなんだから」(陽)

 

「大王のお子を生むと、後宮の実権を握る一人になるの」(陽)

 

「そして幸運にも最初の男子を生む事ができたら」
「太后となり後宮の内外で権力をふりまくりなのよ、向ちゃん」(陽)

 

「これはもう女の戦争だわ!!」(陽)

 

「私ね、お声がかかる理由も、お手がつかない理由もどうでもいい」
「私はお隣りで大王様が穏やかに書を読まれるだけで十分幸せなの」(向)

 

「宮女・向は大王様の”お心の伽”をさせて頂きたく思います」(向)

 

「だが静かなら誰でもよかったというわけではないぞ」
「向が隣にいるときは、なぜか心地良く書が読めるのだ」(嬴政)

 

刺客急襲編

8巻

「二年続いた至極の戦があなたのせいで台無しです」
「死んで出直してきなさい、おバカさん」(王騎)

 

「私らは商人」
「熱くなるのは商売の話だけでしょうが」(紫夏)

 

「まずは政様に会わせて下さい」
「商人が運ぶ”品”を確認するのは当然ではありませんか」
「決めるのはそれからです」(紫夏)

 

「やめろ!!」
「あなた達がやっていることは、秦人以下です」(紫夏)

 

「養父(ちち)は言いました」
「”月がいつも以上に輝いているのは、くじけぬようにはげましてくれているのだ”と」(紫夏)

 

「18年前、敵国の兵に追われていた行商・紫啓は」
「たまたま通った荒野で餓死寸前の三人の孤児を見つけた」(紫夏)

 

「養父(ちち)のあの手が私達を死の淵から引き上げてくれた」(紫夏)

 

「そして今、我々の前には一人の少年がいる」
「私達が手を差伸べねば、すぐにも殺されてしまう少年が」(紫夏)

 

「何の迷いがあろう」
「我々がすることは明白ではないか」(紫夏)

 

「この仕事、引き受けましょう」
「”闇商紫夏”の名において政様を秦にお届けします」(紫夏)

 

「(関門を)五つくぐれば秦か……」
「これは現実か?」(嬴政、子供時代)
「もちろん現実ですよ」(紫夏)

 

「違法なモノを運ぶ闇商ですからね」
「常日頃から手回しを怠ってはいませんよ」(紫夏)

 

「(腕から)矢を抜け、出られぬ」(嬴政、子供時代)
「ちょっと待て…腕を射ち抜かれて泣かない子供がどこにいる」(紫夏)

 

「穿たれた矢を抜かれて、眉一つ動かさぬ人間がどこにいる」
「この子は一体……!?」(紫夏)

 

「月を見る政様の目が紫夏は好きですよ」(紫夏)

 

「時々、夢と現実の境が分からなくなる」(嬴政、子供時代)

 

「ここからは偽装の必要はない」
「適当な所で荷を捨て、全速で国境を目指す!」
「趙の騎馬隊は速いぞ!!」(紫夏)

 

「俺は、秦へは帰れぬ」
「帰れぬ理由があるんだ」(嬴政、子供時代)

 

「痛みがないんだ!」
「痛みだけじゃない! 味もっ、匂いも、暑さも、寒さも」
「俺はもう何も感じないんだ、何も」(嬴政、子供時代)

 

「壊れてるんだよ、もう……」
「そんな奴が王になどなれるわけがない」(嬴政、子供時代)

 

「俺だってなりたかったのに」
「民を導く王になりたかったのに……」(嬴政、子供時代)

 

「なれますよ!」
「なれますよ、私がならせてみせます」(紫夏)

 

「痛みが無いのなら、私が代わりに感じてあげます」
「味もっ、匂いも全部……」(紫夏)

 

「でも、大丈夫…あなたはちゃんと感じていますよ」
「あの晩一緒に、月の輝きに感動したじゃありませんか」(紫夏)

 

「大丈夫、私がついています」
「一緒に秦へ帰りましょう」(紫夏)

 

「しっかりしろ!」
「亡霊なんていやしない!!」(紫夏)

 

「全部まやかしだ、お前の前には私しかいない」
「全部ただの幻だ!!」(紫夏)

 

「無駄なあがきはよせ」
「おれは秦へ帰り王になる」(嬴政、子供時代)

 

「あきらめるな」
「矢も尽きていない、馬も走っている」
「まだうなだれる時ではないぞ!!」(嬴政、子供時代)

 

「今は一歩でも秦へ近付くことだけを考えろ!!」(嬴政、子供時代)

 

「(本当に目覚めた?) お前が手をさしのべてくれたおかげだ」(嬴政、子供時代)

 

「義父(父上)、あなたが我々を救ってくれたように」
「私もこの子を救おうと思ったのですが難しそうです」(紫夏)

 

「自分の力を過信していた」
「亜門と江彰を巻き込んで…やはり人の命を救うことはそんな簡単ではない」(紫夏)

 

「亜門が犠牲になった今、自分が助かろうなんて思いません」
「だけどせめてこの子だけでも、頂いた命を次につなげなければ…」(紫夏)

 

「最後まで力を尽くすんです」
「あきらめずに」(紫夏)

 

「恩恵は全て次の者へ」
「どんなに些細なことでもいい……受けた恩恵を次の者へ」(紫啓)

 

「あなたは生まれの不運により」
「およそ王族が歩まぬ道を歩まれました……」(紫夏)

 

「しかし逆に言えば」
「あなたほどつらい経験をして王になる者は他にいません」(紫夏)

 

「だからきっと、あなたは誰よりも偉大な王になれますよ」(紫夏)

 

「ああ、つきものは落ちましたな~」
「瞳が…何とも、美しい…」(紫夏)

 

「紫夏が息を引きとり、昌文君らと国境を越えたとき左手に激痛が走った」
「痛みが戻ったんだ」(嬴政)

 

「痛みだけじゃない、味覚も嗅覚も全て…」
「不思議なものだな、人の体とは」(嬴政)

 

「紫夏の話をしたのは初めてだ」
「一生他人に話すことはないと思っていた」(嬴政)

 

「また俺の中で何かが変わってきているのかもな」(嬴政)

 

「俺の隊はとんでもなく大変だぜ」(信)

 

「昌文君。先の反乱鎮圧に奮った手腕、貴様の才覚を疑う余地はない」(肆氏)

 

「だが文官に転身してまだ日が浅いお前は」
「『文官の戦場』の深さに気付いていない」(肆氏)

 

「文官の世界でのし上がる気なら、常に最悪の事態を想定して事にのぞめ」(肆氏)

 

「闇夜にかくれて寝首を狙うようなクソ共は」
「全員たたっ斬る!!」(信)

 

「いろいろ工夫してんだなァ、刺客ってのは」
「ひたすら剣ぶん回してきた俺とは大違いだ」(信)

 

「だが所詮、一発芸!」
「そんなもんは何百って敵と渡り合う戦場じゃ、何の役にも立たねェぜ?」(信)

 

「覚悟しろよ、てめェら」
「あいつ(政)を殺ろうって奴は、一人も生かして帰さねェからな!!」(信)

 

「あの時と全然違う」
「成蟜反乱の戦いでは、見ていて心臓が止まりそうになったけど…」
「今はどこか安心して見ていられる」(河了貂)

 

「相手が弱いわけじゃない」
「信が強くなったんだ」(河了貂)

 

「お前の居場所はやはり戦場だ」
「お前の剣は陽の当たるところでこそ、最大限の力を発揮する」(羌瘣)

 

「だからそれ以外の余計なところには足を踏み入れるな」(羌瘣)

 

「共に戦場で戦った誼(よしみ)で忠告に来た」
「王宮には絶対に近づくな」(羌瘣)

 

「行けば必ず…命を落とすぞ」(羌瘣)

 

9巻

「敵が定まらぬ時は、常に最悪のところに目を落とす」(肆氏)

 

「今度(こたび)の事の首謀者は、今の儂にとってあの”最悪”の男だ」(昌文君)

 

「今さらお前ら(朱凶)に用はねェ」(信)

 

「……ああ…もういいぜ、羌瘣」
「今すぐ失せろ。一緒に戦場行った誼(よし)みで見逃してやる」(信)

「分かった、今すぐ立ち去る」
「王の首を持ってな」(羌瘣)

 

「安心しろ、服を斬っただけだ」
「次は胴の上下、斬り離すぞ」(羌瘣)

 

「(忠義?) はぁ? バカか、お前」
「そんなもん、俺にあるわけねェだろ」(信)

 

「戦友(仲間)だからだよ」
「共に汗と血を撒き散らしながら戦ったなァ」(信)

 

「お前如きに…蚩尤の何が分かる」(羌瘣)

 

「シユウも何も、刺客はぜーんぶ下らねェ」
「腕に自信があんなら、戦場行って真っ向から剣ぶん回せってんだ」
「バーカ」(信)

 

「図に乗るな」
「その気ならお前は10回は死んでる」(羌瘣)

 

「策は一つ」
「お前一人であの10人の相手をしろ」(羌瘣)

 

「30秒だけでいい」
「30秒で可能な限り呼吸を戻す」
「だから一人で時間を稼げ」(羌瘣)

 

「あいつの考えてることなんて分かんねェよ」
「だが羌瘣の策に間違いはねェ」
「覚悟しといた方がいーぞ、てめーら」(信)

 

「一回り分の呼吸は戻った」
「十分だ…」(羌瘣)

 

「信」
「俺達の粘り勝ちだ」(嬴政)

 

「蚩尤じゃねェ」
「こいつは秦国麃公軍第4縛虎申隊歩兵、羌瘣」
「俺の伍の仲間の羌瘣だ!」(信)

 

「女が男のフリをして生きることは」
「”そんなこと”じゃないだろ!!」(河了貂)

 

「多少面倒そうだから女を明かさない、その程度だ」(羌瘣)

 

「別にバレたらバレたで、”対処”すればいいだけのこと」(羌瘣)

 

「私より強い人間はこの世にいない」(羌瘣)

 

「オレに蚩尤の技を教えてくれ!!」
「戦場に行く!!」(河了貂)

 

「イラつく」
「言い伝えだの語りつぐだの、あげくに技を教えろだの」
「何も分かってない奴らを見ると、皆殺しにしたくなる」(羌瘣)

 

「女同士、少しはマネゴトができると思ったのか?」
「残念だが万のうち一つも、不可能だ」(羌瘣)

 

「お前達と私達とでは、生まれ落ち育った世界が違いすぎる」(羌瘣)

 

「ちょっと待て、掟は絶対ではないのか?」
「そ…そんなに軽いものだったのか?」(羌瘣)

 

「……じゃあ…何でこんなことを……」
「何で象(しょう)姉は死ななくちゃいけなかった!!」(羌瘣)

 

「(自決? 掟?) バカにしてるのか?」
「貴様ら」(羌瘣)

 

「奴だけは絶対に許さない」
「……あれから里を捨てた私にはもう何もない」(羌瘣)

 

「今の私の命は、あの女を殺すためだけにある」(羌瘣)

 

「蚩尤とか掟とか関係なく」
「一番くやしいのはその時そこにいられなかったことじゃないのか」(河了貂)

 

「オレもそれが一番怖いから、だから戦場に行きたいんだ……」(河了貂)

 

「数じゃねェ」
「戦は”数”じゃねェ、”人”だ」(信)

 

「わずか一戦でそのことに気付いたお前の勘所は悪くない」
「じゃがな、信。その”人材”も向こう(呂氏陣営)がはるかに上なのだ」(昌文君)

 

「泣き言は言ってられん」
「もう始まってしまったからな」(嬴政)

 

10巻

「まずはともかく、ご無事で何よりでした」
「大王様」(呂不韋)

 

「早速ですが大王様」
「昨夜の大王様暗殺事件の黒幕は──」
「この呂不韋めにございます!」(呂不韋)

 

「(黒幕?) 冗談はよせ、丞相」
「そのようなこと、あろうはずがない」(嬴政)

 

「早う大きゅうなりなされィ、大王」
「この蔡沢は、強き者にのみお仕えいたしまするぞ」(蔡沢)

 

「俺もこんな茶番に付き合うために来たのではない」
「上奏だ」(蒙武)

 

「六将だ。秦の『六大将軍』を復活させてほしい」(蒙武)

 

「……見くびるな」
「俺の生き様に謀反などと下らぬものはない」(蒙武)

 

「武の証明だ」
「この蒙武こそ中華最強!!」
「その証明以外、一切の興味無し!!」(蒙武)

 

「(王騎?) 関係ねェ。奴の時代はとうに終わった!」
「今さら口出ししてくるようなら、この俺の手で粉々にしてやる」(蒙武)

 

「秦国の武の威厳!」
「この蒙武が昭王の世以上のものにしてみせる」(蒙武)

 

「どうかこの場ですぐ、俺に戦の自由を持つ大将軍の称号を!」(蒙武)

 

「なぜ刺客などに頼られました」
「この李斯に言って頂ければ確実でありましたぞ」(李斯)

 

「……李斯よ。確実(それ)のどこが面白い」(呂不韋)

 

「おかしければ笑うがいい」
「これが現秦王の現実だ」(嬴政)

 

「(戦意喪失?) バカを言え」
「相手にとって不足はないと言ってるんだ」(嬴政)

 

「そして気付いたんだ」
「あの時、オレは平穏を求めていたんじゃなく、孤独から抜け出したかったんだと──」
「あいつらと同じところにいたい」(河了貂)

 

「オレも戦場に行って、大金を稼ぐことにした」
「オレは『軍師』になるぞ!」(河了貂)

 

「じゃあとにかくがんばって軍師になれ、テン」
「そしたらまた一緒に戦場で戦おうぜ」(信)

 

「何をいきなりビビってんだ!」
「一日でも早く軍師になるんだろうが!」(河了貂)

 

「せっかく羌瘣が入り口を教えてくれた」
「ここから先は、オレしだいだ!!」(河了貂)

 

「天才を送る故、軍師に育てよ」
「其の子に何かあった場合、皆を殺しに行く故、気をつけよ」
「其の子の名は──河了貂也」(羌瘣の推薦状)

 

「それでは僕が聞くよ」
「大王側の君がここに来たのは、まさか諜報のためではないよね?」(蒙毅)

 

「吹き矢は僕には当たらないよ、河了貂」(蒙毅)

 

「君は僕のかわいい弟弟子だ」
「いや…妹弟子かな?」(蒙毅)

 

「戦に良い駒は不可欠」
「策を施す側からすると、特異な駒は大変貴重じゃ」(蔡沢)

 

「敵陣営の内情を詳しく知る駒──」
「無警戒に敵陣営と接触がとれる駒──」
「実にありがたい」(蔡沢)

 

「実は蚩尤よりも気になっている若者がいます」
「下僕の出身ながら、すでに百将の位を手に入れた少年──」(昌平君)

 

「信。若手の中で、私が今最も手に入れたい駒です」(昌平君)

 

「信」
「お前このままじゃ、いつか死ぬぞ」(羌瘣)

 

「お前の戦いぶりは”勇猛”ではなく”無謀”なんだ」
「今のままでは必ずお前は命を落とす」(羌瘣)

 

「言われなくたって、俺にも分かってる」
「調子に乗ってたってのも、このままじゃまずいってのもな」(信)

 

「お前にあれだけ遊ばれたんだ」
「それに気付かねェほどバカじゃねェ」
「その辺のことはちゃんと…考えてある!」(信)

 

「いいか、羌瘣」
「お前は同じ伍で魏戦を戦った仲間として」
「とっくにもう俺の百人隊の頭数に入ってんだからな!!」(信)

 

「だから次の戦までに絶対戻って来いよ」(信)

 

「どうしたらもっと強くなれるか、(王騎将軍に)教えを乞いに来ました」(信)

 

「先日、同じ伍だった奴にいいようにやられて気付いた」
「俺は自分が思っていたよりもずっと未熟で」
「しかもそれは一人で素振りしたり力仕事したりしても補えるものじゃないと」(信)

 

「しかし六将復活は無理な話です」
「残念なことに今の秦国に『六大将軍』の名に見合うほどの人物は」
「一人もいませんからねェ」(王騎)

 

「俺はあんたを超える」
「俺は天下で最強の大将軍になって、歴史に名を刻むんだ!!」(信)

 

「実際にこの目で戦場を見れることなんて、そうあることではない」
「盤上の勝負しか知らない僕にとって、学ぶことは大きいだろう」(蒙毅)

 

「我が師・昌平君もいつもおっしゃっているからね」
「実戦に勝る修行はないと」(蒙毅)

 

「まずはそこで学びなさい、童信」
「”率いること”の難しさと、”集”の強さを」(王騎)

 

馬陽防衛編

11巻

「急くな急くな、ゆるりと攻めればよいぞ」
「城は逃げはせぬ」(蒙驁)

 

「(趙の)兵は文句なしに強い」
「特に武霊王が初めてつくった騎馬隊は未だに中華最強だ」(蒙毅)

 

「だが率いる者がいなければ軍は興らない」
「趙は動けないんだ」(蒙毅)

 

「趙の目的は城取りだけではない、蹂躙だ」
「急がねば前線地域一帯から、秦人は一人もいなくなるぞ」(嬴政)

 

「両軍の兵力は数字以上に大きくひらいている…」
「こうなると秦軍はこの十万を誰が率いるかにかかってくる」(蒙毅)

 

「この兵力差は『将の力量』でしか埋まらないからね」(蒙毅)

 

「(状況は)承知している。全て任せろ」(蒙武)

 

「戦の強さには二種ある」
「”攻”と”守”だ」(昌文君)

 

「本土が手薄な中、前線地帯が崩壊しつつある今のこの戦いは」
「紛れもなく”守”を求められる戦い」(昌文君)

 

「その戦いに”守”のない蒙武が挑めば、大敗する恐れがある」(昌文君)

 

「(率いれる者が)一人だけおる」(昌文君)

 

「しばらく戦場を離れ、羽を休めてはおるが」
「”攻”と”守”双方の強さを兼ね備えた秦国最強の武将が一人」(昌文君)

 

「(王騎将軍は)私が呼んだのだ」
「『秦国総大将』を引き受けて頂くためだ」(昌平君)

 

「戦いに”攻”も”守”もない」
「あるのは目の前の敵を打ち砕くこと、それだけだ」(蒙武)

 

「お前など過去の遺物だ、俺は認めんぞ」(蒙武)
「私はあなたのことを認めていますよォ、ある程度は」(王騎)

 

「それでは皆さんにも退出して頂きましょうか」
「まだ大王ご本人より、正式に大将の任命を授かっていません」(王騎)

 

「古き作法にのっとり、大王と私の二人だけで任命式を行わねばなりません」
「これがなくては私が秦軍を率いることはありませんよォ」(王騎)

 

「実は秦軍総大将を受け出陣するにあたり」
「大王(あなた)にお伝えしておかねばならぬことを思い出したのです」(王騎)

 

「昭王より承っていた、大王(あなた)への伝言です」(王騎)

 

「馬陽を抜かれれば、惨劇は本土全てに広がるであろう」
「これは秦国存亡の危機と心得よ!」(嬴政)

 

「王騎将軍、そなたを秦軍十万の総大将に任命する!」
「馬陽を援(たす)け、我が国を踏みしだかんとする趙軍を殲滅せよ!」(嬴政)

 

「(総大将) しかと承りました」(王騎)

 

「あの大広間で大臣共の見ている中、お前に任命されるのは悪かねェ」(信)

 

「緑穂が苛立っている」
「過酷な戦いになる」(羌瘣)

 

「この部隊の大半が、あの蛇甘平原を生き残った猛者達だ!」
「俺達が力を束ねれば、どんな敵にも立ち向かえる!」(信)

 

「いいかてめェら、のこのこと攻めて来やがった趙軍をたたきつぶし」
「魏戦よりもさらにでっけェ武功をつかみ取るぞ!!」(信)

 

「昌文君、私はそろそろ昭王六将としての自分と決別しようかと考えています」
「この戦いを決着として……」(王騎)

 

「(前に進む?) そうできればと、自分に期待しているところです」(王騎)

 

「やかましい。(副将だが)前衛は俺がもらう」
「この戦、貴様の出番は無いと思え」(蒙武)

 

「ンフフ。全軍、前進」(王騎)

 

「太古の世、巫女体質の者が剣を触媒に荒ぶる神をおとし、舞い祭り」
「それを鎮めた」(羌瘣)

 

「だがいつしか蚩尤はそれを殺人の術に変化させた」
「神をおとし術者の意識は陶酔の中、舞って目につく人間を惨殺する」(羌瘣)

 

「それが蚩尤の奥義『巫舞』だ」(羌瘣)

 

「あの男(龐煖)は完全なる個」
「いや…あれはもっと……おぞましい程に純粋な──」
「『武』の結晶だ」(昌文君)

 

「あってはならんことだ」
「万にものぼる敵と戦うために、こちらも万を集め」
「高度な戦術をもって陣形・隊形を組む──それが軍だ」(昌平君)

 

「それを一人で打ち破るということは軍そのものを否定する」
「それはあってはならんことであり、起こり得ぬことだ」(昌平君)

 

「この戦いは、九年前に深く刻まれた因縁の戦いだ」(昌文君)

 

「兵も、軍も、趙も、秦も、取るに足らぬただの小事」(龐煖)

 

「在るのは天地が畏るる者が、今この地に二人居るということ」
「我の他にもう一人」(龐煖)

 

「それは天地が砕け散ろうとも許せぬこと」
「我、武神・龐煖也」(龐煖)

 

「率いれずとも大将が務まる場合はあります」
「しかもそういう変則的な戦い方は」
「万能な王騎将軍に対して極めて有効と考えられる」(昌平君)

 

「もうすぐまた戦が始まる」
「何万という人間同士が殺し合う」(羌瘣)

 

「それぞれの思いが命と重なり、想像を絶する速さで衝突し、砕け」
「朧(おぼろ)と消える」(羌瘣)

 

「思いが深いほどに、ぶつかり合う衝撃はより強く、より激しい……」(羌瘣)

 

「緑穂はそれをはかないと言うし、まばゆいとも言う」(羌瘣)

 

12巻

「甘く見すぎだ」
「蒙武という武将の力を」(蒙毅)

 

「蒙武の力は噂以上のようだが、単純な武力だけでは李白は抜けぬ」(李白)

 

「戦はまだ始まったばかりです」
「いきなり本陣など狙っても届きませんよォ」
「──まずは駒を減らすことです」(王騎)

 

「(苛烈な戦い?) お任せを」
「死闘は私が最も得意とするところです」(干央)

 

「戦を効率よく進めるためには」
「より有利に戦える地を相手より奪うことが定石です」(王騎)

 

「しかし場所獲り以外にも、良い方法があります」
「敵の有能な武将を殺していくことです」(王騎)

 

「……あの無国籍地帯での修行を通して気付いたことがある」
「何千何万という大軍勢の戦いの中で、百人って数はまさに豆つぶで小さい存在だ」(信)

 

「だが──豆つぶには、豆つぶなりの強さがある」
「すき間を抜く身軽さがあり結集すれば、決して砕けねェ石にもなる」(信)

 

「安心しましたよォ」
「ちゃんと成長しているようですね、童信」(王騎)

 

「宜しい、では褒美を一つ」
「『飛信隊』。この名をあなたの隊に与えます」(王騎)

 

「来おったな、勘違いした素人共め」
「皆の者、殺戮の刻(とき)だ」(馮忌)

 

「忘れたのか」
「この戦いに負けりゃ、趙軍は秦国内になだれこんでくる」
「そしたら馬央みてェに、そこら中で虐殺が起こるんだ」(信)

 

「馬央の赤子は一人残らず頭を叩きつぶされ」
「血の池に捨てられたそうだ」(信)

 

「お前ら、頭にたたき込んどけ」
「これはそういう戦いなんだ」(信)

 

「たかが矢の雨だ、いずれ尽きる」
「気を強く保て」(壁)

 

「今本当に恐ろしい状況にあるのは左軍です」
「背を見せて逃げる相手を撃つことほど容易なことはない」(蒙毅)

 

「退がるな!! これは敵の罠だ」
「退がっても皆殺しにあうぞ」(壁)

 

「活路は前だ!!」(壁)

 

「飛信隊の任務は、この場の敵を討つことでも百人全員が生還することでもない」
「趙将馮忌を討つことです」(渕)

 

「……そのための礎となるのなら、我々は喜んで残ります」(渕)

 

「私は残ります!」
「この場で戦う者にも将は必要ですからね」(渕)

 

「あやまるな……まだ終わってない」(羌瘣)

 

「手がらは俺がもらうが、恩賞は山分けにする」
「生きてる奴も死んでる奴もっ、全員まとめてきっちり百等分だ!!」(信)

 

「意外と私も嫌いじゃァありませんからねぇ」
「長距離戦が」(王騎)

 

13巻

「(笑って送ってやれ?) ンフフフ、その通りです」
「こういう時こそ大騒ぎですよォ」(王騎)

 

「この部隊に隊名を与えた意味が分かりますか?」
「憶えやすくするためです。味方も…敵も」(王騎)

 

「馮忌はそれなりに名の通った武将でした」
「その馮忌を討ったあなたの名はおそらく──」
「そのうち中華全土に広まります」(王騎)

 

「”守備”の……”李白”……か」
「笑わせる」(蒙武)

 

「大軍に奇策は必要ない」
「明日もこのまま主攻の左軍で打ち崩し、兵力差を拡大させる」(趙荘)

 

「(蒙武?) 別にどうということはない」
「たしかに力はある──が風評ほどではない」
「あの程度なら、十年かかろうと俺は抜けぬ」(李白)

 

「ここは俺の戦場だ」
「失せろ、王騎の犬が」(蒙武)

 

「歩兵共、昨日と同じだ。俺の背を追え」
「それだけだ」(蒙武)

 

「馬鹿が!!」
「貴様はただ相手に恵まれていただけだ」
「俺が本当の”武”というものを教えてやる」(蒙武)

 

「腕力で強わぬ相手を討つために武器を使う」
「強き武人を討つために人数を集める」
「大人数の戦いを有利にするために策を練る」(昌平君)

 

「万を超す規模の今の戦場では策が全てだ」(昌平君)

 

「だがそうあるが故に」
「全く逆のものを見て見たいと願うこともある」(昌平君)

 

「蒙毅よ、おそらくそれが体現できるのはお前の父だけだ」(昌平君)

 

「ひょっとしたらこの戦いで、お前は目の当たりにするやもしれぬ」
「”力”が”策”を凌駕するところを」(昌平君)

 

「李白よ、何を勘違いしている」
「貴様如きの首に興味はないわ!!」(蒙武)

 

「全軍に告ぐ、蹂躙しろ!!」(蒙武)

 

「あの人(父)にとっては親子なんて別に大したことじゃない」
「”中華最強”に至る」
「あの人の人生には、その一点しかない」(蒙毅)

 

「馬鹿げた話だ。今はもう戦略戦術が必須の時代だ」
「蒙武の戦い方は明らかに時代に逆行している」(蒙毅)

 

「”中華最強”という言葉自体も漠然とはしているが」
「もしそれに当てはまるような武将がいるとしたら──」(蒙毅)

 

「それは高度な知略を起こし、実践できる武将のはずだ」(蒙毅)

 

「もちろん応援してるよ」
「たった一人の父だからね」(蒙毅)

 

「僕が軍師を目指す理由もそこにあった」
「父の将としての欠けてる部分を補いたいと」(蒙毅)

 

「──が、しかしあの人には最初からいらぬ世話だったみたいだ」(蒙毅)

 

「さ──! 皆さん!」
「李牧が到着しましたよ!」(李牧)

 

「いずれにせよ、一向に姿を現さぬあちらの大将を」
「あぶり出しに行かねばなりませんからねェ」(王騎)

 

「ここにいると、たまに息がしづらくなる…」(羌瘣)

 

「ただ、みんな帰る場所があるんだな──と」(羌瘣)

 

「持ってるものは人それぞれだ」
「私は私で生きる目標は持っている」(羌瘣)

 

「仇討ちは大事だ」
「俺もそうだったからよく分かる」(信)

 

「だがな羌瘣、それで終いじゃねェぞ」
「仇討ちが済んだら、生きてるお前にはその先があるんだ」(信)

 

「お前は仇討ちほっぽって参戦してんだ」
「自分の意志でな」(信)

 

「……だったらお前はちゃんと持ってんだ」
「飛信隊っていう立派な帰る場所をな!」(信)

 

「……気にくわないことはない」
「いやむしろ、居心地は悪くない」
「だからきっと少しとまどっているんだ」(羌瘣)

 

「我は天の災い」
「ここにいるお前達はただ、運が悪かっただけだ」(龐煖)

 

「てめェ、何してくれてんだよ」
「ただで死ねると…思うなよ」(信)

 

「ほう、どうやら、我を呼んだのはお前のようだな」
「子供だが、命をもらうぞ」(龐煖)

 

「お前の意志ではなく、存在が呼んだのだ」
「我が内に潜む”荒ぶる神”は、他(た)の強者(つわもの)の存在を一切許さぬ」(龐煖)

 

14巻

「(呼吸の)”長さ”で勝てないなら、”深さ”で勝負すればいいだけ」(羌象)

 

「”超短期戦”。相手が”武神”だろうと何だろうと……」
「短期的な斬り合いなら、あんたは誰にも負けないよ」(羌象)

 

「さァ、舞うぞ緑穂」(羌瘣)

 

「そうか、そういうことか」
「お前は”神を堕とす”者か」(龐煖)

 

「あの男かと思い出て来たが…これも天の導きか」
「”神堕とし”の者よ、たしかにお前も我が敵の一人だ」
「この夜は我らのためにある」(龐煖)

 

「さァ、荒ぶる神、”宿す者”と”堕とす者”」
「どちらが天に選ばれし強者か存分に示そうぞ」(龐煖)

 

「恐れるな、緑穂」
「碧き神気を私に誘え。ただ深く、ただ激しく」
「さすればもはや、我らに敵う者は無い」(羌瘣)

 

「相手の動きを読む力は、当然お前だけのものではない」(龐煖)

 

「我より血を流せし者は久しぶりだ」
「そして刹那とは言え、死を傍らに感じたこの手応えは…」
「それこそ九年前の、あの二人以来か」(龐煖)

 

「龐煖…龐煖、お前は戦をなめるな!!」(干央)

 

「たしかにあいつはバカみてェに強ェし、武神だの何だのほざいてやがるが」
「同じ人間には変わりねェ」(信)

 

「思いっきりぶった斬れば、あいつは死ぬ」
「斬って死ぬんだったら、倒せる」(信)

 

「言われなくても危ねェことは分かってる」
「だがそれでも、戦るしかねェ」(信)

 

「ここで逃げてるようじゃ、天下の大将軍なんて夢のまた夢だ」(信)

 

「ただの油断、だが不思議な力を持つ子供だ」
「”我が神”に捧げる供物としては上出来だ」(龐煖)

 

「今夜けっこうな仲間が死んだかもしんねェが、下向く必要はねェ」
「戦争やってんだ、死人はでるさ」(尾到)

 

「いいんだよ信、みんなお前と一緒に夢を見てェと思ったんだ」
「それでいいんだ」(尾到)

 

「……これからもお前はそうやって」
「大勢の仲間の思いを乗せて天下の大将軍にかけ上がるんだ」(尾到)

 

「何でお前が謝るんだよ」
「泣くことはねェ、こいつはやり遂げた」
「立派に役目をやり遂げたんだ」(尾平)

 

「だから…涙はいらねェ」
「こういう時は……笑って…ほめてやるんだ」(尾平)

 

「ほ、本当に、よくがんばったなァっ…って……」
「到ォォォ」(尾平)

 

「少し反省だ」
「元々まじめな方ではなかったからな」
「里を出てから随分と修練をさぼっていた」(羌瘣)

 

「緑穂との巫舞で倒せなかったことが癇に障る」
「半年後には私が勝つ」(羌瘣)

 

「第4軍をやってくれたのは彼ではないようですが仕方ありません」
「我々が受けたこの悲しみ」
「とりあえずは今ここで渉孟さんに受け止めて頂きましょう」(王騎)

 

「渉孟も鱗坊も勘違いしている」
「強さの底が知れぬのは、我らが殿の方だ」(騰)

 

「今は深く考えねェようにしてる」
「今そこを考えると、この場にうずくまって足が前に出せそうにない」(信)

 

「だけど死んだ奴は、んなこと望んでねェんだ、絶対に」
「だから今は、この三十六人でどうやって武功をあげるか…」
「それしか考えてねェ」(信)

 

「武将への道は犠牲の道です」
「そこを乗り越える度に、人も隊もより強く、より大きくなるのです」(王騎)

 

「……そうならねばなりません」(王騎)

 

「本当に把握できないということが分かったのも発見ですよ」
「山間の戦いは、我々の想像以上に難しい」(蒙毅)

 

15巻

「この俺が冷や汗だと!?」
「面白い!!」(蒙武)

 

「そこが大きな間違いだ」
「”策”でこの俺は止められぬわ!!」(蒙武)

 

「ごっこじゃない」
「オレはちゃんと軍師になるんだ」(河了貂)

 

「多分お前はちゃんと理解していない」
「その本質」(カイネ)

 

「軍師とは前線で血を流す兵士よりも、はるかに苦しくつらいもの」
「そして、恐ろしいものだ」(カイネ)

 

「だがな、趙荘」
「驚くべきことだが、お前の計略よりも、俺の目利きよりも」
「蒙武の武はさらに上を行くぞ!」(隆国)

 

「今の趙軍の打てる手を網羅して考えても」
「ここから大技をくり出すことはできないと断定できます」(王騎)

 

「……しかし仮に私をおびやかす策があったとするなら」
「張り巡らされた策は恐ろしく深い」(王騎)

 

「(多くの諜報員?) だろうな、だがお前達は現に知らなかった」
「それは恐ろしいことだと思わぬか、政」(楊端和)

 

「なぜお前達は知らぬと思う?」
「何のために?」
「隠してどうする?」(楊端和)

 

「もし今、秦・趙両軍の力が拮抗しているとしたら」
「この見えぬ軍の出現で戦は一気に決着となるだろう」(楊端和)

 

「お前が本当に軍師になったなら、またどこかの戦場で出会うかもな」
「もちろん敵としてな」(カイネ)

 

「ンフフ。ここに至るまでに、けっこうかかりましたねェ」(王騎)

 

「龐煖、あなたも待ちわびたでしょォ?」
「五日……いや、九年」(王騎)

 

「決着をつけるとしましょうか」(王騎)

 

「(本陣への攻撃?) 決まっているでしょォ?」
「私ですよ」(王騎)

 

「気付きませんょ」
「現にあなた方も気付いていないでしょう?」(李牧)

 

「大丈夫ですよ、お二方」
「この戦は必ず勝てます」(李牧)

 

「どこのどなたか知りませんが、面白いしかけです」
「しかし少々、つめが甘かったようですねェ」(王騎)

 

「私がその気になれば、趙荘軍など瞬殺ですよ」(王騎)

 

「”手段”など小事」
「在るのは武神の証明、ただ一つ」(龐煖)

 

「王騎。貴様をここで殺して、我が武神たるを天にさし示す」(龐煖)

 

「それでは私もここで…」
「あなたを殺して過去のしがらみと訣別することを宣言しましょうか」(王騎)

 

「意外と軽いんですねェ、龐煖さん」(王騎)

 

「出し惜しみは無用、王騎」
「まだまだこんなものではないはずだ」(龐煖)

 

「身に受けた傷の痛みは刻(とき)と共に消え去る」
「だが魂魄に受けた傷の痛みは消え去ることはない」
「何年経とうとも」(龐煖)

 

「王騎、お前も同じはずだ」
「だからお前もここにいる」(龐煖)

 

「怒りは力、お前も思い出せ」
「九年前の奴の死に様を…」(龐煖)

 

「安心なさい、龐煖」
「あなたと同様、私の心の傷も癒えていませんよォ」(王騎)

 

16巻

「無骨な頑固じィは勝手にきっちり働くので楽チンです」(摎)

 

「私も同感です。あなた(昌文君)が摎の側にいれば安心できます」
「無骨な賢人は信頼できるというわけです」(王騎)

 

「…よく頑張ったの、摎よ…」
「王騎同様…お前も儂の宝だ」(昭王)

 

「怒りや悲しみはないよ」
「だって本当はすぐに殺されてた命だもんね」
「こうして生きてるだけで感謝だよ」(摎)

 

「(痩せ我慢?) ……うん、嘘。本当はすごく悲しい」(摎)

 

「剣は置かない」
「天下の大将軍になる!」(摎)

 

「私の戦う理由はね、本当にたわいもない、子供の約束なんだ」(摎)

 

「王騎様は天下の大将軍になって、お城をたくさんとるのですか」
「それでは摎も大将軍になります」(摎)

 

「そしてお城を百個とったら、摎を王騎様の妻にして下さい」(摎)

 

「私の居場所は戦場(ここ)だよ、じィ」
「仲間もいっぱいいる」
「それにこれからは父も見てくれる」(摎)

 

「私はやるぞ」(摎)

 

「摎、いよいよ最後の一つですね」(王騎)

 

「憶えていて下さったんだ…しかも数まで…」
「うん、そうなの。次の馬陽で百個目なんだ」(摎)

 

「天の畏るる者は地上に唯一人、我だけだ」(龐煖)

 

「なぜだ、なぜ敗れた…」
「先の戦いの傷のせいか……違う」
「傷など関係ない…あの男の方が上だったのだ……」(龐煖)

 

「我が武が及ばなかったのだっ、我が武が」(龐煖)

 

「来い、王騎」
「今の貴様を砕くために我は来た」(龐煖)

 

「傷を癒し、元の身体に戻るのに三年」
「そこから再び深山で修練を六年積んだ」
「そして李牧という男の使者が現れた」(龐煖)

 

「話に乗ったのは、この男など足元にも及ばぬ極みに達した自負があったからだ」
「およそ人の到達できぬ武の極みに」(龐煖)

 

「だがなぜに…この男の刃ははじき返すことがかなわぬ程に」
「こうも重い!!」
「この男のどこにこんな力が」(龐煖)

 

「武将とはやっかいなものなのですよ」(王騎)

 

「……十三の頃より数えきれぬほどの戦場を駆け回り」
「数万の戦友(とも)を失い、数十万の敵を葬ってきました」(王騎)

 

「命の火と共に消えた彼らの思いが、全てこの双肩に重く宿っているのですよ」
「もちろん、摎の思いもです」(王騎)

 

「山で一人でこもっているあなたには理解できないことでしょうねェ」(王騎)

 

「語るに足らぬ」
「いつの時代も、お前達は同じ思い違いをしている」(龐煖)

 

「死人の思いを継ぐなど、残されたお前達の勝手な夢想」
「人は死ねば土くれと化す」(龐煖)

 

「敗者は地に落ち、勝者は天に近づく」
「在る理(ことわり)は、ただそれだけだ」(龐煖)

 

「奴らは強さを求めるために、あらゆる欲求を斬り捨てている」
「そんな人間に勝てる者などいないと思っていたが…」(羌瘣)

 

「なぜ王騎将軍はあれほどに強いのだ…」(羌瘣)

 

「敗れた理由は、あの世で摎に教えてもらいなさい」(王騎)

 

「国を代表する大将軍の首というのは」
「その国の軍事の象徴ですからね」(李牧)

 

「それを失わば秦の武威は失落し」
「逆に趙の武威は列国の脅威となります」(李牧)

 

「これほどの死地に落とし込まれたのは二十年ぶりくらいですか」(王騎)

 

「ココココ。久しぶりですよォ、この感じ」
「本当に久しぶりに、血が沸き立ちます」(王騎)

 

「我、正に、死線に在り」(王騎)

 

「策がなければ力技です」(王騎)

 

「皆、ただの獣と化して戦いなさい」
「いいですか、ここからが王騎軍の真骨頂です」(王騎)

 

「この死地に力ずくで活路をこじあけます」
「皆の背には、常にこの王騎がついてますよ」(王騎)

 

「さすがです、龐煖」
「しかしその消耗した体では、私は倒せませんよ」(王騎)

 

「龐煖…幕です!!」(王騎)

 

「水をさされた……だから戦などはつまらぬと言うのだ」
「だがこれがお前の土俵だ、文句は言わせぬ」(龐煖)

 

「お前の負けだ、王騎」(龐煖)

 

「武器を落とすとは何事ですか」
「たとえ何が起ころうと、死んでも諦めぬことが王騎軍の誇りだったはずですよ」(王騎)

 

「将軍とは、百将や千人将らと同じく役職・階級の名称にすぎません」
「しかし、そこにたどりつける人間はほんの一握り」(王騎)

 

「数多(あまた)の死地を越え、数多の功を挙げた者だけが達せる場所です」
「結果、将軍が手にするのは千万の人間の命を束ね戦う責任と絶大な栄誉」(王騎)

 

「故にその存在は重く、故にまばゆい程に光輝く」(王騎)

 

「(何者?) ンフフフ、決まっているでしょォ」
「天下の大将軍ですよ」(王騎)

 

「王騎が死ぬと分かっていても、それを脱出させるために全員必死ですね」(カイネ)
「……亡骸を趙が手にすれば、辱めの限りを尽くすことは分かりきっていますからね」(李牧)

 

「……今の秦軍が一番怖いかも知れませんね」
「逆の立場なら、私達も死など惜しまず鬼となって戦います」(カイネ)

 

「胸の奥が痛いですね、だから戦は嫌いです」
「しかし、感傷的になって道を開けてやるわけにはいきません」(李牧)

 

「凰は正に将軍の馬です」
「あなたは今、この戦場の中で将軍の馬に乗って走っているのです」(王騎)

 

「理解したらゆっくり目を開き、目にするものをよォく見てみなさい」
「敵の群を、敵の顔を、そして味方の顔を、天と地を」(王騎)

 

「これが、将軍の見る景色です」(王騎)

 

「亡骸を辱めるより」
「これ以上味方に犠牲を出させぬことの方が大事ではないのか!」(李牧)

 

「この戦の目的は秦の侵攻でもなく、王騎軍の壊滅でもありません」
「目的は王騎の死」(李牧)

 

「これが達せられた今、これ以上血を流すことに全く意味はない」
「無意味な死だけは絶対に許しません」(李牧)

 

「戦はここまでです」(李牧)

 

「いつの時代も、最強と称された武将達はさらなる強者の出現で敗れます」(王騎)

 

「しかし、それもまた次に台頭してくる武将に討ち取られて」
「時代の舵を渡すでしょう」(王騎)

 

「果てなき漢(おとこ)共の命がけの戦い」
「ンフフフ、全く」
「これだから乱世は面白い」(王騎)

 

「…死んだのは王騎だが、勝ったという手応えはない」(龐煖)

 

「戦に慈悲は無用なれど、奪い取った地にある民は奴隷に非ず」
「虐げることなく、自国の民として同様に愛を注ぐこと」
「──以上が昭王より承っていた、現秦王への遺言です」(王騎)

 

「遺言は昭王の意志を継ぐ資質のある秦王にのみ残されたものです」
「私が仕えるに値すると思う王にのみ伝えよと」(王騎)

 

「共に中華を目指しましょう、大王」(王騎)

 

山陽平定編

17巻

「行かぬも命がけです」
「──それに…これは咸陽と呂不韋という人間をこの目で見るいい機会です」(李牧)

 

「…儂は韓の陽翟に生まれ、一介の商人から始まりここまで登って来た」
「品を定める目は確かだ…」(呂不韋)

 

「さてさて、李牧はどんな男かのォ」(呂不韋)

 

「丞相の本意は私にも分からぬ」
「だが準備はしておけとのことだ」(昌平君)

 

「二人には会見の間の衛兵にまぎれ込んでもらう」
「そして私の合図があった時──李牧を斬るのだ」(昌平君)

 

「断る。そんな卑怯でクソみてェなマネ、誰がするか」
「そんなんで奴を殺しちまったら、王騎将軍に合わせる顔がねェだろうが」(信)

 

「子供じみた感情は捨て去れ」
「奇妙な形ではあるが、こうなってはもはやこれは戦だ」(昌平君)

 

「ではそろそろ本題に入ろうか」
「やはり李牧殿にはここで死んでもらう」(呂不韋)

 

「貴殿に限って、これが不測の事態ということはなかろう」
「さァ、天才李牧はどうやってこの死地を切り抜けるつもりかのォ」(呂不韋)

 

「もちろん無策に、ここへとびこんでくるほど度胸はありません」
「我々が無事に帰れるよう、私は手土産を持参しました」(李牧)

 

「ええ、秦趙の間で同盟を結ぶということです」(李牧)

 

「場をわきまえぬか、下郎が」
「これは茶番ではないぞ」(呂不韋)

 

「そなた達(王騎配下)の気持ちは十分分かるが」
「今この場は武人の出る幕ではない」(呂不韋)

 

「(同盟は)断る」(呂不韋)

 

「同盟を持って来た李牧殿はさすがとしか言いようがない」
「今この時期に趙と盟を結ぶことは、国に大きな利益を生む」(呂不韋)

 

「しかし、これを持って来た李牧という人間」
「やはり間違いなくそなたは趙国の唯一無二の宝だ」(呂不韋)

 

「その李牧殿の首と今回の同盟の話の値踏みをしてみたところ──」
「ほんのわずかだが、そなたの首の方が値が張ると儂は見た」(呂不韋)

 

「だが本当にごくわずかだ」
「それ故に交渉の余地はある」(呂不韋)

 

「では李牧殿、城を一つおまけしてくれぬか」(呂不韋)

 

「言っておくが李牧殿」
「儂はこれまで商談で一度口にした値からは、ビタ一文まけたことがない男だぞ」(呂不韋)

 

「残念ながら……値切れる気が全くしません」(李牧)

 

「酒が尽きた、帰るぞ」(蒙武)

 

「ひょっとして飛信隊の信ですか?」
「……知らないはずないでしょう」
「趙将・馮忌を討った特殊部隊とその隊長の名を…」(李牧)

 

「…なるほど、だったら先程の目つきの悪さは理解できます」
「私を死ぬほど殺したいということですよ」
「王騎将軍の仇ですからね」(李牧)

 

「残念でしたね、今回私がここで死ぬことがなくて」(李牧)

 

「俺はでかくなるぞ」
「だからいいか、李牧。この顔とこの言葉をしっかり頭にたたきこんどけ」
「お前をぶっ倒すのは、この飛信隊の信だってな」(信)

 

「しかし私を倒すのは至難の業ですよ」
「それこそ王騎将軍を超える男にならねば無理です」(李牧)

 

「(カイネ) 無事に帰れるんだってね、よかった」
「敵でも一緒に飯食って寝泊まりした奴には死んでほしくねーの!」(河了貂)

 

「そう見えたのなら成功だ」
「あれはあえて愚者を演じた」(嬴政)

 

「何も気にすることはないだろ、貂」
「俺は成蟜の反乱で共に死線を超えた絆は、そう容易く切れはしないと思っている」(嬴政)

 

「俺に残された猶予は五年しかない」(嬴政)

 

「呂不韋は必ずそれ(加冠の儀)までにこちらを潰しに来る」
「俺はそれをはね返し、五年後に奴から実権を奪い取る」(嬴政)

 

「これは遊びじゃねェんだ」
「十年待ってくれって言って相手が待つかよ」
「向こうが五年で決めに来るっつーなら、そこが勝負だ」(信)

 

「やれるかどうかじゃねェ! やるんだよ!!」(信)

 

「では信、お前の方はどうだ?」
「五年で将軍になれるか?」(嬴政)

 

「なれれば五年後、俺の最初の号令で出陣する将軍はお前だ、信」(嬴政)

 

「……ほう、驚いたな」
「我々の他にも本陣を狙う者がいたとは」
「しかし残念だが一足遅かったな」(王賁)

 

「……そもそも一般歩兵の君達が特殊部隊をやっていること自体、大きな勘違い」
「戦場において君達の正しい存在価値は”蟻”であることだぞ」(王賁)

 

「軍の基礎力は君達であり、その存在無しに戦はできない」
「ただし蟻は蟻」(王賁)

 

「独立遊軍など高度なことは我らに任せて、君達は本来の持ち場で力を尽くせ」
「分をわきまえぬ夢を見ると不幸になるぞ」(王賁)

 

「路傍の雑草の如き君が、そこ(将軍)に入り込む余地など微塵もないぞ」
「君はよくて千人止まりだ」(王賁)

 

「正直ずっと目障りだった」
「こういう輩には、きっちり示しておく必要がある」
「力の差を、身分の差を」(王賁)

 

「飛信隊隊長、憶えておけ」
「我が名は王賁」(王賁)

 

「ああ、お前の大好きなあの王騎の一族」
「分家の王騎と違い、王一族の総本家を継ぐ王賁だ!」(王賁)

 

「夏の末喜、商の妲己、周の褒姒」
「三人とも大后ではなく王妃ではあったが」
「この三人が朝廷に悪影響を与えたことで三王朝とも滅んだといわれている」(昌文君)

 

「政(まつりごと)の素人である女人が朝廷にからむと凶事が起こる」(昌文君)

 

「(味方に?) 儂は反対だ!」
「大后様は猛毒です」(昌文君)

 

18巻

「(後戻りは出来ない?) 後宮(ここ)まで乗り込んで来て、踵を返すつもりはありませぬ」(呂不韋)

 

「”邯鄲の宝石”──彼女を知る貴人達は」
「その娘を手に入れようと列をなしてやっきになった」(呂不韋)

 

「清純と気品に満ちた美貌を持つ絶世の美女は」
「”美姫”という愛称で皆に愛された──」(呂不韋)

 

「もはや面影すら残っておらぬ…」
「全て儂の仕打ちのせいか…」(呂不韋)

 

「やはりこの女…深入りは危ないのォ…」(呂不韋)

 

「涙をふけ、陽」
「向を助けに行くぞ」(嬴政)

 

「……よく教えてくれた、向」
「俺はお前のおかげで命拾いしたやもしれぬ」(嬴政)

 

「俺は邯鄲を出た時に変わった」
「迷いなく信を置ける戦友(仲間)がいる」(嬴政)

 

「今さらあなたの行う事柄に、心揺れることはない」(嬴政)

 

「無理をしてないと言えば嘘だ」
「あんな母でも、一応血を分けた親だからな」(嬴政)

 

「だが、それがどうした」
「俺達は戦争をやっているんだ」(嬴政)

 

「”戦るからには絶対に勝たねばならん”」
「俺達はすでに多くの者を失った」
「今さらひるむ俺ではない」(嬴政)

 

「思いの外、早く奴と正面から向き合うことになった…」
「もはや後には退けぬ」
「この攻勢で一気に呂不韋をたたき落とす!!」(嬴政)

 

「賭けに危機的代償はつきものだ」
「凡人の目に勝ち目薄く、負ければ全てを失する大博打であればこそ」
「得るものは大きいのだ」(呂不韋)

 

「奇貨居くべし」
「あの賭けに出たから今の儂がある」
「あれに比べれば気楽なものよ」(呂不韋)

 

「しがない一介の商人だった儂が一国の主に…」
「受けて立とうぞ」
「いついかなる時も賭けに勝つのは、この儂だからな」(呂不韋)

 

「これから始まる戦いは、今まで小競り合いをやってきた前線はもとより」
「昨年の趙戦より規模の大きい正真正銘の大戦だ」(王賁)

 

「その中で蟻があまり背伸びすると、全員死ぬぞ」(王賁)

 

「(何者?) だから楽華隊の蒙恬だってば」
「俺も君や王賁と同じく、『天下の大将軍』を目指す者さ」(蒙恬)

 

「なっ、何だこりゃあ!!」
「こ…これが実戦で見る城壁」(信)

 

「いざ真下まで来てみっと…すげェ迫力だぞ」
「……つか、こんなもんどこをどう攻めりゃいいんだ!?」(信)

 

「若者は血気盛んでほほえましぃのォ」
「あまり無茶しすぎて、命を落とさねばよいがのォ」(蒙驁)

 

「初めから……お前の首など眼中にない」(王賁)

 

「剣の才を持つ者が剣をふるうのは卑怯じゃないように」
「俺は井闌車(せいらんしゃ)を持っていたから使っただけだ」(王賁)

 

「妙な難クセをつけるな」
「生まれの良さも才能の一つだ」(王賁)

 

「俺だって分かってる…戦がきれいごとじゃねェことくらい…」
「だけど、だからって…こんなクソ共の暴行を黙って見過ごせるかよ」(信)

 

「やめろ、信!」
「分かってるだろうが、千人将なんか斬ればお前は全てを失うぞ」
「全てをだ」(蒙恬)

 

「信…お前の大将軍への思いはそんなものか」(蒙恬)

 

「俺はてめェみたいな現実現実つって、クソみてェなことまで正当化する奴が」
「一番ムカつくんだよ」(信)

 

「みんなやってるからなんて、何の言い訳にもなってねェ!!」
「外道は外道だ!!」(信)

 

「飛信隊の信はどんな理由があろうと、クソヤロォは絶対許さねェ!!」
「相手が千人将だろうが将軍だろうが王様だろうが関係ねェ!!」(信)

 

「それがこれまでもこれからも、ずっと変わることのねェ俺の戦り方だ!!」(信)

 

「処罰が怖ェからって、こんな状況を見て見ぬふりなんざして」
「何が天下の大将軍だ!!」(信)

 

「俺はお前と違って、祖父や父の威光を利用することに何ら抵抗ないからね」
「この位、強引に事を収めるのは簡単簡単」(蒙恬)

 

「一人二人暴走する千人将を斬ったところで何も変わらぬ」
「本気で変えたいなら自分が軍の頂上に立つしかない」(王賁)

 

「悼襄王(あれ)はダメじゃ」
「前の王も相当じゃったが、今度はたまらぬ」(廉頗)

 

「バカの下で働くほど、バカなことはないぞ」(廉頗)

 

「(趙国への思い?) 戦への思いの方がはるかに重い!」
「戦が廉頗の全てだ」(廉頗)

 

「楽乗。うぬの戦、なかなかよかったぞ」
「この儂がヒヤリとする場面が何度かあった」(廉頗)

 

「まァそれでもしかし、秦のあ奴らに比べれば腹六分目と言ったところだがのォ」
「やはり奴らの消えた戦場は淋しいということか」(廉頗)

 

「るせェ。ちんけな誇りなんて持ち合わせてねェのが、俺らの誇りだ!」(信)

 

19巻

「輪虎は己の力量を見誤らない」
「奴が三百と言えば三百で間違いない」(廉頗)

 

「一度、儂の手から放たれたあ奴は、もはや誰にも止められぬわィ」(廉頗)

 

「……変だな。この僕の殺気にもひるまずに、剣もかわされた」
「僕の腕が落ちたのか…それとも君がとっても強いのか」(輪虎)

 

「(リストに)載ってないね。飛信隊・信ってのは」
「だったら無理に殺すこともないか」
「はは、命拾いしたね、君」(輪虎)

 

「秦軍にもこんな若い芽が出てきてるのか」
「殿だったら成長が楽しみだとか言いそうだけど、あいにく僕にそんな趣味はない」(輪虎)

 

「悪いが目につく将は、根こそぎ狩らせてもらうよ」(輪虎)

 

「いくら才能や実力があっても”幸運”という天の働きがないと」
「武将なんて道半ばで命を落とすよ」(輪虎)

 

「そして本当に天に寵愛される武将は一握り」(輪虎)

 

「見逃してやるのは一度だけだ」
「次にもしどこかで出会えば、その時は必ず命をもらう」(輪虎)

 

「常人には理解しがたいか?」
「それまで何十万もの兵を動員して戦ってきた大将軍同士が」
「一つの部屋で酒を酌み交わすなど」(廉頗)

 

「刎頚の契りを交わした藺相如を”兄弟”とするなら」
「王騎ら六将は死ぬほど憎らしい最大の敵でありならが──」(廉頗)

 

「どこかで苦しみと喜びを分かち合っている”友”であった」(廉頗)

 

「だから六将筆頭の白起が自害した時は涙を流し」
「摎がどこぞの馬の骨に討たれた時は怒りに震えた」(廉頗)

 

「だってそれは、この期に及んでじーさんに一発逆転の好機が生まれたって話だろ!」
「ケンカってのは、最後に立ってた奴の勝ちだ」(信)

 

「次勝って、勝ち逃げしてやれよ」
「そうすりゃ、じーさんの総勝ちだ!」(信)

 

「だから言ってるだろう、そんなの悩む所じゃねェって」
「失敗が怖ェから後ずさりする奴は、最初から家で閉じ籠もってりゃいいんだ」(信)

 

「飛信隊、信が狙うのは総大将廉頗の首だ!!」(信)

 

「飛信隊(ここ)では士族も百姓も関係ねェ、古参も新参も関係ねェ」
「みんな色んなもんしょい込むだけしょい込んで戦えばいい」(信)

 

「俺たちはそうして一つのでっけェ塊になって、敵をぶっ飛ばす」(信)

 

「(最初のあいさつ?) 楽勝」
「だってお坊ちゃんだからね、黙っててもみーんな頭下げる」(蒙恬)

 

「臨時的ではあるが、この戦じゃ紛れもなく千人将だ」
「さすがに千人も兵を抱えると、武将の仲間入りしたって感じがするな」(蒙恬)

 

「千人隊は──もはや戦局を変えることができる軍隊だ」(王賁)

 

「お前には分からんだろが、名家に生まれた重責ってのもあるんだよ」
「特に、偉大すぎる父親を持ってしまうとな」(蒙恬)

 

「十中八九、魏軍の勝ちです」
「何しろ今でもあの方(廉頗)に正面から勝てる武将は」
「私を含めて天下に一人もいませんからね」(李牧)

 

「同規模の軍では、あの廉頗に勝てはせぬ」
「総司令は廉頗の恐ろしさが分かっていない」(昌文君)

 

「多少の無理は承知の上だ。趙との同盟が在る今しかない」
「秦が本気で中華を狙うのなら、何としてもこの戦で山陽をとらねばならん」(昌平君)

 

「私は地に足がついていない、だからお前達みたいに前に進めていない」
「それはやっぱり、象姉の仇を討ってないからだ」(羌瘣)

 

「何か月…何年かかるか分からないけど、きっちり仇を討つ」(羌瘣)

 

「そしてそれが終わってまた帰ってきたら」
「その時は私もちゃんとお前達と一緒に前に進めると思う」(羌瘣)

 

「久しぶりじゃのォ、廉頗…もう腹はくくったぞィ」
「最後に笑うのは、この儂じゃ」(蒙驁)

 

「加入組も精兵ではあったが、玉鳳三百人との力の差があることは分かっていた…」
「──がしかし、共に戦うことがこれほど枷になるとは…」(王賁)

 

「統率された隊とそうでない隊は、しばらく見てればすぐに分かる」
「もちろん前者は強く、後者は弱い」(輪虎)

 

「そしてそれは将狩りで急造隊を作らせた僕の功績ということで」
「命はもらうよ、新造千人将君」(輪虎)

 

「一騎討ちか」
「興味ないな。みんなさっさと終わらすよ」(輪虎)

 

「関係ない」
「兵がいかに強かろうと、隊長の貴様を討てば隊は崩れ」
「それで終わりだ」(王賁)

 

「知ってたかい?」
「大技の直後は必ずスキが生じるって」(輪虎)

 

「(援軍は)必要ない」
「不完全な軍を何度送ろうと、同じことの繰り返しよ」(廉頗)

 

「俺達は腕っぷしには自信あるが、頭使うのはあんま得意じゃねェ」
「いきなり連携技とかやろうとしても無理だ…本番じゃきっと大失敗する」(信)

 

「それよりも逆に個別に戦った方がまだましだ」(信)

 

20巻

「歯ごたえ、無しじゃな」
「全く…どこの国もバカばっかじゃ」(玄峰)

 

「つまらぬ」
「少しは脳みそのある奴はおらんのかィ」(玄峰)

 

「他に代え難い”快感”が戦にはある」
「軍略家にとってのそれは、己の脳一つで万人の戦いを操作し」
「一方的に敵を殺戮することじゃ」(玄峰)

 

「楚水、お前言ったよな」
「千人隊は…千人将は戦局を覆すことができる存在だって」(信)

 

「今がその時だ!」
「俺達の手で、この緒戦を勝利に導くんだ!!」(信)

 

「思い知れ」
「勢いだけでは戦はままならぬことを」(玄峰)

 

「バカ言えっ」
「俺が先頭を行くからっ、皆が走れるんだろうが!!」(信)

 

「恥ずべきことだ」
「お前ら如きに遅れをとっていたとは」(王賁)

 

「まァ、どんな相手でも風穴あけて、敵将の首を狩るのが僕の役目だけどね」(輪虎)

 

「奴は本陣が見つからぬと想定して今の作戦を展開している」
「こういうのは探しても見つからぬ」(玄峰)

 

「地形とこちらの軍の配置、奴らの攻撃してる位置から読むのじゃ」(玄峰)

 

「軍略? 知るかよ」
「俺はただ相手が嫌がることをやるだけだ」(桓騎)

 

「それと昔から得意なんだよ」
「留守中にしのび込むのがな」(桓騎)

 

「(弟子にしてやる?) いるかよ、雑魚が」(桓騎)

 

「許せ玄峰、つまらぬ死に方をさせた──」
「戦場(ここ)で生ぬるいことは言えぬが」
「あれだけ共に死線を越えてきた汝(うぬ)を失うとは」(廉頗)

 

「だが寂しがることはないぞ、玄峰」
「すぐに秦兵の骸で、そっちを溢れかえしてやるからな」(廉頗)

 

「討たれたからにはヘマをした玄峰様が悪いんだけど」
「”気持ちは分かる”なんて軽々しく横から言われると、正直イラッとくるなァ」(輪虎)

 

「心配いらない。この夜で殿は新しい戦略を固められる」
「僕らはそれに従うだけだ」(輪虎)

 

「桓騎将軍の才は知っていたが、正直ここまで大仕事をやってのけるとは思ってなかった」
「…上を目指す俺達のすぐ上には、でっかい壁がいるって話さ」(蒙恬)

 

「明日、楽華・玉鳳・飛信隊の三隊で打って出て、輪虎を討ち取ろう」
「輪虎を止めるには先に仕掛けて殺すしかない」(蒙恬)

 

「楽華隊!」
「この隊の長所は気高く冷静な戦い方と、血みどろの泥臭い戦い方両方ができることだ」
「そして今日は後者だ」(蒙恬)

 

「知っての通りこういう乗りは好きじゃないが」
「やっぱり俺達にしかできないことが今、目の前にある」(蒙恬)

 

「今日はひどい”死闘”になるぞ」
「悪いが宜しく頼むよ、みんな」(蒙恬)

 

「廉頗が出てきて、この魏攻略の最終戦は大きく意味が変わってきた」(蒙恬)

 

「俺達は今、あの廉頗と戦っている」
「廉頗が出てきたことで」
「この一戦は中華全土が固唾を呑んで注目するものになったんだ」(蒙恬)

 

「祖父である蒙驁の首をとられるわけにはいかない」
「こんな放蕩孫をいつも見守ってくれている、俺の大切なじィ様だからな」(蒙恬)

 

「いいぜ蒙恬、飛信隊はお前に乗っかってやる」
「いつまでも老兵達の時代じゃねェって、天下に教えてやらねェといけねェしな」(信)

 

「恬をまだ三百将に留めているのか」
「過保護は成長を妨げるぞ」(蒙武)

 

「……もう少し恬を信用してやれ」
「ナヨついたガキだが、あいつはそこらの千人将なんかより」
「はるかにものが見えている」(蒙武)

 

「恬を信じてやれ」
「死んだら死んだで、それまでの漢だったということだ」(蒙武)

 

「輪虎のような大物を討つには、攻めの組み立てが必要になる」
「輪虎を襲う時、必ず屈強な輪虎兵が大きな障壁となって立ち塞がる」(王賁)

 

「それを蒙恬は先に取り除こうとしているのだ」
「無論、容易なことではない」(王賁)

 

「だが、奴は自ら一番血を流すこのつぶれ役を買って出たんだ」(王賁)

 

「バカ、自己犠牲の聖者のつもりはないぞ」
「ただこの重要な役回りを、今の玉鳳も飛信隊もこなせっこない」(蒙恬)

 

「やれるのは楽華隊だけ、だからやる」
「全ては輪虎を討つために、俺達三隊でな」(蒙恬)

 

「今回の最大の痛手は、僕の私兵の大半を失ってしまったことだ」
「これは本番に向けて何か考えないといけなくなった」(輪虎)

 

「だけどそれだけだ、その他のことは別に大したことではない」
「敵に迫られたところで、僕が討たれることはないからね」(輪虎)

 

「今度は逃げてあげないよ」
「そっちの槍使い君も含めて君達は──相手の力量をきちんと推し量れていない」(輪虎)

 

「二人がかりでなら、この僕をどうこうできるとでも思ったのかい?」(輪虎)

 

「二人同時でもいいんだけど、少々効率よく戦らせてもらうよ」(輪虎)

 

「与し易そうな君は後回し」
「やはり先に叩いておくべきは、うるさそうなこっちの槍使い」(輪虎)

 

「力量読めてねェのはお前の方だ、輪虎」
「誰が一番強ェのか、きっちり教えてやるぜ」(信)

 

「俺か。俺は王騎将軍から矛と、その遺志を受け継いだ男」
「そしてその将軍らをも超える、歴代最強の大将軍になる男だ!!」(信)

 

「あんまり調子に乗らないでほしいな」
「君達の人生は今日ここで終わるんだから」(輪虎)

 

21巻

「…どうやら将軍ってな二種類いるみてェだ…」
「戦場内で自らも駒となる将軍と」
「敵味方から注目され、一人で戦局を動かしちまう将軍」(信)

 

「同じ将軍でもその二つの間には大きな”差”がある」(信)

 

「土門・栄備と王騎・廉頗の間には、でっけェ差があるんだ」
「輪虎もどっちかと言うと王騎将軍側で」(信)

 

「俺はそれよりもさらに上を目指してる」
「だから、こいつは俺が超えなきゃならねェ壁なんだ!!」(信)

 

「やってみなよ」
「廉頗の”飛槍”を、王騎の矛を受け取った男が砕けるかどうか」(輪虎)

 

「これだけの利を持つ地形はそうはない」
「捨てるにはあまりにも惜しいが…地に執着しすぎるのも、また愚将の条件か…」(壁)

 

「それら(五千)を率いる権限をそなたに授ける」
「壁、そなたはこれから五千の将となりて、魏将軍・姜燕を迎撃せよ!」(王翦)

 

「私の目に狂いはない」
「あ奴は、いい囮になる」(王翦)

 

「二人共、これが奇襲であることを忘れるなよ」
「そこは敵本陣のど真ん中だ」
「あまりモタつくと、ぶ厚い包囲に捕まり退路を失う」(蒙恬)

 

「もちろん輪虎の首が重要だが、退き際の判断だけは決して誤るなよ」(蒙恬)

 

「こいつらが強ェのは、単純に数をこなしたってだけじゃねェ…」
「多分戦いながら越えてきたんだ、何度も何度も」(信)

 

「そして俺も、もう少しで越えられそうな気がするんだ」
「限界って奴を!!」(信)

 

「間一髪防いだが…馬と左手を失った」(輪虎)

 

「不覚傷──…僕としたことが……」
「油断──少々たかをくくっていたか」(輪虎)

 

「──だけどそれだけじゃない」
「さっきの飛信隊・信は本当に強かった」(輪虎)

 

「崖上は全て制した」
「うぬの負けだ、姜燕」(王翦)

 

「敗軍の将には”死”を!」
「それが戦場の鉄則だ、姜燕」(王翦)

 

「……だが、私は慈悲深い」
「一つだけ助かる道をうぬに与えてやろう」(王翦)

 

「これよりこの私に仕えるのだ」
「私を主としてあがめ、忠を誓うならば」
「うぬの私兵も含めて全員命を助けてやろう」(王翦)

 

「私は本気で言っている」
「私の”領内(くに)”は、うぬのような戦の強い男を必要としているのだ」(王翦)

 

「悪いようにはせぬ、姜燕」
「…断るならばこれよりこの”囲地(いち)”が、血の湖と化すことになるぞ」(王翦)

 

「(八つ裂き?) ならん、生け捕りだ」(王翦)

 

「信じ難いことだ。相手の心理と戦局推移」
「わずかな手がかりを元に一体何手先まで読み解けばそうなるのか」(姜燕)

 

「もはや人の域を超えている」
「やはり怪物だな、あのお方は」(姜燕)

 

「やはり儂の読み通り動いたのォ、王翦」(廉頗)

 

「こちらの主軸が削られぬことだけ注意せよ」
「では全軍順次退却だ」(王翦)

 

「……悪いな、廉頗」
「私は”絶対に勝つ戦”以外、興味はない」(王翦)

 

「悠々と退がる王翦の姿がふと、白起を思い出させた」
「戦い方が似ているということは」
「近い世界が見えておるのやも知れぬということだ」(廉頗)

 

「己を第一とする武将は”信”が置けぬのだ」
「いかに戦が強かろうと、それでは人も貴様を英雄とは認めぬ」(廉頗)

 

「貴様は儂らとは違う道に立っている」
「あえて否定はせぬが興味も失せたわ」(廉頗)

 

「戦は大将を殺してなんぼ」
「できの悪い古き顔見知りに引導を渡しにいくかのォ」(廉頗)

 

「不思議とこの年になると分かるところがあるのじゃ」
「死力を尽くす戦いが近づいているとな」(蒙驁)

 

「今回狙うのは敵中央軍の後ろにいる大将・蒙驁の首だ」
「皆には死にもの狂いで働いてもらうよ」(輪虎)

 

「僕が昨日より弱まってるなんて勘違いしちゃダメだよ」(輪虎)

 

「片手が使えない戦いなんていくらでも通ってきたし──」
「それに何より今日はこの後”約束”があるんでね」(輪虎)

 

「うろたえることはない」
「奴の前ではいつでも儂は”敗者”だ」(蒙驁)

 

「廉頗よ、お主に負け続けた儂じゃ」
「こうなることも予想はしていた」(蒙驁)

 

「予想ができたということは、”対処”ができるということじゃ」(蒙驁)

 

「長年考えに考えを重ねた布陣じゃ」
「いつの日かお主と戦う羽目になった時、お主を討ち取るためにな」(蒙驁)

 

「さァて、行くぞ蒙驁」
「その首この手で叩き落としてくれる」(廉頗)

 

「強き武将が足をすくわれる時、そこには必ず”油断”があります」
「私などは戦う時、相手を油断させることに力を尽くします」(李牧)

 

「廉頗。儂は十分、知っておるのじゃ」
「お主がこの迷路の攻略図を脳裏に描ききり」
「それを狂いく実戦できる”天才”であることは」(蒙驁)

 

「よォく知っておる故に、儂はお主の賢しさを逆手に取る!!」(蒙驁)

 

22巻

「この砦は本当によく出来ているぞ」
「じゃが…四十年経っても儂の想像の枠を越えることはできなかったなァ、蒙驁ォ」(廉頗)

 

「儂との知恵比べとは百年早かったのォ」(廉頗)

 

「後ろで…本陣で何か起こってるのは分かるが、今はそんな所まで気を回せねェ」
「今……こいつから目をそらせば、即あの世行きだ」(信)

 

「無問題!」
「片足の(戦闘)状況もきっちりと漂と特訓済みだ」(信)

 

「死にはせぬ!」
「我らの隊長は、死にはせぬ!!」(渕)

 

「殿が…待っている、こんな所で負けられない」
「僕は…”天”の与えし”廉頗の剣”だからね」(輪虎)

 

「下らねェ」
「さっきから聞いてりゃ、それじゃまるで全部が天任せみてェじゃねェかよ」(信)

 

「そうじゃねェだろ」
「俺達はみんな、てめェの足で立って戦うんだ」(信)

 

「出会いが重要だってことは分かる…」(信)

 

「お前が廉頗に出会ったってんなら」
「俺だって廉頗以上の大将軍になるはずだった男に出会い」
「そいつと共に育った」(信)

 

「漂──俺に夢をくれたそいつは…早々と死んじまったが」
「代わりに…俺はまたとんでもねェ奴と出会った」(信)

 

「俺は関わった奴らの思いを背負って、前に進むだけだ」
「自分のこの足で」(信)

 

「輪虎、お前と戦ったこともでっけェ糧にしてな」(信)

 

「時代はやはり、次の戦乱の世へ移ろうとしています」
「ひょっとしたら殿が亡命し、前線から退いたあの時…」
「僕の役目は終わっていたのかも知れませんね」(輪虎)

 

「お前は、何度も死を覚悟したくれェやばい奴だったぜ、輪虎」(信)

 

「行くべきじゃない」
「この戦力と今の自分では、あれは止められない」(羌瘣)

 

「死ねば象姉の仇は討てなくなる」
「ゴメン、象ねえ。やっぱり今は、私は飛信隊の副長だ」(羌瘣)

 

「くそっ……私ってこんなバカだったか?」
「”気をつけるんだぞ瘣。バカの側にいるとバカが移る”」
「フッ、それだ」(羌瘣)

 

「……何だ、お前か」(羌瘣)

 

「信、離せ…バカが移る」(羌瘣)

 

「前後の挟撃のつもりが、結局片側だけで攻略できるとは…」
「つまらぬ……やはりこんな戦では燃え上がらんのォ」(廉頗)

 

「弱すぎる」
「そんな腕前で何かできると思ったか、蒙驁」(廉頗)

 

「腕前ではない」
「今の儂の武器は心じゃ」(蒙驁)

 

「紆余曲折した我が長き戦歴の総決算の場に立ち、ふとこうも感じておる」(蒙驁)

 

「四十年前、祖国斉を捨ててまで立身出世を求め、秦国で何とか大将軍に登りつめたのは」
「今この刻(とき)のためであったのかもとな」(蒙驁)

 

「どうじゃ、四十年の熱き思いのこもった一撃は大層重かろう」(蒙驁)

 

「廉頗。今のお主の中には儂の激情を受けきる程、熱きものは無かろうて」(蒙驁)

 

「廉頗。本当はお主自身、気付いておるのだろうが」
「黄金の刻(とき)は去ったと」(蒙驁)

 

「最強の敵・六将が去った刻、お主の火も消えたのじゃ」(蒙驁)

 

「あの時代、秦六将と趙三大天は互いに数百万の人間の血肉を握り固め」
「全身全霊をかけてそれをぶつけ合う戦いに明け暮れた」(廉頗)

 

「その相手を失い熱きものが無くなったとは言え」
「あの黄金の時代を戦い抜いたこの金剛の身体」
「うぬのしみったれた四十年の思いとやらで砕き飛ばせるとでも思ったのか」(廉頗)

 

「あまり”儂ら”をなめるなよ蒙驁」(廉頗)

 

「時代の流れなどクソくらえだ」
「強者は最後まで強者」
「老いようが、病に伏せようが、戦場に出たならば勝つのが鉄則」(廉頗)

 

「名乗る名は持ってる」
「飛信隊の信!」
「あんたの四天王輪虎をこの手で討ち取った、飛信隊の信だ!!」(信)

 

「時代は確実に次の舞台へと向かっておるのじゃ」
「じゃがそれは決して、決してあの時代を色あせさせるものではない!!」(蒙驁)

 

「もういいではありませんか、将軍」
「あの時代はもうあれで”完成”しているのですから」(王騎)

 

「時代の流れなど知ったことか」(廉頗)

 

「(王騎将軍の死に際?) その姿は、誰もがあこがれる天下の大将軍の姿」
「堂々たる英雄の姿そのものだった」(信)

 

「全く…どいつもこいつも自分勝手に先に行きおって…」(廉頗)

 

「オイ、白亀西。この戦で両軍合わせりゃ万の人間が死んでるぜ」
「お前が大将って言うんなら、少しは痛みを分かち合わねェとな」(桓騎)

 

「介子坊!!」
「止めじゃ、帰るぞ」
「儂らの負けじゃ」(廉頗)

 

23巻

「ムダじゃっ、この戦はもう詰んでおる」(廉頗)

 

「(勝者?) やかましい、命があるだけありがたいと思え」(廉頗)

 

「大将軍になるために必要なものは、百の”精神力”!!」
「そして百の腕力、さらに百の知恵」
「あと百の経験と百の幸運っ…」(廉頗)

 

「それら全てを兼ね備えた趙国三大天と秦六将はかつて…」
「正に完璧な時代を築き上げた」(廉頗)

 

「そんな儂らと貴様は本気で、肩を並べるようになれると思っておるのか!?」(廉頗)

 

「肩を並べるんじゃねェ!」
「俺はあんたらをぶち抜いて”史上最強”の天下の大将軍になるんだ!!」(信)

 

「じゃが実は一つだけ儂らを抜く方法が存在する」
「伝説の塗替えじゃ」(廉頗)

 

「”儂らでも成し得なかった大業”をやってのければ、歴史は必ず貴様らをあがめる」
「ああ、中華の統一じゃ」(廉頗)

 

「バカを言え。死ぬまで儂は現役じゃァ」(廉頗)

 

「”山陽”を取られたか…」
「ここから秦の出方次第では、天下は大きく荒れますよ…」(李牧)

 

「今の私はどういう顔で、お前達と別れればいいか分からない」(羌瘣)

 

「……昔はふつうに泣いたり笑ったりしてたんだが」
「象姉の首を抱きかかえた時に、何かが私の中で壊れた」」(羌瘣)

 

「仇を討ったら元に戻るといいとは思ってるが…」(羌瘣)

 

「そんな心のか弱いお前に一つ言っておきてェことはよォ」
「どれだけ離れようとお前の小っせェ背中、俺達がガッチリ支えてるからなってこった」(信)

 

「俺はただ大将軍になるだけじゃ足らなくなっちまったぜ、政」(信)

 

「どうやら俺とお前の道が一つに重なったみてぇなんだ」
「”中華統一”だ」(信)

 

「……言っとくが、今の飛信隊なら楽華隊三百人で皆殺しにできるぞ」(蒙恬)

 

「千人隊はもはや勢いだけで戦える規模じゃない」
「作戦を組み立てる人間が必要不可欠なんだ」(蒙恬)

 

「やっぱり驚いたか」
「正直こういう形でお前の前に現れるのはずっと先のことだと思ってたから」
「オレ自身もちょっと驚いてんだけど…」(河了貂)

 

「そんなことも言ってらんない状況みたいだからな」
「助けに来てやったぞ、信」(河了貂)

 

「信(あいつ)と会うのも一年以上ぶりか…」
「この一年で成長しちゃったから…さすがにもう…バレるよな……」(河了貂)

 

「あいつ、オレが女だと知ったらどんな顔するかな…」(河了貂)

 

「新参軍師がやっかみに遭うってのは十分知ってるよ」
「だけど今、そんなこと言ってる場合じゃないだろ」(河了貂)

 

「今まで通りやってちゃ取り返しのつかない事になるからオレが来たんだろ」(河了貂)

 

「(能力はある?) それじゃあとは…軍師としての”適性”があるかどうかだな」
「これがないとどんなに才能があっても、軍師として活躍することはできない」(蒙恬)

 

「軍師は必ず初陣でその”適性”を試される」
「まだ机上だけの策士である我々は、実際に戦場に降り立つ恐怖を知らない」(蒙毅)

 

「こちらを殺さんと敵が迫り来る中、冷静でいられるか」
「冷徹に人と人を殺し合わせることができるのか」(蒙毅)

 

「日頃軽々しく扱っているこの一駒に今は、数百人もの生の人間の命が宿っている」(蒙毅)

 

「想像の上をゆく実戦の恐怖に呑まれ」
「何もできずに潰れる軍師見習いは数多くいるんだ」(蒙毅)

 

「そうか…これが戦場の空気か。戦る前からこれかよ…呑まれるものか」
「オレが戦場(ここ)を呑んでやるんだ」(河了貂)

 

「”ぶ厚く守る敵本陣を破る手段”は主に二つある」
「しかし実戦で使われる手段のほとんどは結局のところ」
「武の力に頼った強行突破だ!」(蒙毅)

 

「そして敵本陣を討つ二つ目の手段、それは…」
「巧みな仕掛けで敵守備に穴をあけ、一撃必殺の奇襲攻撃を加える戦術だ!!」(蒙毅)

 

「脱出経路くらい確保しとくよ、最初っからね」(河了貂)

 

「(明日でいい?) そうはいかない」
「オレの小さな誤りで数十人単位で人が死んでしまうんだ」
「策を練り上げておくことに越したことはない」(河了貂)

 

「(死人の数は)しょい込むに決まってるだろ」
「オレは戦場で指示するとき」
「あらかじめどのくらい死ぬか分かってて送り出してんだぞ」(河了貂)

 

「仲間の死のつらさは軍師も兵士も変わんねェ」
「そのつらさを乗り越える一番いい方法を俺達は知ってる」
「みんなで共有して薄めて、バカさわぎして吹っ飛ばすのさ」(信)

 

「今は中華の戦を活性化させる刻(とき)だ」(昌平君)

 

24巻

「大木斬れども未だに”王騎の幻影”を斬れぬのであれば、答えは必ず”戦場”にある」(李牧)

 

「”先(ま)ず隗より始めよ”」
「それではまず、この郭隗を厚遇することから始めて下さい」
「そうすれば、私よりも才覚ある人材が必ず他国より集まってまいります」(郭隗)

 

「心配いりませんよ、これは単なる序章にすぎません」
「圧倒的力の差を示して勝ってみせます」(李牧)

 

「劣勢の時こそ、敵の姿を知る好機ととらえよ」(楽毅)

 

「貴様らのやっていることに興味はない」
「俺は”本物の戦”に飢えているだけだ」(龐煖)

 

「(中華十弓?) オイ、その言い方はやめろ」
「俺の矢は今、中華三位だ」(白麗)

 

「儂は丞相を卒業するぞ」(呂不韋)

 

「俺は純血ではない身でありながら、王座につく嬴政がヘドが出るほど許せぬが」
「それ以上に庶民の分際で権力の座にある、あの男の方がさらに我慢ならぬ」(成蟜)

 

「王族として王国の秩序を正すのは義務だ」
「あのタヌキを叩き落とすぞ」(成蟜)

 

「呂不韋が自ら相国となった暴挙を逆手にとり」
「俺達もこの機に”権力”を取りに行く」(嬴政)

 

「昌文君」
「お前が俺を援(たす)けるために文官へと転じてくれたことが」
「今こそ大きな意味を持つ」(嬴政)

 

「(過去の犠牲者は)道が途中で潰える方が浮かばれぬ」(嬴政)

 

「勝負の別れ目は結局、俺とお前のどっちが強いかだ」
「無論、俺だがな」(嬴政)

 

「ガマンしろ、栄誉のキズだ」
「オマエの頑張りが国を救ったんだからよ!」(信)

 

「同盟とは実は、相手に手を出させないことが目的ではありません」
「重要なのは同盟の先に何を得るか、何をするかです」(李牧)

 

「戦いで得るものが土地だけと思っている内は」
「あなたは私に一生勝てなどしませんよ」(李牧)

 

「こんな所でお前を殺せるか」
「お前は俺が正面から越えなきゃなんねェ壁だからな」(信)

 

「私が今この場で与えられる警告は、戦歴を重ねてきているあなた達でも実際のところ──」
「戦争の本当の恐ろしさは分かっていないということです」(李牧)

 

合従軍編

25巻

「(指令?) 両将はすでに城を出て走っておろう」
「防衛戦を抜かれることがどれほど危ういか」
「現場の将達が最もよく分かっておるわィ」(昌文君)

 

「しかし…間に合うかどうかは咸陽(ここ)からでは分からぬがな…」(昌文君)

 

「この南部防衛は一刻を争う状況だ」
「故に一刻かせぐは大きな利益を生む」(騰)

 

「間に合わなくてスマネェ」
「それに今はお前らを埋葬してやるヒマもねェ」(信)

 

「今はお前らみてェな犠牲を一人でも出さねェように、走らなくちゃなんねェんだ」
「分かってくれ」(信)

 

「その代わり、ぜってえ仇をとってやる」(信)

 

「(三国同時?) 止めねばならん、全軍を使ってな」(昌文君)

 

「六国が…手を組んだとでも…?」
「何じゃそれは…何じゃそれはァァ」(呂不韋)
「”合従軍”だ!!」(嬴政)

 

「(合従軍が)形となり戦になったのは一度だけだ」
「今からおよそ四十年前…当時東の超大国であった”斉”」
「その暴威を止めるべく、秦も含めた六国が立ち上がった」(昌文君)

 

「ああ…(結果は)即墨と莒の二城だけを残し、他の全ての土地を失った!」
「あの時初めて中華は、合従軍の破壊力の凄まじさを知ったのだ」(昌文君)

 

「(笑顔がない?) 合従軍を描いた張本人として」
「この先に起きることも分かっていますからね」(李牧)

 

「今は最短・最速で侵攻して秦中枢を麻痺させます」(李牧)

 

「突如六国に同時に攻められ、なおかつその侵攻の足が早まれば」
「秦の本営は必ず混乱の極みに達し、思考停止となります」(李牧)

 

「そうすれば、早々に片がつきますから」(李牧)

 

「こんなもの…どこから手をつければよいと言うのじゃ…」(昌文君)

 

「立て」
「お前らの目は節穴か…?」
「お前らの頭は飾りか?」(嬴政)

 

「この地図をちゃんと見ろ」
「今この瞬間、国のいたる所で何千何万の民の命が奪われようとしているのだぞ」(嬴政)

 

「起こっている事態の全容を知るのは、ここにいる我々だけだ」
「対処を講じられるのも我々だけだ」(嬴政)

 

「分かってるのか」
「今ここにいる三十人程が、秦国全国民の命運を握っているのだ」(嬴政)

 

「強大な敵にも目をそらすな」
「刻一刻と国がっ…民が陵辱されていっているんだ」
「全身全霊をかけて対策・打開策を模索しろ」(嬴政)

 

「合従軍だろうといいようにはさせぬ」
「戦うぞ!!」(嬴政)

 

「今ならまだ敵の合従軍に、楔を打ち込む手が一つあります」
「まだ秦国に侵入していない──斉を狙います」(昌平君)

 

「結局”戦争”など所詮、大金を手にするための”仕事”だろうがよ」(王建王)

 

「李牧は怪物だ、密会した時そう思った」
「王騎・劇辛という大物喰いはまぐれではない」(王建王)

 

「はっきり言って斉が抜けても大した戦力低下にはならぬ」
「李牧の合従軍に、秦は万に一つ程度しか勝ち目はないぞ」(王建王)

 

「”外交”のできる仕事はここまで」
「後は本国の者達を信じるだけです」(蔡沢)

 

「斉離脱の狙いは敵の戦力減少だけが目的ではありません」
「合従軍の背後に奴らが憂う存在を出現させること──」
「これが最大の狙いです」(昌平君)

 

「全軍止まれェィ!!」
「これより先は臭くてかなわん、引き返すぞ」(麃公)

 

「長く戦地を往来しておるが、こんな巨大な侵攻は初めてだ」
「下手をすれば秦という国が無くなるであろう」(麃公)

 

「全ては咸陽・本営の対応次第じゃが」
「しかしそのためには刻(とき)をかせいでやる必要がある」(麃公)

 

「ここでこの兵力で魏軍の足止めをはかるぞ」
「それが今は前線の漢達の役目じゃァ」(麃公)

 

「それにしても噂通り変わった敵だ、麃公軍とは」(呉鳳明)

 

「各軍の置き方、戦い方、まるであべこべで」
「どの兵法書でも禁とするものが平気で目につく」
「現に無意味なほど兵を死なせている」(呉鳳明)

 

「しかし代わりに要所要所では有り得ぬような勝ちをおさめて」
「その差を帳消しにしてくる」(呉鳳明)

 

「あれが本当に全て”勘”だと言うのなら、軍略家にとっては笑えぬ相手だ」
「父が討たれたのもうなずける」(呉鳳明)

 

「李牧殿、先にまずはっきりさせておきたい」
「此度の合従軍の起案者は貴殿だが、別に我々はそれに従属したわけではない」(呉鳳明)

 

「魏軍・趙軍は互いに同列」
「上官でもない貴殿に、この軍のことをとやかく言われる筋合いはない」(呉鳳明)

 

「(どこまでやる?) もちろん秦国が滅ぶまでです」(李牧)

 

「元々詰んでいる盤面」
「対する上策など存在しませぬ」(昌平君)

 

「あらゆる策で模擬戦を行ったが、いずれも百戦すれば全て咸陽まで落とされました」
「しかし…ようやくわずかに光明を感ずる策が一つ…」(昌平君)

 

「(模擬戦の結果は) 百戦中、秦軍二十勝、合従軍八十勝」(昌平君)

 

「(勝率は) 五つに……一つか…」
「──フム! 上出来だ」
「賭けとしては十分成立する」(呂不韋)

 

「今配置の軍はそのままで、将軍達を咸陽(ここ)へ召集して下さい」
「秦の抱える名だたる将軍全員です」(昌平君)

 

「知っての通り総数五十万からなる合従軍に侵攻され、秦は正に国家存亡の危機にある」
「合従軍は強力であり、これを防ぐには──」(昌平君)

 

「秦の抱える全戦力」
「つまり今ここにいる大将軍級の貴公らの力を集結して戦う必要がある」(昌平君)

 

「これは文字通りの”総力戦”であり」
「失敗すれば秦はこの中華から消え去るであろう」(昌平君)

 

「この合従軍の中には上も下もなく、各国の軍同士は横並び対等です」
「しかし、軍である以上はそれを束ねる者が必要不可欠です」(李牧)

 

「楚の宰相にして軍総司令・春申君に合従軍の総大将を務めて頂きます」(李牧)

 

「この戦を描くのは、最初から最後まで合従軍参謀を務める李牧だ」
「俺はお前らのケツを蹴って回る役についただけだ」(春申君)

 

「(一番血を流させる?) ……望む所だ」(蒙武)

 

「(出し抜かれた?) 俺の落ち度だ、弁明の余地もない」(昌平君)

 

「情報戦の敗北もある」
「だが、それ以上に俺がたかをくくっていたことが大きい」(昌平君)

 

「まさか”山陽攻略の真意”を見抜く者がいるとはな…」(昌平君)

 

「そのことに気付いたのは、恐らく中華で俺と李牧くらいであろう」(春申君)

 

「大国楚は多少のことではビクともせぬが」
「お前らが秦に糾合されればさすがにやっかいだ」(春申君)

 

「詰みの手をうってきたなら、その盤上を叩きつぶすのが一番だ」(春申君)

 

「(上層部の失態?) いや……これが”戦国”だろ」(信)

 

「俺は五千将を目指す」
「そうすれば、もうその上は──”将軍”だ」(王賁)

 

26巻

「春申君。あなが楚軍の大将・汗明に揺るがぬ信を置いておられるように」
「私も全幅の信頼を置いています」
「趙軍の指揮官・副将慶舎に」(李牧)

 

「麃公自身もあのぶ厚い李白軍を、ただの突撃だけで抜けるとは思っていない」(慶舎)

 

「あれは闇雲に討って出たように見えるが、実は”火”の起こし所を探しに来たのだ」
「いや、作りに来たと言った方が正しいか」(慶舎)

 

「下手に動けば奴の思惑通りに戦が運び出す」
「ああいう連中を相手にする場合」
「序盤ではその爪のひっかかる所を作らせぬことが賢明だ」(慶舎)

 

「そうすれば奴らは必ず混惑の色を表に出す」(慶舎)

 

「弱まっている部分を攻めるのが自然界の鉄則だ」
「どうした麃公、この戦場に火は起こったぞ」
「お前の足元にだがな」(慶舎)

 

「”沈黙の狩人”」
「本能型の武将で私が最も恐ろしいのは彼(慶舎)です」(李牧)

 

「静かに、聞こえるか?」
「身動きとれぬ麃公軍に情けなき万極の牙が喰い込み、その肉をはぎ取ってゆく音が」(慶舎)

 

「目と耳を集中しろ、今が一番いいところだ」(慶舎)

 

「ここが俺らの正念場なんだ」
「寄っかかるもんが必要なら、この飛信隊・信につかまって奮い立ちやがれ、麃公兵!!」(信)

 

「童・信よ」
「己で気付いておるまいが、貴様、本能型の武将の才が目覚めてきておるぞ」(麃公)

 

「…しかし、王騎の矛を受け取った男が本能型とは笑えるわィ」(麃公)

 

「戦場が大きく動き揺らいでおる」
「この今、儂の獲物は奥で縮こまっておる趙将に決まっておろうが」(麃公)

 

「……このっ、たわけ者共が」
「そんなもの(井闌車)が、この函谷関に届くと思ったのか」(張唐)

 

「何も分かっておらぬ」
「函谷関が何物かが分かっておらぬ」(張唐)

 

「おびただしい程の秦人の血と汗と…”命”を費やして積み上げられた」
「この”高さ”と! この”屈強”さ!」(張唐)

 

「中華に比肩するものは一つもない!」
「故に函谷関は作られてより百余年、一度も敵に抜かれたことがない」
「一度もだ!!」(張唐)

 

「その歴史を貴様らが超えられると思うか」
「この壁に手が届くとでも思っているのか」
「たわけた夢だ」(張唐)

 

「今も、この先百年も、秦の敵は唯一人としてここを通れぬ」
「それが秦国門・函谷関だ!」(張唐)

 

「それが届くんだよ」
「対函谷関のために俺が設計したのだからな」(呉鳳明)

 

「騒ぐな、薄らバカ共」
「仕方ねェな、遊んでやるか」(桓騎)

 

「魏には…秦に大きな借りがある」
「魏のなめた辛酸を今ここで、この鳳明が清算する!」(呉鳳明)

 

「沈むがいい函谷関、その不落の伝説と共に」(呉鳳明)

 

「ちょーっとばかり魏は、でけェもん作りすぎたんじゃねェのか?」
「てめェは、はしゃぎすぎなんだよ」(桓騎)

 

「迷うな兵共よ、この場に奇策は必要ない」
「たとえ敵に登られたとはいえ」
「ただの地上戦と思えば断崖際に敵を包囲したようなものだ」(張唐)

 

「我が軍の優位は変わらぬ」
「一人残らず地べたに叩き落としてやれィ」(張唐)

 

「本当はこれを言いに来たんだよ」
「どうかご武運を、父上」(蒙恬)

 

「俺が狙うのは、楚軍総大将の首だ」(蒙武)

 

「恬、武運を祈る」(蒙武)

 

「貴様が臨武君か」
「そのおかしな頭切り刻んで、あの世の同金に喰らわせてやる!!」(録嗚未)

 

「録嗚未一人でつぶせるほど、楚軍一軍は甘くない」
「その他の力が必要だ」(騰)

 

「量より質。”量”で劣る秦軍が勝つには、”質”で上回る必要がある」
「現場に点在する、部隊長達の質だ」(騰)

 

「将自ら入り乱れる戦場にあって凄腕の狙撃手は…必殺の動きをする」(蒙恬)

 

「録嗚未の援護のため、また先の戦いのために」
「この脅威は早めに取り除いておく必要がある!」(蒙恬)

 

「将軍級だと? 笑わせる」
「貴様らと楚では、”将軍”の意味が違うのだ」(臨武君)

 

「大国楚で将軍になることがどれ程のことか、貴様らは理解(わか)っておらぬ!」(臨武君)

 

「貴様らと楚では国土の広さが違うが故に、人の数が違う!」
「つまりは競い合う底辺の数が違うのだ」(臨武君)

 

「(自信?) そんなあやふやなものを口にする意味はない」
「それよりも確定的なことを言っておいてやろう」(騰)

 

「蒙武。我が主であった大将軍王騎の死は、お前を強くした」
「そして──私は元から強い」(騰)

 

「それが紛れもなき事実」
「この戦に関して言うことがあるとするなら、これだけだ」(騰)

 

「あの男(騰)の力など知るか」
「ただ分かっていることは──」
「奴は王騎が認めていた男だということだ」(蒙武)

 

「(何者?) 天下の大将軍だ!」(騰)

 

「その(王騎の)傘を支え続けることの凄さは考えぬのか」(騰)

 

「お前は修羅場をくぐってきた己の力に絶対の自信があるのだろうが」
「私には、中華をまたにかけた大将軍王騎を傍らで支え続けた自負がある」(騰)

 

「(天下の大将軍は楚将だけ?) それは違う、お前にそんな器はない」(騰)

 

「しかし強かったのは認めよう、これほど血を流したのは久しい」
「あの世で同金・鱗坊・録嗚未と酒でも飲むがいい」(騰)

 

27巻

「乱戦が長すぎる」
「もはや隊の形なんてなく、中でバラバラになって戦ってるのに間違いない…」(河了貂)

 

「突入するぞ、中で隊を立て直す」(河了貂)

 

「(長平?) 知るかよ、それは俺が生まれる前とかの話だ」(信)

 

「ここは戦場だ」
「戦いの最中に、ふざけたもん見せんじゃねェ!!」(信)

 

「オレがいない間にお前らが全滅なんてしたら、軍師になった意味がないだろうが」(河了貂)

 

「何が同じだ」
「長平はたとえ投降しようとそれは、寸前まで兵士だったんだ」(河了貂)

 

「それとお前がこれまで手にかけてきた人間が、同じだなんて絶対に言わせるか」(河了貂)

 

「無力な女子供まで殺してんじゃねェよ、このクソヤロォが」(河了貂)

 

「子供に何の罪がある、赤子に何の罪がある」
「まだ何も分からないで、ただ一方的に…命を奪われてっ…」(河了貂)

 

「お前は長平の復讐と称して、虐殺目的で戦争をしてる最低の異常者だ」(河了貂)

 

「俺も戦争孤児で万極ほどひねくれちゃいねェが」
「戦争は”あるもん”だって思って生きてきた」(信)

 

「それがどうこうなんて考えが及ぶもんでもねェって感じで生きてきたんだ」(信)

 

「この出口のねェ戦争の渦を解く答えを持ってる奴を」
「実はおれは知ってたんだってなァ」(信)

 

「そいつの答えはこうだ」
「境があるから内と外ができ、敵ができる」
「国境があるから国々ができ、戦いつづける」(信)

 

「だからあいつは国を一つにまとめるんだ」
「そして俺は、その金剛の剣だ」(信)

 

「てめェの痛みはしょってやる」
「だからお前はもう、楽になりやがれ!!」(信)

 

「俺は長平みてェなことは絶対にやらねェし!」
「絶対やらせねェ!!」(信)

 

「飲むぞ、小童ァ」
「夜は勝利の美酒に酔いしれる」
「これが戦人の醍醐味じゃァ」(麃公)

 

「戦は生き物じゃァ、始まってみねば分からぬわ」
「展望などあるかァ」(麃公)

 

「重要なのは一つ──」
「”火つけ役”が”火の起こし場所”に出現できるかどうかじゃ」(麃公)

 

「どこの戦場も同様だが」
「秦軍の今ある力だけで、この合従軍をはねのけるのは至難の業じゃ」(麃公)

 

「成すためには、”中”からの新しい力の台頭が不可欠じゃろう」(麃公)

 

「つまらぬ感傷に浸っている場合ではないぞ」
「今は国が生きるか死ぬかの瀬戸際じゃろ」
「この大戦(おおいくさ)で化けてみろ、童・信」(麃公)

 

「(第二将軍) …一言で言うなら、”性格に問題あり”といった所だ」
「それは無論、戦いの天才だからだ」(春申君)

 

「秦将なんてチンケなもの討つ作戦じゃありませんよ」
「函谷関を落とす作戦ですよ」(媧燐)

 

「全軍大いなる凡戦を連ねて十日後に函谷関を落とすべし」(媧燐)

 

「老将には老将にしか務まらぬ役目がある」(蒙驁)

 

「才能という面なら、王翦や倅の武がおる」
「彼らのそれは六将に決してひけをとらぬ」(蒙驁)

 

「じゃがあの二人では函谷関は守れぬよ」
「それはなぜか」
「”重み”が足りぬ」(蒙驁)

 

「親父達……か」
「極端に単純明快な蒙武と、何を考えてるかさっぱり分からん王翦」(蒙恬)

 

「どっちも困ったもんだよなァ」
「結果、子もひねくれるって…」(蒙恬)

 

「一緒にするな」
「お前の不真面目さは父親とのことに起因する」
「俺はお前みたいに逃げはしない」(王賁)

 

「待て、野盗」
「貴様に国を守る覚悟はあるか?」(張唐)

 

「この国をしょって立つ武将になる覚悟が、貴様にあるかと聞いている」
「野盗・桓騎」(張唐)

 

「恐らく長期戦に出ているのではない」(昌文君)

 

「全ての戦場で等しく秦軍(こちら)の弱体化をはかり、機を見て一気に全軍総攻撃をかける」
「長期戦ではなく、逆に最短の短期戦をしかける気だ」(昌文君)

 

「ここからでは(総攻撃が)いつとは申せません」
「しかし現場の鋭い人間達は、すでに感じ取っているはずです」(昌平君)

 

「…わざわざ集める必要もなかったようですね」
「ならば皆さんに伝える言葉は一つだけです」
「明日の夜は函谷関の上で祝杯をあげましょう!」(李牧)

 

「俺の号令に従い、全力で戦え」
「以上だ、解散」(蒙武)

 

「俺が全中華最強の男・蒙武だ!!」(蒙武)

 

「この俺を止める者など天下に存在せぬ」
「楚将・汗明よ、貴様の頭はこの蒙武自ら叩きつぶす」(蒙武)

 

「最強の男が率いる軍勢も最強だ」
「この蒙武軍は無敵である!!」(蒙武)

 

28巻

「私自身も蒙武の檄に乗せられているのだ!」
「乗せられたまま暴れてやるぞ!」(壁)

 

「この兵力差──何か工夫をせねばと考えたのなら、それは大きな誤りだ」
「不器用は不器用に戦うのが一番強い」(貝満)

 

「蒙武は誰よりも勝ちにこだわる男だ」
「俺は信じるぞ、我らの将を」(壁)

 

「戦ってのは始め方が大事なんだよ」
「そこでその将が何を大切にしているかが分かる」(媧燐)

 

「私の場合は、”華やかさ”と”恐怖”」
「そしてひとそえの”かわいらしさ”だ」(媧燐)

 

「(退げる? 援軍?) ……いや、どちらも必要ない」
「獣ごときに遅れをとる二人ではない」(騰)

 

「戦は人を魅了してなんぼだろ?」(媧燐)

 

「そういう意味では戦象さん達は、いい仕事をした」
「その大きさ、もの珍しさに敵は、はしゃぎにはしゃいだからな」(媧燐)

 

「だが、戦場でそれはとても恐ろしいことだ」(媧燐)

 

「なぜならおっかない奴ほど」
「一緒にはしゃいどいて、気付かれないうちに首に手を回す」(媧燐)

 

「つまりは、華やかな最初の演目が風に消えた時──」
「ほぼ詰みの布陣が姿を現すってわけさ」(媧燐)

 

「ここから畳み込まれる中で一つでも対処を誤れば」
「お前ら、昼のお日様は拝めないぜェ?」(媧燐)

 

「援軍は送らぬ」
「この劣勢配置の中、もはや全ては救えぬ」(騰)

 

「今は二軍を見殺しにしてでも、本陣の崩壊を防ぐ刻(とき)だ」(騰)

 

「(大抜擢?) いや、そんなことはない」
「客観的に見て今この状況下で戦えるのは、騰軍内では俺と王賁くらいだ」(蒙恬)

 

「(じィ) 無茶はよせよ」
「俺の子を抱くまでは死ねないんだろ」(蒙恬)

 

「作戦通りだ」
「ここを守る歩兵が主力だが、命運を握るのは我ら騎馬隊であること忘れるな」(蒙恬)

 

「これは長期戦になる、一騎の損失も軽く考えるな」
「騎馬隊(我々)こそが、この戦いの生命線だ!」(王賁)

 

「巨大井闌車に巨大床弩」
「色んな天才がいるものだな、天下には」(春申君)

 

「国を守る覚悟だと? クク、笑わせる」
「秦が滅びようがどうしようが、俺の知ったこっちゃねェんだよ」(桓騎)

 

「(なぜここにいる?) …そうだな」
「一言で言やァ…戦が抜群に強ェからだろ」(桓騎)

 

「武将だ何だと偉そうにしてるバカ共の何倍もなァ」(桓騎)

 

「函谷関(ここ)を守りきれるかどうかは」
「この俺の才覚にかかっているからな…」(桓騎)

 

「今はそれ所じゃねェ」
「あのでけェ弩の出現で、潮目が完全に向こうに行っちまっただろうが」(桓騎)

 

「笑えねェ流れだ」
「のまれたくなけりゃ、こっちも今すぐでけェ手が必要だ」(桓騎)

 

「身を切ってエサを差し出すから、でけェ魚が釣れんだろうが」(桓騎)

 

「心配すんな、雷土。全部上手くいく」(桓騎)

 

「齢(よわい)十五にして初陣を飾った」
「そこから五十年、矛と共に泥と血にまみれて戦場を渡り歩いて来た」(張唐)

 

「今では秦軍でも最長の戦歴を持つ老将の一人だ」
「我ながらわるくない道のりであった」(張唐)

 

「あとはどう儂なりの”花道”を飾るかだ」
「別にそれが戦場で死ぬのなら、それでも構わぬ」(張唐)

 

「だが……毒は…ない。毒はなかろうが」
「こんなもの武将の死に方ではないわァ」(張唐)

 

「何をさらしてくれとんじゃ、このゲス共がァ」(張唐)

 

「……下らぬ。毒は人を殺す効率化を求めた歴(れつき)とした”武器”だ」
「老いぼれの下らぬ武将論でそこを歪めるでないわ」(成恢)

 

「やはり分かっておらんな、成恢」
「いや、分かるはずがない」(張唐)

 

「貴様のように己で戦うこともなく、姑息な毒と戯れてきた男には」
「人の力がっ、武将の力が分かるものか」(張唐)

 

「このたわけがっ」
「大将が背を見せて逃げるなァ!!」(張唐)

 

「貴様は戦が楽しいのだ」
「己の力で戦に勝つ快感にはまっておる」(張唐)

 

「…そしてそれは…名武将の持つ気質そのものだ」(張唐)

 

「腹立たしいが才能も…ある」
「土下座などせぬが…儂と約束せィ」(張唐)

 

「秦国一の武将となれ、桓騎」
「秦を…頼むぞ」(張唐)

 

「寝言は死んで言えよ、ジジイ」(桓騎)

 

「戦況を見るということは自軍の余力を見ることも含む」
「そこを抜かすと味方を多く殺すぞ、愚か者」(麃公)

 

「もうこうなったら、これも”戦国の女の常”として腹をくくるしかないよ」
「私達は出来る限りの備えをしておいて、後は男達の勝利を祈るだけだよ」(陽)

 

「この愚か者が」(王翦)

 

29巻

「矢の残数を考えず射ちまく