原作小説「凶乱令嬢ニア・リストン」ニア・リストンの名言・台詞をまとめていきます。
凶乱令嬢ニア・リストン 1巻
第一章
私は戦って死にたかった。
穏やかな死なんて望んでいなかった。
今度こそは。
──私を殺すモノを、きっと、探し出そう。
「──私じゃ、なければ、死んでいた」
私はただの被害者であり、死ぬはずだったニアの身体を生かす者だ。
少なくともこのまま病で死ぬ気はない。
この私が病ごときに殺されてたまるか。
焦ることなどない。
私がこの身体を手に入れた以上、数日で死ぬなど許すつもりはない。
(元の)ニアが失った明日を、私は今生きている。
第二章
生きることを求め始めたということだ。
いつも気だるく、臓腑に至るまで全身から悲鳴を上げていたこの身体が。
あの二人(両親)が毎日心配しているのなら、少しずつ元気になっている姿を見せるのも、
ニアとしての親孝行と言えるだろう。
まあ、全盛期ならともかく、
今のこの執事なら車椅子に乗っていても小指一本で勝ててしまうが。
全盛期(の執事)なら今の私でも左腕一本で十分だろう。
それくらいだ。
とにかく筋肉が足りない。身体を鍛える以前の問題である。
人並みに歩けるようになるのも、もう少し時間が掛かりそうだ。
これではいやらしいオーク程度さえ抜き手で胴体を貫けない。
手刀で首を刈るのが精一杯だ。
第三章
なぜ金属の塊が空を飛ぶのか。まったく恐ろしい時代だ。
冗談は拳打を飛ばす程度にしてほしい。
あれ(兄の侍女)もなかなか強い。リノキスよりは少しばかりできるようだ。
まあ、私にとっては枝毛の処理より簡単な相手でしかないが。
自分の強さが悪いのかもしれない。強すぎるのが罪なのかもしれない。
ああ、手頃な強者が欲しいものだ。
まあ、今の私には、これくらいでも上出来かもしれない。
そもそも武具の扱いは苦手だしな。私は素手の方が斬れる。
「武器の構造とは、とても理に適っているものよ」
「長い年月を掛けて効率化を求め、目的に特化しているのが、現存する武器の形だから」
武具を知る。
それもまた武である。
第四章
やはり病では死ななかった。
強さとは罪である。ああ、敗北を知りたいものだ。
(リノキスは)知らないのか。
女は何歳(五歳)であっても女であるということを。
たとえ動揺して緊張して余裕がなくとも、余裕がある体で構えること。
それが強者と向き合う時の最低限の心構えである。
「このままでいいわ」
「この髪(色)は病気と戦った証だから。何も恥じることはないわ」
第五章
「──お父様とお母様の望みに応え、できるかぎり尽くし助けになりたい…」
「それが私の意思です」
──身体がなまり切っているのはともかく、
そろそろ実戦の空気を感じたいところだしな。
このままでは勝負勘も錆びつくばかりである。
どこぞで血なまぐさい出来事でもあればいいが。
──平常心でありながら、しかしこれほど暴力的なことを考えられる以上、
私はきっと戦うことくらいしかまともにできない前世を生きたんだと思う。
第六章
病は治ったが、まだ身体が貧弱だ。
特に筋肉が足りない。
(職業訪問は)職人の仕事場を邪魔する以上、やはり最低限は知らないと失礼である。
それに多少知らないと話も合わないし困るのだ。
壊す人がいれば、直す人もいるわけだ。
…職人の苦労を少し見てしまった以上、これからは少し控えようと思う。
かつては名刀折りやら聖剣破壊やら邪剣粉砕やら、
もう毎日毎日趣味のようにやってきた気がするんだけど…。
あ、怒った。怒り出した。──計画通り!
だって仕方ないだろう。
こんなに武器が満ちている場所で、
一振りさえ許されないなんて、我慢できるわけがない。
久しぶりにほんの少しだが、実戦感覚に触れることができた!
やはりいい! 忘れかけていた感覚が蘇るようだ!
今私が欲しいご褒美は、一つだけだ。
私は、屈強な強者が欲しい。
思いっきり殴っても壊れないほど頑丈な強者が。
それにしても。どれもこれも回りくどいし、まだるっこいしい話ばかりだな。
時々歌い出すし。踊り出すし。
なんかこう、鉄拳一発ですべて解決するような劇はないのか。
第七章
礼を失すると家に傷が付く、
無知を晒すと家に泥を塗る、
油断すると家が付け込まれる。
そういう芝居かかったのはやめてほしい。
リノキスが興奮するから。とても熱い視線を感じるから。
私くらいになると、あえて先制攻撃を貰って相手の全力を出させてから勝つ、
というのがお約束であるが。
だって私が先制を取ったら勝負にならないから。
強者とはそういうものだ。
鍛錬する場を清めるのは、己が武に関わる全てへの敬意である。
そう語ったのは誰だったか。
己と向き合い磨くのが武。しかし武とは、外へ放つ力である。
鍛錬の場に、競い合う同門や同志に。己と向き合う環境に、血肉となるものに。
全てに感謝と敬意を示せ。
それがなければ、武ではなく暴力である、と。
ちょっと様子を見に行ってシャロが危ないと判断したら
全員血祭りにあげてやろうと思っているだけだ!
わくわくなんて心外な!
その辺の雑魚やチンピラなんて殴って何が楽しい!?
楽しいのは強者相手の時だけ!
──よし急ごう!
やだすごいニアになってから初めて心底わくわくするぅ!
本人の意志を無視して拘束されているってことはもう誰がどう見ても
たとえ一人二人の人死にが出ても誰もが正当防衛と判断してしまう状況じゃないか!
もうわくわくが止まらない!
良心の痛まない拳とは気持ちいいものだ。
それを振るえる相手が、あと四人もいるわけだ。
時間はないけど、機嫌がいいから死ぬほど手加減していっぱい楽しもうかな!
これから稽古で一週間、本番である公演が一週間。
そして例の二週間後の血祭りが待っている。
第八章
名残惜しい気持ちもあるが、人生は出会いと分かれの繰り返しだ。
どうせ避けられない別れだし、湿っぽいのは苦手なので、さっさと去ることにしよう。
「一山いくらの雑魚でも、百人もいれば一晩はじっくり楽しめるだろう」
「おいおい、今夜は眠れない夜になっちゃうか!? 楽しみだなぁ!」
こっちはもう今夜百人を相手に暴れてやる気で来たのに、蓋を開けたらこの様だ。
なんだこのがっかり感。ふざけるな。
この初手からの躊躇のなさ。ひどく好い。
よろしい。雑魚百人の方が絶対に楽しいだろうが、今夜はこれで我慢してやろう。
痛みはあるし、実際結構痛いし、多少の痣くらいはちょっと残りそうであるが。
だが、弱者の精一杯の反抗だと思えば、愛しささえ感じてしまう。
「(なんで?) あなたが弱いからでしょ?」
「子供一人殴り飛ばせない程度って話じゃない」
「私は、弱者の実力を受け止めてからねじ伏せるのが、強者の務めだと思っているの」
「ちゃんと次の強さの段階が、まだまだ上があることを示せば、敗北の糧になるでしょう?」
「負けた理由もはっきりわかるし」
「私が強いだけなのか、私が強い上であなたが弱いのか」
「どっちかしら」
「まあどっちにしろ、私が強いことは確かね」
「別に私に負けても恥ではないと思うわよ」
「──アッハハハハハハハハ!」
「ほらほら! 早く構えないと蹂躙するわよ!」
「私に刺客を向けるなら、もうちょっと強い人を寄越してよ」
エピローグ
本当に、夢のような夜だった。
確かに小粒が多いだけというつまらない相手ではあった。
しかし暴力に飢えていた状態であったため、予想以上に楽しい時間となった。
…欲を言うなら、やはり、全員が私の半分から八割は強いくらいの精鋭で、
というのが理想だが。
私も血湧き肉踊り骨へし折ったり折られたりする死闘感は欲しい。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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