原作小説「銀河英雄伝説(アニメ4期後編相当)」の名言・台詞をまとめていきます。
銀河英雄伝説10巻
第一章 皇紀誕生
「なあ、エヴァンゼリン、おれに政治家がつとまると思うかい」(ウォルフガング・ミッターマイヤー)
「どういうおつもりでおっしゃってるのか、わかりませんけど」
「ウォルフ、あなたは公明正大な方ですわ」(エヴァンゼリン・ミッターマイヤー)
「それは政治家でなくても、りっぱな資質だと思いますけど」(エヴァンゼリン)
「わたしには、お願いすることしかできないのです」(アンネローゼ・フォン・グリューネワルト)
「その結果、弟に献身してくれた人を不幸にしてしまいましたが」
「ヒルダさんは幸福になってくださいね」(アンネローゼ)
「フロイライン・マリーンドルフ…」
「いや、もうこの呼びかたはおかしいな」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
「あなたと予とは結婚するのだし」
「そうなれば、あなたはもうフロイラインではない」(ラインハルト)
「これから、あなたをヒルダと呼ぶことにする」
「だから、あなたも予を陛下などと呼ばず、ラインハルトと呼んでほしい」(ラインハルト)
「はい、陛下」(ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ、通称:ヒルダ)
「ラインハルト」(ラインハルト)
「はい、ラインハルト…さま」(ヒルダ)
「おれの本心を言うとな、ミュラー提督」
「皇帝は結婚式の花婿としては、おそれおおいことながら、ただの美青年にすぎぬ」(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト)
「だが、全軍の先頭に立つ大元帥としては、まことに、神々しいほどの御方だ」(ビッテンフェルト)
「吉事は延期できるが、兇事はそうはいかぬ」(パウル・フォン・オーベルシュタイン)
「まして国家の安寧にかかわりあること、陛下のご裁断がどう下るかはともかく」
「お耳に入れぬわけにはいかぬ」(オーベルシュタイン)
「筋がちがう。一方の罪を明らかにするため、他方の罪を免じるというのでは」
「そもそも法の公正がたもてないではないか」(ウルリッヒ・ケスラー)
「イゼルローンを撃つべし!」
「あれこそ新帝国の統一と平和を阻害する、最大の要因ではないか」(ビッテンフェルト)
「ルビンスキーなどが蠢動するのも、つまるところ」
「イゼルローンの武力を頼りにしているからだ」(ビッテンフェルト)
「フロイライン、いや、ヒルダ」
「予には支配者としての義務があって、それをはたさねばならぬ」(ラインハルト)
「すぐに予が親征することはないが、身重のあなたを遺して征旅に発つ可能性は大いにある」
「赦してもらえるだろうか」(ラインハルト)
「どうぞ、陛下の御意に」(ヒルダ)
第二章 動乱への誘い
政治的な要望と軍事的な欲求とは、しばしば背馳する。
「ユリアン、あんたを司令官として認めたときに、皆、決断してるのよ」
「あんたの判断と決定に、全面的にしたがうって」(カーテローゼ・フォン・クロイツェル、通称:カリン)
「それが嫌な連中は、出ていってしまったじゃないの」
「いま、遠慮なしにあんたが決断することこそ、期待にこたえる唯一の道じゃないかしら」(カリン)
「善政の基本というやつは、人民を飢えさせないことだぞ、ユリアン」
「餓死してしまえば、多少の政治的な自由など、何の意味もないからな」(アレックス・キャゼルヌ)
「帝国の経済官僚たちは、さぞ青くなっているだろうよ」
「もしこれが帝国本土まで波及したら、と」(キャゼルヌ)
「ユリアン、陰謀だけで歴史が動くことはありえないよ」
「いつだって陰謀はたくらまれているだろうが、いつだって成功するとはかぎらない」(ヤン・ウェンリー)
「負けるけんかは嫌いだ」(ダスティ・アッテンボロー)
「一戦まじえましょう、帝国軍と」(ユリアン・ミンツ)
「そうか、それもいいさ。おれたちは変化を待っていた」
「いま変化がおこった」(ワルター・フォン・シェーンコップ)
「これに乗じて、変化の幅を大きくするのも、りっぱな戦略だ」(シェーンコップ)
「時きたるというわけだ」
「果物にも、戦いにも、女にも、熟れごろがあるものさ」(オリビエ・ポプラン)
「ぼくは皇帝ラインハルトという人の為人について、ずいぶん考えてみました」
「そして、考えついたことがあります」(ユリアン)
「その(戦いを嗜む)点です」
「これはぼくが考えているだけで、かならずしも唯一の正解とはいえないかもしれません」(ユリアン)
「ですが、こう考えたからこそ、ぼくは帝国との戦いを決意したんです」(ユリアン)
「巨像が薄氷を踏むようなものだ」(ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ)
敵をして、その希望がかなえられるかのように錯覚させる。(ヤン)
さらに、それ以外の選択肢が存在しないかのように、彼らを心理的に追いこみ、
しかもそれに気づかせない。(ヤン)
「私もこのごろ、ようやく艦艇の動かしかたに、すこし自信が持てるようになりました」
「平和になったら、えらそうに本など書いてみましょうか」(エドウィン・フィッシャー)
「アッテンボロー提督にばかり印税をかせがせることもありますまいし」(フィッシャー)
「イゼルローンの捨犬だと。言ってくれるじゃないか」
「おれたちを何だと思ってるんだ、奴らは」(アッテンボロー)
「宇宙の恥さらし。平和と統一の敵」
「血迷った叛逆者」(ポプラン)
「首に縄をかけて白刃の上でダンスしている血まみれのピエロ」
「明日の死を考えもしない楽天主義の純粋培養物…」(ポプラン)
「おれには自虐趣味はありませんが」
「ええ、あなたたちの悪口ですよ」(ポプラン)
「ま、いずれにしても明日、死ぬことができるのは」
「今日、生きのびることができるやつだけさ」(アッテンボロー)
「逃げだせ、逃げてくれ」(ユリアン)
「同情するふりをしてもらわなくて結構だ」
「エキジビジョン・ゲームは二流俳優にまかせて、名優は皇帝陛下御前興行に出演するさ」(シェーンコップ)
「むろん、惑星ハイネセン奪還作戦に決まっている」
「そう遠くのことでもあるまい」(シェーンコップ)
第三章 コズミック・モザイク
「皇紀の忠告はもっともだが、寝台の端に蚊が一匹ひそんでいては、安眠もできかねる」
「戦いは共和主義者どもが望んだことだ、望みをかなえてやろうではないか」(ラインハルト)
「能ある者が味方ばかりでは、戦う身としてはりあいがなさすぎる」
「まして、ヤン・ウェンリーを失って、宇宙は寂寥を禁じえぬところだ」(ミッターマイヤー)
「メルカッツ健在と聞けば、おれはむしろうれしさを感じる」(ミッターマイヤー)
「皇紀ヒルデガルド、皇帝はあなたのものです」
「あなたひとりのものです」(アンネローゼ)
「どうかお離しにならないよう」
「そして見捨てないでやって下さいましね」(アンネローゼ)
「お心づかい、ほんとうに感謝します」
「でも、弟がわたしのものだったのは、ずっと昔のことです」(アンネローゼ)
「三年半前、弟は、わたしに見離されたと思ったかもしれません」
「いえ、きっとそう思ったでしょう」(アンネローゼ)
「わたしは弟が慰めを欲していることを、むろん知っていました」
「でも、同時に、別のこともわかっていたのです」(アンネローゼ)
「ね、ヒルダさん、おわかりいただけるでしょうか」
「弟は、過去をわたしと共有しています」(アンネローゼ)
「でも、弟の未来は、あなたと共有されるものです」
「いえ、あなたたちと…」(アンネローゼ)
「何でおれが、オーベルシュタインの指揮を戦場で受けねばならんのだ」
「おれは自分の失敗には責任をとるが、奴の失敗まで引き受ける気はないぞ」(ビッテンフェルト)
「奴は軍務省のデスクの前で生きてきたのだから」
「死ぬときもデスクの前で死ねばいいのさ」(ビッテンフェルト)
「もしジークフリード・キルヒアイスが生きていれば」
「こんな不愉快な人事とも無縁でいられたろうよ」(ビッテンフェルト)
「いい奴ほど早く死ぬ」(ビッテンフェルト)
「カリン、この前はおめでとう」
「戦果にではなくて、生還したことによ」(フレデリカ・グリーンヒル)
「あたしだって子供です。自分でもよくわかってます」
「他人に言われると癪だけど、自分ではわかってるんです」(カリン)
「たとえば、こうよ。あなたが大きくなったとき、男の人に」
「わたしはあのことを知ってるわよ、と言っておやりなさい」(オルタンス・キャゼルヌ)
「みんな必ずぎくりとするでしょう」
「これが母さんの予言よ」(オルタンス)
「地球には、ぼくの心を惹くものは何もなかった」
「あそこにあるのは過去であって未来ではないと思った」(ユリアン)
「未来が存在する場所は、すくなくとも地球ではなくて…」(ユリアン)
「切札がなくても勝負しなけりゃならんときがあるんだ。今年がそのときだ」
「お前はどう思っているか知らんが…」(アドリアン・ルビンスキー)
「たしかに、あんたは衰弱しているわね」
「そんな陳腐な台詞を吐く人間じゃなかったのに、表現力が貧しくなったわ」(ドミニク・サン・ピエール)
「以前はもうすこし気のきいたことが言えた人なのにね」(ドミニク)
「あんたが死んだ後、あんたが皇帝ラインハルトに対してどうふるまったか、戦ったのか」
「それとも足をすくおうとしただけか、他人が決めてくれるわ」(ドミニク)
「そして、あんたは、その評価に抗議することもできないのよ」(ドミニク)
「死ぬことなど、すこしも恐くはない」
「だが、オーベルシュタインの巻きぞえになるのは、ごめんこうむる」(ビッテンフェルト)
「奴と同行してヴァルハラへ行くことにでもなったら」
「おれは奴をワルキューレの車から突き落としてやるからな」(ビッテンフェルト)
「ビッテンフェルト家には、代々の家訓がある、他人をほめるときは大きな声で」
「悪口をいうときはより大きな声で、というのだ」(ビッテンフェルト)
「民主共和主義者とかいう奴らには、言いたいことを言わせておけばいいのさ」
「どうせ口で言っていることの1パーセントも実行できるわけではないからな」(ビッテンフェルト)
「うかがおう、ビッテンフェルト提督、ただし手みじかに、かつ理論的に願いたい」(オーベルシュタイン)
「噂にもとづいて批判されるとは心外だ」
「そう(事実ではないと)は言っておらぬ」(オーベルシュタイン)
「軍事的浪漫主義者の血なまぐさい夢想は、このさい無益だ」
「100万の将兵の生命をあらたに害うより」(オーベルシュタイン)
「1万たらずの政治犯を無血開城の具にするほうが」
「いくらかでもましな選択と信じる次第である」(オーベルシュタイン)
「実績なき者の大言壮語を、戦略の基幹にすえるわけにはいかぬ」
「もはや武力のみで事態の解決をはかる段階ではない」(オーベルシュタイン)
「皇帝ラインハルト陛下のおんもとにあって、戦場を往来し」
「陛下のおんために雄敵のことごとくを斃してきた吾らだ」(ビッテンフェルト)
「何をもって実績なしと方言するか」(ビッテンフェルト)
「卿らの実績とやらは、よく知っている」(オーベルシュタイン)
「卿ら三名あわせて、ヤン・ウェンリーただひとりに」
「幾度、勝利の美酒を飲ませるに至ったか。私だけでなく敵軍も…」(オーベルシュタイン)
「ミュラー提督らしからぬ不見識だ。黒色槍騎兵は帝国軍の一部隊」
「ビッテンフェルト提督の私兵ではあるまい」(オーベルシュタイン)
「その皇帝の誇りが、イゼルローン回廊に数百万将兵の白骨を朽ちさせる結果を生んだ」(オーベルシュタイン)
「一昨年、ヤン・ウェンリーがハイネセンを脱してイゼルローンに拠ったとき」
「この策を用いていれば、数百万の人命が害われずにすんだのだ」(オーベルシュタイン)
「帝国は皇帝の私物ではなく、帝国軍は皇帝の私兵ではない」(オーベルシュタイン)
「皇帝が個人的な誇りのために、将兵を無為に死なせてよいという法がどこにある」
「それでは、ゴールデンバウム王朝の時代と、何ら異ならぬではないか」(オーベルシュタイン)
軍務尚書の主張は、おそらく正しい、
だが、その正しさゆえに、人々の憎悪を買うことになるだろう。(アントン・フェルナー)
第四章 平和へ、流血経由
「予は誤ったようだ。オーベルシュタインは、いついかなる状況においても」
「公人としての責務を優先させる」(ラインハルト)
「そのあらわれかたこそが、他者に憎悪されるものであったのにな」(ラインハルト)
「皇紀、予はオーベルシュタインを好いたことは、一度もないのだ」(ラインハルト)
「それなのに、顧みると」
「もっとも多く、あの男の進言にしたがってきたような気がする」(ラインハルト)
「あの男は、いつも反論の余地を与えぬほど、正論を主張するからだ」(ラインハルト)
「彼女たち(宮廷の美女)は、皮膚はまことに美しいが」
「頭蓋骨のなかみはクリームバターでできている」(ラインハルト)
「おれはケーキを相手に恋愛するつもりはない」(ラインハルト)
「ビッテンフェルトには、すぎた部下たちだな」
「上官が無謀でも、よい部下は育つと見える」(アウグスト・ザムエル・ワーレン)
「毒なんぞ、とうに免疫になっておるさ」
「おれはオーベルシュタインの奴と何年もつきあってきたからな」(ビッテンフェルト)
「オーベルシュタインに私心がないことは認める」
「認めてやってもいい」(ビッテンフェルト)
「だが、奴は自分に私心がないことを知って、それを最大の武器にしていやがる」
「おれが気にくわんのは、その点だ」(ビッテンフェルト)
「おれはべつにイゼルローンの奴らを気にかけているわけではない」
「オーベルシュタインの毒蛇めに、わが世の春を謳歌させたくないだけだ」(ビッテンフェルト)
「第一、イゼルローンは、おれ自身の手で粉砕してやらねば、気がすまぬ」(ビッテンフェルト)
「要するに、皇帝の影に頭をさげると思えば腹もたたん」
「オーベルシュタインを人間と思うから腹がたつのだ」(ビッテンフェルト)
第五章 昏迷の惑星
「昂揚感をともなった緊張に、ときとして恐怖や楽観の微成分が混入する」
「吾々の精神状態は、初演をひかえた舞台俳優たちのそれに似ていたかもしれない」(アッテンボロー)
「苛酷な舞台であることは承知している」(アッテンボロー)
「ひとたび退場すれば、復活はありえないし」
「脚本家や演出家は姿を隠して、俳優の疑問に応えようとしない」(アッテンボロー)
「それでも、救いがたい精神状態が、吾々を舞台へと誘ってやまなかったのだ」(アッテンボロー)
「ご好意はありがたいのですけど、女性だからという理由で免責されるのは」
「わたしは不本意です」(フレデリカ)
「わたしはイゼルローン共和政府の主席ということにしていただいてますし」
「わたしがハイネセンに赴かなければ、軍務尚書は納得しないでしょう」(フレデリカ)
「独身者だけの楽しいパーティーに、妻帯者をまぜるわけにはいかんからね」(シェーンコップ)
「危険から逃げた、見さかいもなく不美人に手を出した、と言われたのでは」
「オリビエ・ポプラン一生の名おれだ。おれはついていくからな」(ポプラン)
「おめでたいですかね。ヤン先輩が大佐、おれが少佐、これじゃ将来の同盟軍は」
「天国じゃなく地獄の方角へ、一輪車で全力疾走ってことになりそうですが」(アッテンボロー)
「ジグソー・パズルを完成させるにしても、片がもともと不足しているのさ」(ポプラン)
「彼らが信じたくないなら、信じる必要はないのです」
「吾々は、ただ事実を話すだけで、解釈の自由は先方にあります」(ユリアン)
「…皇帝の衰弱が目に見えるものであったら、私たちはむろんそれに気づいたであろう」(エルネスト・メックリンガー)
「だが、皇帝の美と精彩は、すくなくとも表面上は、いささかの衰えも見せていなかった」
「私たちも、皇帝の病臥にいつのまにか慣らされていたようであった」(メックリンガー)
「ビッテンフェルトが怒ることはない」(ラインハルト)
「予自身も、ヤン・ウェンリーに対して戦術上の勝利をおさめることが」
「ついに叶わなかったのだからな」(ラインハルト)
「予はそれを残念には思うが、恥じてはおらぬ」
「ビッテンフェルトは恥じているのか?」(ラインハルト)
「(拒絶したら)いかがする?」
「そのときは奴らこそが、流血と混乱に対する責任を負うことになろうよ」(ラインハルト)
「おれが思うにだ、季節の変わり目には、かならず嵐があるものだ」
「それも、変わったと思いこんだ後に、大きな奴がな」(ビッテンフェルト)
第六章 柊館炎上
「…ラインハルト・フォン・ローエングラムは」
「深刻な意味で、民主共和主義にとっての敵対者である」(ユリアン)
「これは、彼が残忍で愚劣な支配者であるからではなく」
「まさにその反対の存在だからである」(ユリアン)
「それらが非民主的な手段によるものであったことは、この際、問題にならない」
「帝国の民衆は、民主的な手つづきなど欲していなかったからである」(ユリアン)
「これから家を改造しようなどと言ったら」
「ラインハルトは、よけいなことをしなくてもいい、と答えるでしょう」(アンネローゼ)
「改造してからそのことを告げたら、そうか、の一言ですみますよ」
「ラインハルトは、光年以下の単位のできごとには興味がないですから」(アンネローゼ)
「おさがりなさい、この方は銀河帝国の皇紀陛下でいらっしゃいますよ」(アンネローゼ)
「悪魔が妖怪につかまったら、人間としては共倒れを望むだけだ」
「ルビンスキーも存外だらしない」(ビッテンフェルト)
「卿ら、どうやら休息の時間は終わったらしいぞ」(ミッターマイヤー)
「いまの報告によると、イゼルローン軍のほぼ全部隊が回廊を出て」
「ハイネセン方面へ向かいつつあると」(ミッターマイヤー)
「王手詰み(チェックメイト)」(エルンスト・フォン・アイゼナッハ)
第七章 深紅の星路
「戦術レベルにおける偶然は、戦略レベルにおける必然の、余光の破片であるにすぎない」(ヤン)
「皇帝ラインハルトは、自分の理想と野心、さらには愛憎のために」
「自らを焚いて悔いることのない人だ」(ヤン)
「そして、それだけに、敵に対してすらそれを要求する」(ヤン)
「皇帝ラインハルトが」
「亡くなった友人のジークフリード・キルヒアイスを愛惜してやまぬのはそのためだ」(ヤン)
「そして、われらが元首ヨブ・トリューニヒト氏を軽蔑するのも、そのためだろうね」(ヤン)
「吾々がイゼルローンに拠り、大きな兵力を有しているかぎり」
「皇帝ラインハルトはともかく、帝国政府や軍の不安を消すことはできないだろうね」(ヤン)
「いつか彼らではなく、吾々自身にとってイゼルローンは重い荷物になるだろう」(ヤン)
「イゼルローンに固執しては、結局のところ」
「かえって政治的、戦略的な選択の幅をせばめてしまう」
「そういうことだ」(ヤン)
「後世の歴史家って人種は、流される血の量を、効率という価値基準で計測しますからね」(ユリアン)
「たとえ宇宙が統一されるまでに、さらに1億人が死んだとしても」
「彼らはこう言うでしょうよ」(ユリアン)
「たった1億人しか死なずに、宇宙の統一は完成された、大いなる偉業だ、とね」(ユリアン)
「彼らが兵をもって挑んでくるのであれば、こちらにそれを回避すべき理由はない」
「もともと、そのためにこそ親征してきたのだ」(ラインハルト)
「かのヤン・ウェンリーは、勝算がなければ戦わぬ男だった」
「ゆえに予の尊敬に値したのだが、彼の後継者はどうかな」(ラインハルト)
「戦わずして後悔するより、戦って後悔する」(ラインハルト)
「未熟だが、見るべきものがある」(ラインハルト)
「戦うにあたり、卿らにあらためて言っておこう」(ラインハルト)
「ゴールデンバウム王朝の過去はいざ知らず、ローエングラム王朝あるかぎり」
「銀河帝国の軍隊は、皇帝がかならず陣頭に立つ」(ラインハルト)
「予の息子もだ。ローエングラム王朝の皇帝は、兵士たちの背中に隠れて」
「安全な宮廷から戦争を指揮することはせぬ」(ラインハルト)
「卿らに誓約しよう、卑怯者がローエングラム王朝において至尊の座を占めることは」
「けっしてない、と…」(ラインハルト)
「ビッテンフェルトの猪突家め」
「いつのまにやら辞書に慎重とか用心とかいう単語を書き加えたらしいぜ」
「いまさら秀才ぶってどうする気だ」(アッテンボロー)
「どうした、予の顔に、呪いの影でもうつっているか」(ラインハルト)
「ブラウンシュヴァイク公をはじめ」
「何億人の呪いが集中しているやらわからぬ身だからな」(ラインハルト)
「失礼しました」
「陛下がどこかべつの宇宙に思いをはせておられるように見えましたので…」(メックリンガー)
「あえて奇策を弄する必要はない」
「間断ない攻撃を連続させて、敵を消耗させよ」(ラインハルト)
「冗談の一言は、血の一滴」(ポプラン)
「相手の予測が的中するか、願望がかなえられるか、そう錯覚させることが」
「罠の成功率を高くするんだよ」(ヤン)
「落とし穴の上に金貨を置いておくのさ」(ヤン)
「軍医どの」
「もはや原因不明ですむとは思わないでいただこう」(メックリンガー)
「皇帝のご病名をたしかめ、最善の治療をほどこしていただく」
「よろしいな?」(メックリンガー)
「おわかりかな、軍医どの、卿には地位にともなう責任があるということだ」
「何もなしえぬというなら、いっかいの町医者も同じこと」(メックリンガー)
「期待にこたえていただけるだろうな?」
「失礼、軍医どの、すこし興奮してしまったようだ」(メックリンガー)
「何を騒ぐか。皇帝がご逝去あそばしたわけではない」
「ここで節度を失えば、後日、皇帝よりお叱りをこうむることになるぞ」(ミッターマイヤー)
「おい、ロイエンタール、どうしたらいいと思う」(ミッターマイヤー)
「おれに重大な責任を押しつけて、自分はヴァルハラで美酒の杯を片手に見物だなどと」
「虫がいいではないか」(ミッターマイヤー)
「このえせ詩人野郎!」
「いつからオーベルシュタインの作った曲にあわせてピアノを弾くようになりやがった!?」(ビッテンフェルト)
「猪に聴かせるには、胡狼(ジャッカル)が作った曲でたくさんだ」(メックリンガー)
「二年前のイゼルローン攻防戦のとき」
「オスカー・フォン・ロイエンタール元帥を生かして還したのは残念のきわみだが」(シェーンコップ)
「かわりに銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムの首がとれるなら」
「採算は大きな黒字になるだろうな」(シェーンコップ)
「いまのままでも、負けない戦いをすることはできるでしょうな」
「帝国軍の動きは、奇妙に鈍い」(メルカッツ)
「後退しても、追撃をかけてはこないような印象です」(メルカッツ)
「だが、これでイゼルローンにもどっても、さらに戦力は減少して」
「つぎの戦いでは、現状よりもっと苦しくなるでしょうな」(メルカッツ)
「決まった」
「かの美しきブリュンヒルトに乗りこんで、皇帝の首をあげてやろう」(シェーンコップ)
「ぼくも同行するか、でなければ作戦自体を裁可しないかです」
「ぼくの目的は、皇帝ラインハルトと談判することで、殺害することではありません」(ユリアン)
「そこのところを、まちがえないでください」(ユリアン)
「…OK、ユリアン、先に皇帝と対面したほうが、やりたいようにやるさ」(シェーンコップ)
「礼儀正しく話しかけるか、あの豪奢な黄金色の頭に、戦斧を振りおろして」
「大きな紅玉に変えるか」(シェーンコップ)
「ぼくは必ず生きて還るつもりですが、帝国軍にも言分があるでしょう」
「ぼくが帝国軍の貪欲な胃袋におさまってしまったときには…」(ユリアン)
「そのときにそなえ、アッテンボロー中将を、つぎの革命軍司令官に指名します」
「当然ながら、提督には、ユリシーズに残留していただきますので、よろしく」(ユリアン)
「いや、屍体はひとつでいい。ラインハルト・フォン・ローエングラムの屍体だけでな」
「この世でもっとも美しく貴重な屍体ではあるが…」(シェーンコップ)
「ユリアン、気をつけるのよ」
「あんたって優等生のくせに要領の悪いところがあるから、皆が放っておけないんだわ」(カリン)
「とめないわよ。女にとめられて言うことをきくような男」
「いざというとき、自分の家族だって守れるはずないじゃない」(カリン)
「ワルター・フォン・シェーンコップから離れないようにするのね」(カリン)
「地面や床に足がついているかぎり、あれほど頼りになる男はいないって」
「母が言ってたわ」(カリン)
「美人に頼られては、いやとは言えないね」
「さて、カリン、おれにもひとつ頼みがあるんだがな」(シェーンコップ)
「恋愛は大いにやるべきだが、子供を産むのは、20歳をすぎてからにしてくれ」
「おれは30代で祖父さんになる気はないからな」(シェーンコップ)
第八章 美姫は血を欲す
「医師たちを責めるな。予も模範的な患者ではなかった」
「医師たちにとって、あつかいにくかったことだろう」(ラインハルト)
「医師にかかって必ず助かるものなら、病気で死ぬ者はおるまい」
「もともと期待してはいなかった。責めるな」(ラインハルト)
「で、あとどれくらいの間、予は生きていられるのだ?」
「それすらわからぬのか」(ラインハルト)
「待て! 卿らふたりとも、介入することを許さぬ」
「このまま放置しておけ」(ラインハルト)
「ヤン・ウェンリーの精神的な遺産を継承したと称するほどの男なら」
「先人に智はおよばずとも、勇においていささかは非凡なところがあろう」(ラインハルト)
「ヤンの後継者の名は何といったか」(ラインハルト)
「そのミンツなる者が、予の兵士たちの抵抗を排して、予のもとに至りえたならば」
「すくなくともその勇を認め、対等の立場で要求を受諾してやってもよい」(ラインハルト)
「それとも、いわゆる専制君主の慈悲や、その臣下の協力がなければ」
「ここへ至る力もないというのでは、何を要求する資格もあるまい」(ラインハルト)
「すべて、その者が姿を予の前にあらわしてからのことだ」(ラインハルト)
「おのれ、何という狡猾な」
「よし、こうなったら、他の叛乱軍どもを、せめておれの手で潰滅させてくれる」(ビッテンフェルト)
「共和主義者どもが勝ち誇ってブリュンヒルトから出てきても」
「奴らが帰る家をなくしてくれるぞ」(ビッテンフェルト)
「皇帝ラインハルトとの戦いで死ねるのだ」
「せっかく満足して死にかけている人間を、いまさら呼びもどさんでくれんかね」(メルカッツ)
「またこの先、いつこういう機会が来るかわからん」(メルカッツ)
「なに、そうなげくような人生でもあるまい」
「何と言ったかな、そう、伊達と酔狂で、皇帝ラインハルトと戦えたのだからな」(メルカッツ)
「卿にも苦労をかけたが、これからは自由に身を処してくれ…」(メルカッツ)
「ユリアン、ここはおれたちが防ぐ」
「お前さんは皇帝に会え」(シェーンコップ)
「会って話あうなり、敬意をこめて首をはねとばすなり」
「お前さんの判断で歴史を創るんだ」(シェーンコップ)
「事の軽重を誤るなよ、ユリアン」
「お前さんは皇帝に会って、対等の交渉をおこなうのが責務」(シェーンコップ)
「おれたちはそのために環境をととのえるのが役目だ」(シェーンコップ)
「おれはたったひとつだけ、ヤン提督に文句を言ってやりたいことがあるんだ」(シェーンコップ)
「昨年、ブルームハルトが生命がけで提督を守ったのに、提督は逃げきれずに死んじまった」
「あれだけは、いくら奇蹟のヤンでも、どじが過ぎたな」(シェーンコップ)
「ポプラン、マシュンゴ、ユリアンといっしょに行け」
「三人いっしょなら、どうにか一人前に闘えるだろうからな」(シェーンコップ)
「わかりました。後でまたお会いしましょう。かならず生きて…」(ユリアン)
「むろん、そのつもりさ」(シェーンコップ)
「ものわかりの悪い父親になって、娘の結婚をじゃまするという楽しみができたからな」
「さあ、さっさと行ってしまえよ、時間がない」(シェーンコップ)
「あのとき三分間長く闘っていたら、ロイエンタール提督の首は、おれのものだったさ」(シェーンコップ)
「そうしたら盾の表面に」
「あの金銀妖瞳(ヘテロクロミア)を宝石のように飾ってやったのにな」(シェーンコップ)
「敵ながら、賞揚するにたる男だ。だが、それにしても、味方も腑甲斐ない」
「いっそ、おれが迎撃の指揮をとろうか」(ミッターマイヤー)
「銀河帝国の皇帝ともあろう者が、客人に会うのに、服装をととのえぬわけにはいくまい」
「たとえ招かれざる客であってもな」(ラインハルト)
「若いの、名を聞いておこうか」
「なに、ワルター・フォン・シェーンコップに傷を負わせた奴の名を」
「知っておきたかっただけさ」(シェーンコップ)
「さて、誰が名誉を背負うのだ?」
「ワルター・フォン・シェーンコップが生涯で最後に殺した相手」
「という名誉をな」(シェーンコップ)
「ワルター・フォン・シェーンコップ、37歳、死に臨んで言い残せり」
「わが墓碑に銘は要らじ、ただ美女の涙のみ、わが魂を安らげん、と」(シェーンコップ)
「フライング・ボールの反則王を甘く見るなよ、マネキン野郎が…」(ポプラン)
「来させろ」
「まだその男は、予のもとに到着していないぞ」(ラインハルト)
「陛下がお望みとあれば、平和と共存を。そうでないときは…」
「そうでないものを」(ユリアン)
「すくなくとも、一方的な服従を申しこむために、ここに参上したのではありません」(ユリアン)
「ローエングラム王朝が、病み疲れ、衰えたとき」
「それを治癒するために必要な療法を、陛下に教えてさしあげます」
「虚心にお聞きください」(ユリアン)
「そうしていただければ、きっとわかっていただけます」
「ヤン・ウェンリーが陛下に何を望んでいたか…」(ユリアン)
「大言を吐く奴だ。予に教えてやると?」
「それにしても予の前にたどりついて気絶したのは、これでふたりめだな、ミュラー」(ラインハルト)
「医師を呼んでやれ」
「予には無用のものだが、この者には役だとう」(ラインハルト)
「それと、ミッターマイヤー、この者の大言に免じて、戦闘をやめさせよ」
「ここまで生き残った者たちには、最後まで生き残る資格があろうから」(ラインハルト)
「私は宇宙艦隊司令長官ミッターマイヤー元帥である」
「皇帝陛下のご命令を伝える」(ミッターマイヤー)
「戦うのをやめよ」
「和平こそが陛下の御意である」(ミッターマイヤー)
第九章 黄金獅子旗に光なし
「ユリアン、あなたはずるかったわね」
「ヤン提督が、あの人が生きていたら、きっとあなたを叱ったわ」(フレデリカ)
「ああ、まかせておいていただこう、ヤン夫人」
「帝国軍が指先で埃をさがしてもけちのつけようがないほど、完璧に整理してやるさ」(キャゼルヌ)
「ありがとう、あなた、わたしの人生を豊かにしてくださって」(フレデリカ)
「おれはうっかり死ぬこともできなくなってしまったぜ」(ポプラン)
「地獄へ行ったらワルター・フォン・シェーンコップがでかい面で」
「魔女どもを侍らせているかと思うと、行く気になれやせん」(ポプラン)
「オリビエ・ポプラン、宇宙暦771年15月36日生まれ、801年6月1日」
「美女たちの涙の湖で溺死、享年29歳」(ポプラン)
「ちゃんと自分で墓碑銘まで撰したのに、死文になってしまって残念ですよ」(ポプラン)
「何よ、5回や6回殺されたってすぐに復活するような表情してたくせに」
「何で死んじゃうのよ。あいつに復讐してやるつもりだったのに」(カリン)
「そうよ。わたしの産んだ赤ん坊を目の前に突きつけて」
「あんたの孫よ、お祖父ちゃん、と言ってやるつもりだったのに」(カリン)
「それがあの不良中年には、一番効果的な復讐だったのに…」(カリン)
「ね、わたしのこと好き?」
「もしそうだったら、黙ってうなずいたりしないで、はっきりおっしゃい」(カリン)
「好きだよ」(ユリアン)
「民主主義って、すてきね」
「だって、伍長が中尉さんに命令できるんだもの」
「専制政治だったら、こうはいかないわ」(カリン)
「しかし何だな、人間、いや人間の集団という奴は、話しあえば解決できるていどのことに」
「何億リットルもの血をながさなきゃならないのかな」(アッテンボロー)
「さあな、おれには論評する資格はない」
「なにしろおれは伊達と酔狂で血を流してきた張本人のひとりだからな」(アッテンボロー)
「なぜだ」
「なぜオーベルシュタインの野郎が死なないで、皇帝が亡くなるんだ!?」(ビッテンフェルト)
「この宇宙には正義も真実もないのか」
「大神オーディンは、貢物をむさぼるだけの役たたずか!」(ビッテンフェルト)
「キルヒアイス、ロイエンタール」
「それにケンプ、レンネンカンプ、ファーレンハイト、シュタインメッツ、ルッツ…」
「頼む」(ミッターマイヤー)
「頼むから、まだ皇帝をヴァルハラへおつれしないでくれ」
「皇帝はまだ現世にこそ必要な御方なのだ」(ミッターマイヤー)
「時代のひとつが終わったということだな」(ムライ)
「ささやかなものであったが」
「君や私にとって、イゼルローン時代というやつは、たしかにあった」(ムライ)
「私などにとっては最後のおつとめだったが」
「君らにとってはつぎの時代へのステップであってほしいな」(ムライ)
「卿とは、たしか地球で会ったことがあるな」
「それとも記憶ちがいかな」(ワーレン)
「なに、謝罪される筋のものでもない。人それぞれ、立場があってのことだ」
「それにしても、おたがい、ずいぶん多くの知人を失ったものだな」(ワーレン)
「ヘル・ミンツ、卿と私とはどちらが幸福なのだろうか」(ナイトハルト・ミュラー)
「卿らはヤン・ウェンリー元帥が亡くなるまで、そのことを知らなかった」
「吾々は、陛下が亡くなるについて、心の準備をする期間が与えられた」(ミュラー)
「だが、卿らは哀しみがスタート地点から始まったのに」
「吾々はまずゴールを迎えて」(ミュラー)
「それからまた心の飢えをみたすために出発しなくてはならない」
「生き残った者は…」(ミュラー)
「ハイネセンで死なねばならないとしたら、ここで死ぬ」
「避難民のように逃げまどうのはいやだ」(ラインハルト)
「何をおっしゃるのです」
「フェザーンでは皇紀と皇子が、陛下のお帰りをお待ちになっていらっしゃいます」(ビッテンフェルト)
「ご無事でおつれするのが、臣下としての責務なれば、失礼つかまつる」(ビッテンフェルト)
「皇帝の身命が無事であったのは、ビッテンフェルトの功績であったが」(メックリンガー)
「彼が芸術、ことに美術造形にまったく興味がなかったからこそ」
「すべてが迅速に処理されたのであった」(メックリンガー)
「もし美術品の焼失を懸念したら、万事が遅滞して重大な結果を生じたであろう」
「まことに幸運というべきである…」(メックリンガー)
「まず、陛下、憲法をおつくりください。つぎに議会をお開きください」
「それで形がととのいます。立憲政治という器が」(ユリアン)
「酒はよい味を出すまでに時間がかかります」(ユリアン)
「立憲政治に似あう人材がそろい」
「それをもっともよく運営するまでには日数が必要でしょう」(ユリアン)
「卿が目的とするところは、いささかちがうだろう」
「銀河帝国という器に、立憲政治という酒をそそぐつもりではないのか」(ラインハルト)
「そうなれば、民主思想とやらが、銀河帝国を乗っとってしまうことになるかもしれぬな」(ラインハルト)
「予はフェザーンに帰る。予を待っていてくれる者たちが幾人かいるのでな」
「最後の旅をする価値があるだろう」(ラインハルト)
「卿もフェザーンへ来るがいい」
「そのほうがよい」(ラインハルト)
「予よりもむしろつぎの支配者に、卿の抱負と識見を語っておくべきだろう」
「皇紀は予よりはるかに政治家としての識見に富む」(ラインハルト)
「具体的なことは、むしろ彼女と話しあうがよいだろう」(ラインハルト)
「これはもう、最後まで何か変事がつきまとうぞ」
「音もなく終幕とはいくまい」(アッテンボロー)
「とにかく、おれはユリアンにくっついてフェザーンまで行く」
「こうなれば最後の幕まで見とどけてやるさ」(アッテンボロー)
「まさか。留守番は子供のころからきらいでね」(ポプラン)
「聞くところでは、ムライのおっさんは楽隠居してしまう気らしいが」
「おれたちはそうもいくまい」(アッテンボロー)
「幕がおりて、劇場の収支が黒字になったことを確認するまでは」
「ユリアンにつきあおうや」(アッテンボロー)
「メルカッツ提督は旅を終えられた」
「そのことを、ご遺族の方たちにお伝えして、おれの旅も終わる」
「またいつか会おう」(ベルンハルト・フォン・シュナイダー)
第十章 夢、見果てたり
「予と卿とで、すべてのことを定めてしまっては」
「後の世代の人間がやるべきことがなくなってしまう」(ラインハルト)
「そうなれば、よけいなことをしてくれた、と、恨まれるだろう」(ラインハルト)
「おれはもう、ヤン・ウェンリーの下で服従心と忍耐心を費いはたした」(ポプラン)
「これから先、死ぬまで、誰にも頭を下げる気はないし」
「誰の家につながれるのも、ごめんこうむりたいね」(ポプラン)
「全宇宙を征服なさった覇王が、地上に足どめされ、病室に閉じこめられている」
「おいたわしいかぎりだ」(ケスラー)
「きさまひとり喚くな!」
「いつもきさまが逆上するものだから、他の者が迷惑するではないか」(ワーレン)
「おれたちは、きさまの鎮静剤ではないぞ!」(ワーレン)
「皇帝ご自身が身心の苦痛に耐えていらっしゃる」
「吾々7人がかりで耐えられぬはずがなかろう」(ミッターマイヤー)
「なさけない臣下を持ったものだ、と、皇帝がお歎きになるぞ」(ミッターマイヤー)
ヤン提督、ぼくはあなたの代理として、
この時代に冠絶した巨大な個性の終焉をたしかめます。(ユリアン)
提督が来世においでなら、どうかぼくの目を通して、
歴史の重大な瞬間を確認して下さい…。(ユリアン)
「夢を見ていました、姉上…」
「…いえ、もう充分に見ました。誰も見たことのない夢を、充分すぎるほど」(ラインハルト)
「姉上、いろいろとありがとうございました」
「姉上、このペンダントを…」(ラインハルト)
「もう私には必要がなくなりました」
「姉上に差しあげます」(ラインハルト)
「そして…キルヒアイスもお返しします」
「ずっとお借りしっぱなしで、申しわけありませんでした」(ラインハルト)
「うろたえるな」
「火災や爆発事故をおこして陽動するのは、地球教徒どもの常套手段だ」(ケスラー)
「奴らの狙いは皇帝ご一家以外にはない」
「仮皇宮の守りをのみ心がけよ」(ケスラー)
「私が奴らをおびきよせたのだ」(オーベルシュタイン)
「陛下のご病状は回復にむかい、ご健康となられた暁には」
「地球教の信仰対象たる地球そのものを破壊なさるであろう、と」(オーベルシュタイン)
「それを阻止するために奴らは軽挙に出てきたのだ」(オーベルシュタイン)
「皇帝はもはやご逝去をまぬがれぬ」
「だがローエングラム王朝はつづく」(オーベルシュタイン)
「王朝の将来にそなえ、地球教の狂信者どもを根絶する」
「そのために陛下にご協力いただいただけのことだ」(オーベルシュタイン)
「ぼくたちは、地球教徒に感謝しなくてはならないのかもしれない」(ユリアン)
「地球教徒に対する共通の憎悪によって」
「銀河帝国と民主主義が共存の道を見出すことができたのだから…」(ユリアン)
「こんな場所でこんなことをするなんて、つい50日前には想像もしなかった」
「生きてると退屈しないでいいな」(ポプラン)
「勘ちがいしないでほしいな」
「ぼくは、ローエングラム王朝の将来に何の責任もない」(ユリアン)
「ぼくがきさまを殺すのは、ヤン・ウェンリーの讐だからだ」
「そう言ったのが、聴こえなかったのか」(ユリアン)
「それに…パトリチェフ少将の讐。ブルームハルト中佐の讐。他のたくさんの人たちの讐だ」
「きさまひとりの生命でつぐなえるものか!」(ユリアン)
「主演俳優ひとりで、あまりはりきらんでくれ」
「おれたちの出番がなかったじゃないか」(アッテンボロー)
「助からぬものを助けるふりをするのは」
「偽善であるだけでなく、技術と労力の浪費だ」(オーベルシュタイン)
「ラーベナルトに伝えてもらいたい」
「私の遺言状はデスクの三番めの抽斗にはいっているから、遺漏なく執行すること」(オーベルシュタイン)
「それと、犬にはちゃんと鶏肉をやってくれ」
「もう先が長くないから好きなようにさせてやるように」
「それだけだ」(オーベルシュタイン)
「帝国などというものは、強い者がそれを支配すればよい」
「だが、この子に、対等の友人をひとり残してやりたいと思ってな」(ラインハルト)
「皇紀、あなたなら、予より賢明に、宇宙を統治していけるだろう」
「立憲体制に移行するなら、それもよし」(ラインハルト)
「いずれにしても、生ある者のなかで」
「もっとも強大で賢明な者が宇宙を支配すればよいのだ」(ラインハルト)
「もしアレクサンデル・ジークフリードがその力量を持たぬなら」
「ローエングラム王朝など、あえて存続させる要はない」(ラインハルト)
「すべて、あなたの思うとおりにやってくれれば」
「それ以上、望むことはない…」(ラインハルト)
「宇宙を手に入れたら…みんなで…」(ラインハルト)
「皇帝は病死なさったのではありません」
「皇帝は命数を費いはたして亡くなったのです」(ヒルダ)
「病に斃れたのではありません」
「どうかそのことを、皆さん、忘れないでいただきとう存じます」(ヒルダ)
「星が落ちたよ、カリン」(ユリアン)
「ぼくの予定表に(政治家)はないね」
「軍人になって専制主義の帝国と戦う、そしてその任務がおわったら…」(ユリアン)
「いいか、早死するんじゃないぞ」
「何十年かたって、おたがいに老人になったら再会しよう」(ポプラン)
「そして、おれたちをおいてきぼりにして死んじまった奴らの悪口を言いあおうぜ」(ポプラン)
「見えるか、フェリックス、あの星々が…」(ミッターマイヤー)
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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