「堕落論・白痴」の名言・台詞まとめ

まんがで読破「堕落論・白痴(坂口安吾)」の名言・台詞をまとめていきます。

堕落論

1945年8月──…戦争は終わった。半年のうちに世相は変わった。
特攻隊の若者は闇屋となり、未亡人は新しい面影に恋をした。

 

人間が変わったのではない。
人間は元来そういうものであり、変わったのは世相の上皮だけのことだ。

 

人間は堕ちる。
それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。

 

生きよ堕ちよ。
堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し救わなければならない。

 

戦時中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。

 

耐乏の精神。
戦時中の日本人は美しかった。

 

(特攻隊の)若者たちは、生きて帰れるなど夢にも思わなかった。

 

日本は美しかった。
あの偉大な破壊(爆撃)の下では、運命はあったが堕落はなかった。
無心ではあったが充満していた。
ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。

 

しかし、それは人間の真実の美しさではない。
人間の正しい姿と何ぞや?

 

爆撃直後の罹災者たちの行進は、素直な運命の子どもであった。

 

 

必要は発明の母というが、
その必要を求める精神は日本では「ナマクラの精神」と非難された。

 

必要を求めるところに発明はおこり、文化がおこり、進歩があるというのにだ。

 

必要なものを必要と言わず、欲しい物を欲しいと言わず、
変化を欲せず、進歩を欲せず…そして兵器は発達せず、
つまり根底的に作戦の基礎が欠けていたのだ。

 

すべてはあべこべなのだ
……そして、耐乏の精神は真理によって復讐される。
無惨極まる大敗北となった。

 

たしかにあの頃の日本は美しかったが、それは人間の真実の美しさではない。
堕落せよ。日本よ、日本人よ、ニセの着物を脱ぎされ!

 

欲するところを素直に欲し、イヤなものをイヤだと言う。
好きなものを好きだと言う、好きな女を好きだと言う。

 

戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。
人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。

 

そこから人間の歴史が始まるのではないか?

 

だが人間は、堕ちぬくためには弱すぎる。
カラクリなしでは生きられないのだ。

 

人間は永遠に自由ではあり得ない。

 

終戦後、我々はあらゆる自由を許されたが、人はあらゆる自由を許されたとき……
自らの不可解な限定と、その不自由さに気づくであろう。

 

自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、
人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。

白痴

「荒んだ町だぜ…俺の下宿は母屋の離れのあの小屋だ」
「まったく…住む建物も食物も、家畜とほとんど変わらない」(伊沢)

 

「どうして世の中が荒んでいるのかって?」
「(戦争が原因?) そんなバカな」(下宿の主人)

 

「この町は戦前からずっとこんな感じでしたし……」
「政治的理由で人間の性質が変わるわけがないですよ!」(下宿の主人)

 

「二百円──…毎月の給料」
「俺はこの二百円のために青春を犠牲にしているのだ…」
「生活だけでなく精神も魂もすべて…」
「この二百円に限定されるのだ」(伊沢)

 

「(サヨ) なんという幼い心……素直な心……」
「うす汚くあくせく生きる人間の忘れていた心──…俺たちに必要なのはこの人だ!」(伊沢)

 

「俺は女が欲しかった。だが女を所有するためには金がいる……」
「その女との生活が二百円に限定されるのだ」(伊沢)

 

「俺の胸の灯も芸術も希望の光もみんな、卑小な生活に消されてしまう」(伊沢)

 

「二百円の悪霊すらも、サヨの魂には宿ることができないのだ」
「この女はまるで、俺のために造られた悲しい人形のようではないか」(伊沢)

 

「考えることを放棄すれば、人生は楽だ」
「ひと思いに俺も兵隊にとられたら、考える苦しさから救われるかもしれない」(伊沢)

 

「サヨは俺の帰りを待ちうける、ただの肉体だ」
「ただひときれの考えももたず、在るものはただ無自覚な肉欲のみ──…」(伊沢)

 

「醜悪──……ああ…人間には理智がある」
「こんなとき(爆撃時)でもいくらかの抑制があるのが人間だ」(伊沢)

 

「理智に抑制も抵抗もないことが、これほどあさましいものだとは!」(伊沢)

 

「忘れ物を取りに行かなくては」
「早く! 先に逃げて。一瞬がすべてを手遅れにするから!」(伊沢)

 

「まて! 流されるな…そっちへ行けば死ぬだけだ」(伊沢)

 

「火も爆弾も…怖れるな!」
「見ろ、俺たちの一生の道はいつもこの道なんだよ」(伊沢)

 

「この道をただまっすぐ見つめて……俺の肩にすがりついて来い!」
「死ぬときはふたり一緒だ」(伊沢)

 

「俺はこの女に微塵の愛情も未練もないが、捨てるだけの張り合いもなかった──…」
「明日への希望がないのだ」(伊沢)

 

「今朝は果たして空が晴れて、俺たちの背に太陽の光がそそぐのだろうか」
「俺はそればかりを考えていた──…」(伊沢)

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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