マンガ「キングダム 屯留編~黒羊丘編」の名言・台詞をまとめていきます。
キングダム 屯留編
34巻
「(羌瘣) 終わったのか」
「そうか…それじゃやっと、飛信隊(ここ)で一緒に進めるな」(信)
「私は二つの目標を立てた」
「私も将軍を目指すぞ、信」(羌瘣)
「戦いの道に身を置くなら、そこの頂上を目指すべきだ」
「象姉もきっとそうする」
「だから私も大将軍になる!」(羌瘣)
「二つ目は…お前の子を産む」(羌瘣)
「そして今、英雄を目指す若者二人に、英雄になれなかった老人からの金言じゃ」
「蒙恬と信と王賁、三人で一緒に高みに登れ」(蒙驁)
「いや…それにしても……長い旅じゃったのォ…」(蒙驁)
「戦はそんなに軽いものではない」
「あれだけ苦労したのだ、それは蒙驁が一番分かっている」(蒙武)
「すさまじい長旅であったな…親父殿…」(蒙武)
「(政の子?) 死んでく人間もいりゃ、生まれてくる人間もいる…か」(信)
「選べ」
「ここで配下共々斬首となるか。私を主とあがめ、永劫の服従を誓うか」(王翦)
「敗戦の後は蛆がわくんだよ」
「くっせー文官共にとっては好機だろうが」
「朝廷の勢力図を塗り替える」(媧燐)
「(失敗の重さ?) 分かっています」
「だからこうしてまだ生きながらえているのです」(李牧)
「内乱期を抜けたそれぞれの国が弱くなるか逆に強くなるのか」
「そこが最大の注目点です」(李牧)
「(国の財源?) そんなセコイことするかい」
「儂の蔵を少し開いてやっただけじゃ」(呂不韋)
「大王は儂の思っていた以上にでかくなりおった」
「大王暗殺未遂事件──五年前のあのお遊びの時とは違う」
「今は真(まこと)に食い甲斐がある」(呂不韋)
「王を暗殺しても国は盗れん」
「その後に儂が立っても、民が納得せぬからだ」(呂不韋)
「民が納得する形で儂が国を盗るには、大きなカラクリが必要だ」
「全国民が目にする大きなカラクリが」(呂不韋)
「『加冠の儀』じゃ」
「李斯よ。そこで儂は大王ごと、この国を余さず平らげるぞ」(呂不韋)
「亡国をくい止める責を全うすることがまず、第一の王の道ではないか」
「無謀に見えようと一縷の望みがある限り、俺は座して滅びを待ちはしない」(嬴政)
「”宿願”のためだ、俺は中華を統べる王になる」
「こんな所でつまずくわけにはいかない」(嬴政)
「成蟜様が打倒・嬴政様を目論むとしたら、呂不韋を叩きつぶしてから」
「その後、正面から堂々とです」(瑠衣)
「嬴政様! どうかご兄弟、力を合わせて実権を王族の手に」
「そして、我らが国の繁栄を末永く」(瑠衣)
「もし本当に成蟜が謀略にはめられているのなら」
「この戦いは成蟜救出の戦いとなる」(嬴政)
「(難しい判断?) だから頼めるのはあいつしかいない」
「大至急、飛信隊に早馬を送れ!」(嬴政)
35巻
「大丈夫じゃ、何もできはせぬ」
「それよりもこれは大王派と王弟派の仲間内での同士討ちとなり」
「相手陣営は著しく力を失う」(呂不韋)
「儂らは何の痛みも伴わず、連中の四苦八苦する姿をただ眺めておればよいのじゃ」(呂不韋)
「大丈夫大丈夫、このくらいの敵ならね」
「壁が将軍に昇格したように、この二年でオレ達も成長したんだよ」(河了貂)
「でもね、壁」
「やっぱりこの二年で一番大きく成長したのは、信(あいつ)だよ」(河了貂)
「武将には二種類いる」
「常に本陣に構えて全体に安心を与える武将と」
「自ら先陣にて矛をふるい軍の士気を高める武将」(河了貂)
「もちろん信の目指す武将の姿は後者だ」(河了貂)
「信はもう、受けついだ王騎将軍の矛を使う準備に入ってるんだ」(河了貂)
「何とかやってやるさ」
「政(あいつ)が俺に頼み事なんて、意外と珍しいからよ」(信)
「本来二人を同じ所で戦わすのは得策じゃないけど、今回は例外」
「”早さ”が勝負」(河了貂)
「(大金をもらう?) それは無理だ」
「お前達もお前達の家族もこの反乱の後、必ず皆殺しになる」(成蟜)
「奴が俺をはめた悪事は、外に知られれば奴の命に関わる秘密事項だ」
「反乱後、奴は必ず関わった者達を粛清する」(成蟜)
「それは三族に至るまで徹底的に行われるだろう」
「かつて俺も謀略を目論んだ身、奴の考えはよく分かる」(成蟜)
「俺をここから出せば、お前らの家族も粛清されず」
「本当に大金を手にすることができるぞ」(成蟜)
「さあ時がない、今すぐ決めろ」
「お前達とお前達の家族の運命を!」(成蟜)
「瑠衣は離れたくありません…」(瑠衣)
「案ずるな。お前が戻るまでくたばりはせぬ」(成蟜)
「瑠衣、よく聞け」
「この後、俺の一派はお前がまとめ上げろ」(成蟜)
「俺がいなくなって半分は…去るだろうが、残った半分をお前がまとめろ」
「そしてその後、政の下に一本化しろ」(成蟜)
「お前は頭がいいし、心も強い」
「女だが十分にやれるだろう」(成蟜)
「な…何をおっしゃっているのですか…」
「瑠衣を、一人にしないで下さい」(瑠衣)
「奴が”蕞”へ出陣する前に、”中華統一”の話を聞いた」
「五百年の争乱に終止符をうち、世を正す」(成蟜)
「響きは美しいが、そうするには今の世に凄まじい血の雨を降らせ」
「中華を悲劇で覆わせることになる」(成蟜)
「正に血の業(わざ)。はね返ってくる怨念は、長平の比ではないぞ」
「奴も覚悟の上であろうが…それでも一人で受け止められる代物ではない」(成蟜)
「…奴が膝から崩れるようなら、俺がとって代わって成してやるかとも思っていたが」
「それも叶わぬ」(成蟜)
「飛信隊・信、貴様が奴の”剣”にして”盾”であることを忘れるな」(成蟜)
「この先きっと貴様の存在自体が、奴の支えとなる…」
「そこで貴様が倒れるようなら嬴政は…」(成蟜)
「大丈夫だ、俺は絶対に倒れねェ」(信)
「瑠衣…」
「許せ。また…苦労をかける」(成蟜)
「俺はお前と初めて会った時…」
「あの時からずっと、お前にほれている」(成蟜)
「……知っています」(瑠衣)
「そうか。それなら、いい…」(成蟜)
「過去の罪を帳消しにすることはできぬが」
「俺もあいつ(成蟜)と話すことはたくさんあった…」(嬴政)
「亡夫の遺言を受け、この瑠衣が一党をとりまとめ」
「兄王様の支えとなりまする」(瑠衣)
「成蟜様の時と同じように兄妹力を合わせて」
「必ず呂不韋を打倒致しましょう」(瑠衣)
「世に言う『正義』とは、その人柄に宿るのではなく」
「勝った者に宿るのだ」(呂不韋)
著雍攻略編
35巻
「お前らは単に頭数に呼ばれただけだ」
「援軍の本命は俺達だ」(王賁)
「乳くり合うのは本番が終わってからだ」
「待っていたぞ、二人共」(騰)
「(私情?) 馬鹿を言うな」
「俺は今、戦略の話をしている」(王賁)
「私は古い人間だ」
「戦争とは土地の奪(と)り合いではなく、武将の殺(と)り合いだと見る」(霊凰)
「私は著雍(ここ)を守りに来たのではない」
「騰を殺しに来たのだ」(霊凰)
「三軍それぞれ独自に戦い、決め事は一つのみ」(王賁)
「三日目の昼、日が天の真上に昇る刻(とき)」
「三軍それぞれ目前の敵軍・予備軍を撃破し、魏軍本陣に突入する」(王賁)
「それがこの著雍の攻略策だ」
「いいな、一刻のずれも許さぬぞ!」(王賁)
「それ(魏火龍七師の3人)が十四年も獄につながれていたのだ」
「その”渇き”を癒すのは、目の前の秦軍に他ならぬ」(呉鳳明)
36巻
「我が名は”魏火龍”凱孟!! 貴様らが相対す軍の大将也!!」
「貴様も相当な腕前らしいが、儂も相当な腕前である!」(凱孟)
「そこを踏まえて! この凱孟と一騎討ちをする度胸があるなら」
「我が両の眼にその面(つら)を見せィ!!」(凱孟)
「俺を呼んだ大馬鹿はてめェか」(信)
「儂は廉頗や王騎らと、一対一(サシ)で互角に渡り合った過去を持つ男だ」(凱孟)
「凱孟様は廉頗らと一対一(サシ)は一度もやってない」
「でもそれは賢い廉頗らは凱孟様との一対一(サシ)をことごとく避けたからだ」(荀早)
「それは即ちあの廉頗らさえも、凱孟様との一騎討ちは”死”を意味したからだ」(荀早)
「指揮官…あいつか…届くか?」
「すまない。私ができるのは、ここまでだ」(羌瘣)
「いくら軍師とは言え河了貂一人のために、何百何千の命を失う賭けに出んのかよ」(我呂)
「古参のお前らにとっちゃ馴染みの深い奴なんだろうが」
「一、二年の付き合いの俺らにとっちゃ納得しずれェー」(我呂)
「それにそもそも女の身で戦場に来てる時点で」
「こうなる覚悟は本人にも周りにもあったはずだろうが」(我呂)
「あいつはもう俺の身内…たった一人の妹みたいなもんだ」(信)
「テンのために特別無茶やってるようにうつってるかもしれねェが」
「俺は何もせずにテンを見殺しにするような真似は絶対に出来ねェ」(信)
「貴様にとって信とは何者か、貴様は心の奥底で奴に何を求めている」(凱孟)
「女軍師として命懸けで戦場などにいる貴様の”全欲望”をここにぶちまけてみろ」
「その内容次第で──貴様を”殺す”か”返す”か決めてやる」(凱孟)
「欲望とか分からない」
「ただオレは、信の夢がかなってほしいと願ってる」(河了貂)
「いや、それと…オレもあいつと一緒に幸せになりたい」(河了貂)
「だったら今すぐ飛信隊をやめて家に帰れ」
「やはり貴様の欲は女の欲よ」(凱孟)
「好いた男と共に戦場にあって添いとげようなどとはムシがよすぎる」
「このままいけばお前は必ず最悪の結末を迎えることになるぞ」(凱孟)
「オレは戦場(ここ)で戦って、そして幸せになるんだ」(河了貂)
「槍を極めんとする者で、魏の”紫伯”の名を知らぬ者はない」(王賁)
「ただで俺達を逃がす相手ではない」
「俺が”殿”を務める」(王賁)
「明日のためでもある」
「明日討ち取るために、奴の槍をもう少し見ておく必要があるのだ」(王賁)
「退路確保を続けるより、一度作らせて裏から崩す方が楽なんでね」(関常)
「日にちごとにチマチマ計算を立てて戦うことは性に合わん」(録嗚未)
「俺の軍は走り出せば目的地まで止まることはない」
「明日昼きっちり敵本営に攻め入ってやる」(録嗚未)
「私はこの著雍は、呉鳳明と私の対決の場とは見ていない」(騰)
「私は、これから秦軍の武威の一角を担うべき若き才能達が」
「傑物・呉鳳明に挑み、その力と名を中華に響かせる戦いだととらえている」(騰)
「不思議と才能が結集する時代がある」
「かつての”六将”しかり」(騰)
「確信はない、だから示してみよと言っているのだ」
「まずはこの戦で──」(騰)
「ひっとしたらこの戦が”第一歩”なのかもな」
「ああ、天下の大将軍への”本格的”な第一歩」(羌瘣)
37巻
「(俺?) 紫伯が現れるまで、お前達の後ろに隠れている」(王賁)
「そもそもこの俺ではなく、あいつらの名を知らしめるという乗りが胸クソ悪い」(録嗚未)
「頃合いか。ったくガキ共め」
「来ぬ時は分かっておるであろうな」(録嗚未)
「”槍の紫伯”──」
「伝説の名に違わぬその槍さばきに敬意を払いつつ、今度こそ貴様を打ち倒す」
「玉鳳隊隊長・王賁、参る!」(王賁)
「そういう危険を冒し、無理に見える戦局を覆してこそ名があるがのだ」
「それに勝手に紫伯にかなわぬと決めつけるな」(王賁)
「(玉砕?) バカを言え。道は始まったばかり…絶対に…」
「何が何でも魏軍大将軍にして”槍の紫伯”をこの手で討ち、ここ著雍を取る」(王賁)
「そしてその先も…」(王賁)
「後退などしている暇はない。易い戦の勝利でも足りぬ…」
「大いなる勝利を手にし続けねば…中華に名を刻む大将軍には決して届かぬ」(王賁)
「”夢”だ何だと浮ついた話ではない」
「これは…”王”家の正統な後継ぎとしての、この王賁の責務だ」(王賁)
「紫伯、貴様の敗因は俺に長く槍を見せたことだ」(王賁)
「紫伯…貴様には弱点がある」
「それは…貴様が”生”を拒絶している人間だということだ」(王賁)
「死人の分際でっ、道をふさぐな貴様っ」(王賁)
「他軍と連動すんのはお前らだけじゃねぇ」
「軍師の差が出たな、凱孟!」(信)
「戦に”光”などない」
「”意義”だの”夢”だのと語るのは無知なバカ共をかき集めるための、ただのまやかし」(凱孟)
「戦は強者が欲望のままに弱者を屠る単なる殺戮の場」
「それ以上でも以下でもない」(凱孟)
「(敵の反応が遅い?) このために少し遅れた」
「飛信隊(我々)で呉鳳明の首を取るぞ」(羌瘣)
「六将や火龍の時代は過ぎた」
「これから中華戦国の舵をとるのは、李牧や俺の世代だ」(呉鳳明)
「魏国のためだ」
「大師・霊凰の力は十四年前で止まっている」(呉鳳明)
「だが俺はあと一年で霊凰に並び、次の一年で大きく引き離す」
「強き者が残らねば、これからの戦国を魏は勝ち残ることはできぬ」(呉鳳明)
「戦国七雄。かつて百を超えた国々が七つの大国に収まって二百余年」
「いよいよその均衡が崩れる時が近付いている」(騰)
「滅びる国が出てくるということだ」(騰)
毐国反乱編
37巻
「”山陽”と”著雍”」
「強固な双子軍事都市として、魏国胸元への大きな楔とする」
「ここを足場に侵攻していくんだ、最後までな」(信)
「時代が次の幕へと移ろうとしています」
「戦国七雄”崩壊”の幕です」(李牧)
「その鍵を握るのは唯一人」
「この切迫した時の中、ついに来年加冠の儀を迎える秦王・嬴政」(李牧)
「やはり傑物じゃな、相国・呂不韋」
「この乱世に、そなたは”文の道”でも名を残すぞ」(蔡沢)
38巻
「醜態だ」
「かつての三晋のように国が分離したわけでもなければ」
「五百年前の幼稚な国家乱立時代とも違う」(李斯)
「今この大国秦の中で一勢力による独立国家誕生など、恥以外の何ものでもない」(李斯)
「棘だらけだ」
「棘が刺さり続け、その痛みで出会った二十一年前の光輝く面影は消え去った」
「”邯鄲の宝石”は、もはやはるか昔の話だ」(呂不韋)
「弱き者、愚かな者は食われる時代だ」
「男であっても女であっても」(呂不韋)
「そなたこそ笑わせる」
「燃え上がったかつての二人の大情炎に比べれば」
「今の逃避行など豎子達の戯言に過ぎぬ」(呂不韋)
「(用件?) そんなものはない」
「政治的な話なら他の者をよこす」
「儂はもっと大切な話をしに来たのだ」(呂不韋)
「恋人としての別れ話だ」
「恐らくこれが、本当の別れとなる」(呂不韋)
「実はな、美姫よ」
「舞台でそなたを見て花を贈ったあの時から」
「儂は変わらずずっとそなたを愛している」(呂不韋)
「後にも先にもそなた一人であろう、真に我が心を奪った女は」(呂不韋)
「我が美姫よ、さらばだ」
「どうかここで静かに余生を過ごせ」(呂不韋)
「別れではあるが、儂は最後まで愛しているぞ、美姫よ」
「たとえこれからさらに、そなたに恨まれることになろうともな」(呂不韋)
「五千人将は、三千・四千とはまるで違う」
「将軍のすぐ一つ下の五千人将の目を通してこそ」
「将軍の存在がいかなるものかより見えてくる」(騰)
「五千はただの踏み段に非ず」
「ここでしっかり甘えを落とし、成果を上げよ」(騰)
「俺はずっと打倒・呂不韋のことばかり考えていたが」
「母の苦しみを止めてやるのも俺の役目なのかも知れぬ」(嬴政)
「血を分けた、実の子としての…役目だ」(嬴政)
「独立はない、私は最後まで飛信隊だ」(羌瘣)
「呂不韋の一挙手一投足、この儂が決して見逃さぬぞ!!」(昌文君)
「よく考えれば恐ろしいことだ……」
「この私がいつの間にか、王などと呼ばれている…」
「何のとりえもなかった、この私が……」(嫪毐)
「破滅の道かい」
「言ってくれるじゃないか嫪毐」(趙姫)
「我が人生はとっくの昔にその道にある」
「今さら破滅が何だってんだい」(趙姫)
「これは破滅を急ごうって話じゃない」
「このガキを宿して、なぜか私の中に真逆の願望が生まれた」(趙姫)
「心を休めるって願望さ」(趙姫)
「役者はそろったな…」
「いよいよ、二十三年前の”奇貨”の実りを回収する刻(とき)が来たな」(呂不韋)
「王族が姿を消し拠り所を失った秦の民草は、この先に誰を頼りにする」
「誰にすがる、誰にこの国を託す」(呂不韋)
「この呂不韋をおいて他にあるはずがない」(呂不韋)
「私はこの中の誰よりも覚悟を決めている」
「悪名を…歴史に悪名を刻む覚悟までだ」(嫪毐)
「勘違いするな」
「俺は何もあきらめていないし、あがく必要もない」(嬴政)
「たしかに咸陽に兵力はない」
「だが…一つだけ教えてやろう、呂不韋──」
「反乱軍を止める軍は、すでに向かって来ているのだ」(嬴政)
39巻
「いよいよあの二人の最後の戦いだ」
「何が何でも勝って、政のもとに秦を一つにするぞっ」(信)
「舟だからってびびんじゃねェ」
「こうなりゃいつも通り強行突破だ!!」(信)
「政の危機だ」
「(無許可でも)駆けつけねぇわけにはいかねぇ」(信)
「永きに亘った王宮の権勢争いにようやく、大いなる決着がつこうとしている」
「故に想定外のことも起こるやも知れぬ」(嬴政)
「だが何が起ころうと、信じて待て」(嬴政)
「この呂不韋が反乱を成功させると言っておるのだ」
「ならば成功するに決まっておろうが!!」(呂不韋)
「左丞相・昌文君と共に咸陽へ行き反乱を鎮めてまいります」(昌平君)
「……相国、余計な問答は必要ない」
「察しの通りだ、世話になった」(昌平君)
「あえて泥舟に乗り換えたいと言うのなら、行かせてやればよいではないか」(呂不韋)
「しかし全く、こんなことで一喜一憂する愚か者ばかりよ」
「やはり何も分かっておらぬのだな」(呂不韋)
「”四柱”とは儂を華やかに彩るためのただの”装飾”にすぎぬ」
「”装飾”は所詮”装飾”」(呂不韋)
「それが一つや二つ身からはがれ落ちようと」
「この呂不韋という人間の強大さは一切揺らぐものではないぞ」(呂不韋)
「大王様、場所をかえませぬか」
「加冠の儀も終わり、今まさに”刻”は満ちようとしています」
「どこか二人きりで、”天下”などについて語らいませぬか」(呂不韋)
「正直…百の勢力を招き入れるよりも」
「貴公(昌平君)を味方にできることの方が、万倍の力になると確信する」(昌文君)
「十年以上、彼の下についてきた…」
「元商人という異質な経歴ではあるが」
「秦史における二大丞相”商鞅””范雎”に肩を並べる大人物であることは間違いない」(昌平君)
「信、この戦いは…絶対に”屯留”の二の舞にしてはいけない」
「あの時は…成蟜救出にギリギリ間に合わなかった…」(河了貂)
「今度は絶対にそんなことがあってはいけない」
「今回救わなくちゃいけないのは、政の子供だ」(河了貂)
「よりによって政のガキを狙うなんざ」
「そんなふざけたマネは地が裂けようとこの俺がやらせねェ!!」(信)
「あん時みたいに力を貸せ、飛信隊! 蕞兵!」
「死力を尽くして秦国大王の御子を助けに行くぞォ!!」(信)
「今子供に関して思うことは、時に不安と苛立ちと、多分に笑いを誘う困った存在だ」(嬴政)
「(席を対等?) あえてそうした」
「咸陽の戦いによって、明日どちらが玉座に座るかが決まる」(嬴政)
「ならばこれが最後の対話、対等に座して語ろうではないか」
「俺もお前に話したいことは多くある」(嬴政)
「ずっと妙な噂を聞く」
「”中華統一”という馬鹿な噂だ」
「天人にでもなるおつもりか」(呂不韋)
「夢想の中の物語ならばよしとするが」
「本気なら、およそ血の通った人間の歩む道ではござらぬぞ」(呂不韋)
「俺はずっと裁けなかった」
「俺は一度も背後にいたお前を裁けなかった」(嬴政)
「だが今度は違う」
「今行われている咸陽の戦いでこちらが勝った暁には」
「いかなる言い逃れも許さず、必ずお前まで罪を波及させ、大罪人として処罰する」(嬴政)
「そうしてお前を権力の座から引きずり降ろし、二人の戦いに終止符をうつ!」(嬴政)
「この呂不韋が”天下”を語る上で”国”や”民”や”王”」
「それらの前に大切なことを明らかにせねばなりません」
「”天下”の起源です」(呂不韋)
「答えはこれ(貨幣)です」
「これこそ、人の歴史における最大の”発明”にして”発見”」
「全てはここから始まったのです」(呂不韋)
「御すのは金ではなく、人の”欲望”です」
「金を使って”欲望”を操り、国を大きくするのです」(呂不韋、商人時代)
「”貨幣制度”が”天下”を作った」
「”金”が人の”欲”を増幅させたからです」(呂不韋)
「金のもたらした最大の発見は別の所にありました」
「裕福の尺度」
「当然生まれたのは、”他より多く得たい”という強烈な『我欲』」(呂不韋)
「(醜悪な世?) 戦争を第一手段とする世の中よりはるかにマシでしょう」(呂不韋)
「”暴力”ではなく”豊かさ”で全体を包み込む」
「それが私の考える正しい『中華の統治』です」(呂不韋)
「ええ、なくなりませぬ。なくなりませぬとも」
「いかなるやり方でも、人の世から戦はなくなりませぬ」(呂不韋)
「若き頃、儲けのために武器の商いにも手をつけ、広く戦を見てきたからです」(呂不韋)
「命懸けで戦う者達の思いはそれぞれ」
「しかし誰も間違っていない」(呂不韋)
「どれも人の持つ正しい感情からの行動だ」
「だから堂々巡りとなる」(呂不韋)
「違う、お前達は人の”本質”を大きく見誤っている」(嬴政)
「たしかに人は欲望におぼれ、あざむき、憎悪し殺す」
「凶暴性も醜悪さも人の持つ側面だ」
「だが決してその本質ではない」(嬴政)
「その見誤りから争いがなくならぬものと思い込み、その中で最善を尽くそうとしているが」
「それは前進ではなく、人へのあきらめだ!」(嬴政)
「そこに気付かぬが故に、この中華は五百年も戦争時代を続けている」(嬴政)
「人の持つ本質は──光だ」(嬴政)
40巻
「人が闇に落ちるのは,己の光の有り様を見失うから」
「見つからず、もがき、苦しみ…悲劇が生まれる」(嬴政)
「その悲劇を増幅させ、人を闇へ落とす最大のものが戦争だ」
「だから戦争をこの世から無くす」(嬴政)
「武力でだ。俺は戦国の王の一人だ」
「戦争からは離れられぬ運命にある」
「ならば俺の代で終わらす」(嬴政)
「暴君のそしりを受けようが、力でっ…中華を分け隔てなく、上も下もなく一つにする」
「そうすれば必ず俺の次の世は、人が人を殺さなくてすむ世界となる」(嬴政)
「しかし…それにしても…」
「大きゅうなられましたな……大王…」(呂不韋)
「下がってろ、根性宮女」
「もう大丈夫だ」(信)
「俺のこと知ってるか?」
「お前の父ちゃんの一番の友達の信だ」(信)
「くそっ。どこかに、オレがどこかに活路を見ィ出さないと」
「せっかく政が加冠し秦国が生まれ変わろうとしてるのに…」
「全てが無に帰してしまう」(河了貂)
「(昌平君を)誇張して言うなら武力は蒙武級、そして誇張なしに頭脳は李牧級」(介億)
「ゾッとするであろう」
「あの御方が『秦』ではなく生国の『楚』で立っていたとしたら」(介億)
「昌平君(先生)が将を務める一戦、中で見ぬ手はありませんよ」(蒙毅)
「オレは飛信隊の軍師でもあるけど、総司令・昌平君の弟子でもある」
「今はオレを…昌平君を信じてくれ」(河了貂)
「皆の者いよいよだ、この包囲は二度と作れぬ」
「今が正に我らに与えられた唯一の勝機だ」(昌平君)
「一撃必殺、命にかえても戎籊公の首を取るぞ!」(昌平君)
「蛮勇だ、追う手間が省けた」(昌平君)
「私も中華を統べることを夢に描く男の一人だ」
「そして、現秦王はその夢を預けるに足る器の王だからだ」(昌平君)
「これは我々の、いや…大王様の……」
「これは…即位されてから、き、九年に及ぶ……呂不韋との長き戦いにおける…」
「だ、大王様のっ…完全勝利だ!!」(昌文君)
「大王。結果はともかく、ようやく決着がつきましたなぁ」(呂不韋)
「そうか…この儂が負けたのか」
「いや……正に完敗だ……」(呂不韋)
「実はそれ程大事だったのさ、今回失敗した反乱ってのが」
「それが敗れた。王賁、秦国はこれから新しい時代に突入するぞ」(蒙恬)
「二度とこのような反乱が起きないよう──」
「国家の禍(わざわい)となる火種は完全に消しておかねばなりません」(嬴政)
「どうかっ、どうか二人の子の命だけは助けてくれ!」
「母からお前への最初で最後の頼みだ!」(趙姫)
「母上…残念ですが、それでも救えません」
「理由は…先程も言った通りこの国に、反乱の芽を残してはならないからです」(嬴政)
「あ、あなたこそふざけないで下さい」
「今…そんなに命懸けで二人の御子を助けようとしている熱意を…愛情をっ…」
「どうして政様に向けることが出来なかったのですか」(向)
「どんなにつらい世界であったとしても…」
「大王様にとっては、大后様がたった一人の母親だったんですよ」(向)
「(これから?) 正直…それが分かる人間は唯一人としていない」(呂不韋)
「しかし不思議と…心の隅でどこか高揚しているのも事実です」
「さすが私の息子です」(呂不韋)
「知っての通り、美姫…大后様は私の元恋人」
「──しかし蓋を開けてみれば、出産した日がどうやっても計算が合わなかった」(呂不韋)
「…今のは、本当にそうであったならばと」
「実はごくたまに思う時もあったという話です」(呂不韋)
「お互いに…よく生きてここまでこれたものです…」
「あなたは全てを失ってしまったが…どういう形であれ…旅が終わったのです」(嬴政)
「裸足で棘だらけの道を歩まされた、あなたの旅が……ようやく…」(嬴政)
黒羊丘編
41巻
「(裁くまで)半年……まァ、しょうがねェか」
「打ち倒した相手はそれだけでかかったって話だ」(信)
「覚えてるか、政」
「初めて会った時、俺はお前に王なんて誰でもいいって言ったの」(信)
「あれは俺の間違いだ」
「誰でもよくはねェ、王こそ大事だ」(信)
「お前しかいねェ」
「中華を統一して、戦国を終わらせれる王はお前だけだ、政」(信)
「国内統一でも数えきれぬ程の犠牲と苦痛を伴った」
「それが中華となれば、その比ではない」(嬴政)
「だが秦国内の争いは無くなったぜ」
「そういうことだろ」(信)
「それに、苦痛しかなかったわけじゃねぇよ」(信)
「その(一丸となる)極限状態を秦国が持続できる限界の年数が”十五年”」
「つまり、ここから十五年で六国全てを滅ぼして、中華を統一する」(嬴政)
「昌平君も俺も本気でやるつもりだ」(嬴政)
「ゆくゆくは、秦の六大将軍が復活する」
「信。お前はそこに割って入り、必ず六将の一席を掴み獲取れ!」(嬴政)
「……いよいよ待ったなし、雄飛の刻(とき)だ!」(嬴政)
「列国にとっては絶好の攻め時だ」
「儂が趙で現役なら一時的に魏と和平し」
「一気に大軍で南下して大いに領土を削り取るがのォ」(廉頗)
「失せろ。私は宮廷とかでブヒブヒやってるブタ共が大嫌いなんだよ」(媧燐)
「同じく私も武将の類の人間が心底嫌いだ」(李園)
「だが、国家瓦解の危機にあるこの時、私は貴殿に頭を下げねばならぬ」
「──私と共に宰相の席に座り、新しい大国楚の土台を築いてくれ、媧燐」(李園)
「(剣?) どうした? 俺は味方だぞ?」(桓騎)
「黒羊はでかい、実力のあるお前達の援軍は本当に嬉しく思っている」
「ただ一つだけ、青臭ェ戦(や)り方やってるっつー話だけはがっかりだ」(桓騎)
「……だが桓騎軍(ここ)に来たからには、桓騎軍(ここ)の戦り方に従ってもらう」(桓騎)
「ここでは略奪・虐殺、何でもやるからそのつもりでいろ」
「やりたいことは全部やる」(桓騎)
「勝つためだ、全ては」(桓騎)
「お前らも一皮むけるいい機会だ」
「ここで大人の戦いを覚えていけ、飛信隊」(桓騎)
「重要な役目の片方をお前に与えてやってんだ、しっかり期待に応えろよ」
「失敗したらただじゃすまないぜ? お前」(桓騎)
「これ(樹海)に似た所で育った、問題ない」(羌瘣)
「…少しだけ、二人とも頭の片すみに入れておけ」
「きっとここは、丘の取り合いだけの単純な地じゃない」(羌瘣)
「退がるな、飛信隊!!」
「背を見せるのは今は危ねぇ、はさまれてんなら背を助けあってその場で戦え!!」(信)
「秦国のアホ共よ、うちらの大将・紀彗が出陣前に言っていたぞ」
「この”黒羊”では、相手を翻弄した方が勝つってな」(馬呈)
「……この黒羊では、強引にでも先に戦の主導権を手にすることが重要です」(紀彗)
「博打ではない!」
「私はあの二人の力を信頼している」(紀彗)
「さっそく仕事だ、ゼノウ」
「お前の”力”で盤上を叩き壊してこい」(桓騎)
「用心深いからではない」
「まだ下で桓騎の匂いを嗅いでいないからだ」(慶舎)
「無用な口出しだ、紀彗」
「今は私と桓騎の間に割って入るな」(慶舎)
42巻
「戦で最も恐ろしいことは──」
「優位に立っていると思っていた状況が、知らずに己の死地へと変わっていることだ」(岳嬰)
「(敵を)止めに行くのではない、”狩り”に行くのだ」(慶舎)
「そこで静かにしていろ、紀彗」
「桓騎の片腕が砕ける音を聞かせてやる」(慶舎)
「(後続?) 全て叩きに行け、一隊も前に通すな」
「ここで完全に頭と後続を”分断”する」(慶舎)
「もう出した手は引けぬぞ、桓騎…」(慶舎)
「趙の奴らには素人丸出しの逃げに見えてるだろうな」
「だが何だかんだであの逃げ方が一番多く助かるんだよなァ」(桓騎)
「元野盗団の桓騎軍はどんな下手うったとしても」
「ぜってェ手ぶらじゃ帰らねェんだよ!」(雷土)
「今私達は敵の後ろにいる」
「こんな好機はめったにない」(羌瘣)
「オイ伝者、帰って桓騎将軍に伝えろ」
「やらかしちまった責任の重大さは俺達が誰よりも重く受け止めてる!」(信)
「だから二日目以降で必ず目前の敵を撃破し」
「俺達飛信隊が戦局を覆すきっかけを作る!」(信)
「そして最後はこの俺が敵将・慶舎の首をとって」
「黒羊の戦いを勝利に導いてやるってなァ!!」(信)
「今日一日の苦戦の中で、やれることやれないこと、この樹海地での戦い方が大体分かった」
「この首にかけて明日は前線を突破して、隊を中央丘横まで持って行く」(河了貂)
「三千将とかになると」
「さすがに敵を討つのにどのくらい味方に犠牲が出るかを少しは考える」(羌瘣)
「そして今、万の軍の敵将の首を、犠牲無しで討てる好機がある」(羌瘣)
「そうだな」
「つまり、飛信隊のために無茶をやるんだ」(羌瘣)
「確かに難しくはあるが勝算がないわけじゃない……」
「仮にも、千年前からこういう仕事をやってきてる一族の出ではあるからな」(羌瘣)
「偶像崇拝か」
「珍しいな、軍の将にしては」(羌瘣)
「別に笑いはしない」
「ただ、命をもらうだけだ、趙将」(羌瘣)
「これ(人形)はすがるものではなく、奮わせるものだ」(劉冬)
「昔、唯一のものを失くした」
「そして今はまた…別のものを持っている」(羌瘣)
「副長自らのこの無謀」
「お前の決意の深さの現れとして、あえて敬意を払おう」
「だが、俺も倒れられぬ理由がある」(劉冬)
「お前達秦軍を、黒羊の先へ行かすわけにはいかん」(劉冬)
「川辺の陣の強さは、通常の陣のそれの”十倍”らしいぜ?」
「つまりここがお前らの進軍の”終着地”てわけだ、飛信隊」(馬呈)
「今は全て軍師にかかってる。オレを信じて待ってて、信」(河了貂)
「対岸を陣取られた渡河の戦いは、野戦の中で一番の難題だ」
「突破口となるのは”橋”か”船”」(昌平君)
「しかしもしこの二つが無い場合は”無手”の状況」
「つまり打開策がないということだ」
「この場合は長期戦に切り替えるしか道はない」(昌平君)
「あきらめちゃダメだ。たとえ昌平君が”無手”と言った状況であっても」
「そこに道を切り開くのが飛信隊の軍師だ!!」(河了貂)
「どんだけ模擬戦をやっても、やっぱり舟か橋がないとこの川は攻略できない」
「でも舟を作る時間なんて当然ない」(河了貂)
「だから橋をかけるしかない」
「これから飛信隊流の橋をかけて、この川を攻略する」(河了貂)
「川如きにひるむなっ、ここのために仲間達は血を流しているのだ」
「っ私に続けっ、ここに飛信隊の橋をかけるぞ!!」(渕)
「この渡河には”武力”も”知略”も必要ない。必要なのは”別のもの”だ」
「そして、それは誰よりも渕さんが強く持ち合わせているものだ」(河了貂)
「”責任感”だ」(信、河了貂)
「たった百人から始まったこの隊の…結成当初から副長を七年務めてんだ」
「信頼を置けるのは武力や知略にだけじゃねェんだよ」(信)
「やってくれ、渕さん」
「この場を一番に任せられんのは──渕さんだ!」(信)
「信殿、あなたはアホそうに見えて…意外と策士だ」
「そんな目で、そんな風に言われたら…為し遂げぬわけにはいかぬじゃないですか!!」(渕)
「…テン、ひょっとして超えたか?」
「昌平君をだよ」(信)
「バッ、バカなこと言うな。先生はオレの十倍凄いんだぞ」
「でも、今日ので九倍くらいにはいけたかもしれない」(河了貂)
「安心して待ってろ、お前達の力を使う時が必ず来る」
「そん時は、俺達桓騎軍が勝つ時だ」(桓騎)
43巻
「今、右の戦場の”主導権”は完全にオレ達が手にしてる」
「これからそれを桓騎軍全体のものに広げる」(河了貂)
「音を立てるな」
「今…いいところだ」(慶舎)
「来い、桓騎」
「早くお前の匂いをかがせろ、足音を聞かせろ」
「そうすれば鼓動も伝わり、お前の心臓を握りつぶせる」(慶舎)
「お頭は基本フザけてるが、無駄なことは好まない人だ」(那貴)
「だから、今回はすっぽかした方が”得”するって思ったってことなんだろ?」(那貴)
「逆だよ、強敵ならなおさら仲間達の元に戻らないと」
「……どんな相手だろうと負けるわけにはいかないんだ……」(羌瘣)
「その矛の若い男が信だ」
「李牧様が桓騎と並べて名指しであげた標的だ」
「確実に首を狩り取れ」(慶舎)
「そういう奴に限って、最後は俺の手の平の上でクリクリ踊って」
「ぶっ殺されて大グソ漏らすって話だろ?」(桓騎)
「”沈黙の狩人?”」
「あっさり血相変えて動きやがって、ザコが」(桓騎)
「実戦で慶舎を討つのは私でも至難のワザでしょう」
「なぜなら慶舎は常に自分の張り巡らせたアミの中で相手の失敗を”待つ”からです」(李牧)
「彼を討つにはその”アミ”の外に、何とか彼を出さないといけない」(李牧)
「胸に留めておきなさい、副官金毛」
「慶舎がもしその”アミ”の外に出た時は」
「いくら慶舎と言えど討たれる恐れがあることを」(李牧)
「しっかりと目に焼きつけて死ね、慶舎」
「それが、狩られる奴の見る景色だ」(桓騎)
「ひるむな、離眼兵」
「こ…これほどの暴力、こんな獣の如き奴らだからこそ」
「何があっても黒羊を抜かせるわけにはいかんのだ!!」(紀彗)
「今回はその見落としがこちらに”吉”と出て、お前の方に”凶”と出ただけのことだ…」(慶舎)
「お前の”恐ろしさ”は十分に分かった…」
「そしてお前の”弱点”もよく分かったぞ」
「桓騎…首を洗って待っていろ……」(慶舎)
「全てを出し尽くさねば、この敵は止められぬ……」
「だが、三人が力を合わせれば必ず勝てる」
「馬呈、劉冬、離眼の力を侵略者に叩きつけるぞ」(紀彗)
「敵の視界から消えてるんなら丘の乱戦なんか無視して、もっとでけェもんが狙えるはずだ」
「俺達の手で敵の総大将・慶舎の首を取るぞ!!」(信)
「この戦いは、かつての六将級と言われる桓騎と」
「三大天の最後の一席につこうとしている私」
「二人の傑物の戦いだ」(慶舎)
「その間に割って入れると思ったか」(慶舎)
「李牧様が脅威としているのはお前達の成長後の力、今ではない」
「来るには五年早かったな、飛信隊」(慶舎)
「よく聞け、慶舎」
「昔、王騎ってすげェ人がいた」
「その人が先頭を走る時、後ろの兵は鬼神と化し、いつもの十倍強くなった」(信)
「そういう”力”が大将軍にはありやがる」
「それを今からてめェに見せてやる」(信)
「ヤロォ共、へばってんじゃねェぞ」
「苦しいんなら俺の背を見て戦え、俺の背だけを見て追いかけて来い!!」
「続け飛信隊っ!!」(信)
44巻
「趙将・慶舎、別にあんたの落度ってわけでもない」
「皆が騙されてる」
「周囲の想像以上に飛信隊とその隊長・信は強い」(那貴)
「だよな……俺らが新六将の席を狙ってるように」
「趙で三大天の席を狙ってるお前の刃が軽いわけがねェよな」(信)
「侵略者じゃない」
「私達は…飛信隊だ…」(羌瘣)
「妙だな……この男のことはずっと前から見ている……」
「李牧様と同じように、その成長を注視していた」(慶舎)
「しかし……この男は想定していたよりも…はるかに大きい」
「いつの間にこれ程の成長を」(慶舎)
「……おのれ…今度はこちらにっ…”凶”と──……」(慶舎)
「無縁……恩を返しきれなかった……」(慶舎)
「ただの口約束だが、お前が恐れるようなことは離眼では起こさせない」(羌瘣)
「(敵は)紀彗…なるほどねェ──……」
「この戦…勝ったな」(桓騎)
「長くやってるせいでお前ら最近、考え方が”軍”に染まってきてねェか?」(桓騎)
「理由だの、戦術だの、どうでもいいだろが」
「四の五の言わずに、昔みてェに俺を信じろ」(桓騎)
「俺のやってることはいつも、完全勝利の結果につながっている」(桓騎)
「次は、久々に俺達らしいやり方で存分にやる」
「”弱者をいたぶる”」(桓騎)
「……生きてやがったか、面倒くせーのが」(桓騎)
「いちいち喚くな、ただの凌辱と虐殺だ」(桓騎)
「最初に言ったの忘れたのか?」
「俺は何でもやると」(桓騎)
「(全て勝つため?) ああ、だからこうやって勝つんだよ」(桓騎)
「そいつも同じことを言った、これが”戦争だ”と」
「だがそれは戦争じゃねェ!!」(信)
「俺ももう五千将だ、侵攻がどういうもんか昔よりさらに分かってる」(信)
「だが、敵や制圧した地での反乱に対する刃と」
「無力・無抵抗の人間に向ける刃は決して違う」(信)
「それを同じだと…それが戦争だと言い切る奴は、武将・兵士じゃなくただの略奪者だ」(信)
「そんな奴らがどれだけ強かろうと、どれだけ勝ち続けようと」
「”中華統一”なんてできるわけがねェ!!」(信)
「参った、お前が一番だ」
「俺が今まで会った中で、お前が一番の悪党だと言ってんだよ、信」(桓騎)
「中華統一……」
「お前のその目…為しとげりゃ戦がなくなる平和な世が来ると言いてェんだろ?」(桓騎)
「極悪人が」
「中華統一ってのは強大な軍事力をもって」
「敵国が抵抗できなくなるまでとことん殺しまくって」
「その国の土地と人と物、全部をぶん捕っちまうことだ」(桓騎)
「”大殺戮”・”大略奪”」
「それをやって平和な世界が来たって喜ぶのは秦人だけだ」(桓騎)
「誰が言い出したか知らねェが、たまにいるんだよ」
「狂気じみた正義ふりかざして、しでかしちまうバカが」(桓騎)
「オイ。斬られないと思っているのか、お前」
「相応の覚悟で来ているぞ、私達は」(羌瘣)
「俺を殺って、その後飛信隊が皆殺しにあう覚悟だよな」
「面白ェ。見せてもらおうか、その覚悟」(桓騎)
「自業自得だろうが、今までやってきたことは何だったんだ!!」
「何年飛信隊をやってるんだ」(羌瘣)
「お前は同郷で…古参で一番長い人間のくせに…」
「全く信のことが…全く飛信隊のことが分かってないじゃないか!!」(羌瘣)
「目障りだ、失せろ」
「俺の気が変わる前にな」(桓騎)
「分かってるだろうが、俺がキレたら雷土よりおっかねェぞ」
「今のうちに消えろ」(那貴)
「でもそこは譲りたくない」
「ガキ二人で胸高鳴らせた、誰より強くてかっこいい天下の大将軍に…」
「俺は本気でそういう将軍になりたいと思ってる」(信)
「そして、飛信隊もそういう隊でありたいと思ってる」(信)
「桓騎軍に入ってて分かったんだ、飛信隊と桓騎軍の決定的な違いに!」
「桓騎軍と違って飛信隊は、渇いてねェんだ」(尾平)
「心が渇いてねえから、略奪も凌辱も必要ねェんだ」(尾平)
45巻
「こんなの…軍略でも戦術でもない…」
「こんな勝ち方…昌平君でも李牧でも決して真似できやしない」(河了貂)
「結果だけを見れば、大軍略家の出せる以上の結果を叩き出したことになる…!」(河了貂)
「だがその(止める)ためには、奴の上に行く必要がある」
「桓騎より先に大将軍になる」(信)
「悩むことはないだろ信」
「お前は尾平に言ったように、お前のやり方で天下の大将軍になればいいんだ」(羌瘣)
「……ただの気まぐれですよ、いつもの」
「ただ、まー強いてあげるなら」
「飛信隊(あっち)で食う飯ってうまいんスよね、意外と」(那貴)
「ここで慶舎に誓っておきます」
「私がこの手で仇(あだ)を討つと」(李牧)
「あれ(合従軍)程、大がかりなものを興せる人物は今の中華には見当たらぬし」
「そもそも──あんなものはこの俺が二度と作らせはせぬ」(昌平君)
「(大逆罪?) じゃがな、かつて東帝・西帝と中華に恐れられた時代もあった」
「東の斉王と西の秦王が直接会って対話する意味を考えると」
「この干からびた首など蝶の羽より軽いものだぞ」(蔡沢)
「大王、この蔡沢の最後の仕事としてお引き受け頂けませぬか」
「列国を滅ぼさんとする王として」
「それを東の玉座で受けて立つであろう斉王と舌鋒をお交わし下さい」(蔡沢)
「密室でただしゃべるだけならわざわざ秦まで足を運ばぬわ」
「儂は秦という国と王を感じに咸陽(ここ)まで来たのだ、丞相よ」(王建王)
「あの時合従から離脱した本当の理由は」
「合従が秦を滅ぼしてその土地と人間を六国で取り合った後の世が」
「見るにたえぬ汚濁になると思ったからだ」(王建王)
「……だが、あろうことかそこで救われたお前達が今度は」
「六国を滅ぼし全てを手に入れて、それ以上の汚濁を示そうとしている」(王建王)
「中華統一を汚濁と断ずるならば、俺は断固としてそれを否定する」(嬴政)
「だがな秦王、”六国征服”と”人を殺さぬ世”」
「この間にはとてつもなく重い現実が抜け落ちている」(王建王)
「”国”を滅ぼされ、その日より仇敵国の人間に──」
「強制的に”秦人”にならされる六国の人間達の苦しみだ」(王建王)
「”国”とは民にとって”根”をはる大地のようなものだ」
「その国が失われれば、人は必ず心身共に朽ち果てる」(王建王)
「即ち、今の六国の人間全てが朽ち果てる」(王建王)
「それを聞くためにはるばる咸陽まで足を運んだ」
「もし答えが用意されていないままの六国征服だと言うのなら…」
「その前に第二の合従軍で秦を滅ぼさねばならぬぞ」(王建王)
「これが征服戦争ではなかったことを説いて、理解してもらう必要がある」(嬴政)
「違う。中華統一は、新国建国の戦争だ」(嬴政)
「この中華統一の成功は、全中華の民を一手に実行支配するものにかかっている」
「だがそれは絶対に”人”であってはならない!」(嬴政)
「”法”だ」
「”法”に最大限の力を持たせ、”法”に民を治めさせる」(嬴政)
「”法”の下には元斉人も秦人も関係ない」
「王侯貴族も百姓も関係なく、皆等しく平等とする!」(嬴政)
「斉王よ。中華統一の後に出現する超大国は」
「五百年の争乱の末に”平和”と”平等”を手にする”法治国家”だ」(嬴政)
「それではもはや、”王国”とも言えぬぞ」(王建王)
「小事だ」(嬴政)
「その(戦う)時──秦王の目の色が今と変わって汚く濁っていたならば──」
「斉も死力を尽くして国を守るとするかのォ」(王建王)
「この中華はもううんざりするほど血を流してきたが、泥沼からの出口が見つからぬまま」
「これからもずっと血を流すのだろうと──」(王建王)
「儂はもはや、出口はないものと思っていた…」
「──がひょっとしたら出口の光を今見つけたのやもしれぬ」(王建王)
「秦王よ、そなたにならこの全中華の舵取りを任せてもよいぞ」(王建王)
「李牧が化物であることは承知している……」
「そしてその奴を倒さねば六国制覇がかなわぬことも重々承知だ」(嬴政)
「これより出ずる秦の大将軍達が必ず李牧の首を取る!」(嬴政)
「最後に為して行った仕事は真に大きかったぞ、蔡沢」(王建王)
「歓迎されておらぬのは百も承知です」
「──が、間に合ううちに何としても大王様に上奏したきことがあり参上しました」(李牧)
「秦王様、どうか手遅れになる前に中華統一の夢をあきらめて頂きたい」(李牧)
「大王様。私は正直、あなたのことを心から尊敬しております」
「──本当なら、あなたのような王にお仕えしたかった」(李牧)
「そこから先は正に、血で血を洗う凄惨な戦が待っています」(李牧)
「統一後の理想の世など、そこで倒れていく者達に何の慰みになりましょう」
「流れる血も、大量の死も、紛れもなく悲劇そのものです!」(李牧)
「(手を取り合っての平和?) ない。統一以外に道はない」(昌平君)
「この戦で全中華を悲劇が覆うことなど百も承知だ!」
「だがそれをやる」(嬴政)
「綺麗事など言う気はない!」
「よく聞け李牧と趙の臣達よ」
「秦は武力を以って趙を含む六国全てを攻め滅ぼし、中華を統一する!!」(嬴政)
「血を恐れるなら、お前達は今すぐ発ち帰り趙王に完全降伏を上奏するがいい!」(嬴政)
「残念ですが”宣戦布告”、しかと承りました。」
「しかし最後に後悔するのは秦国の方ですよ、大王様──」(李牧)
「本気で秦が六国制覇に乗り出すと言うのなら」
「この中華七国で最初に滅ぶ国こそ”秦”だと言っているのだ」(李牧)
「そうなる前にこちらはお前を討つと言っておるのだ、李牧」(昌平君)
「今いる秦将全員がまとめてかかってきても、この李牧の相手ではない!!」
「それでもやると言うのならかかってくるがいい!!」(李牧)
「だがこれだけは覚えておけ」
「趙は絶対に落ちぬ」
「この戦いで滅びるのは秦であると!」(李牧)
46巻
「よくあんな苦しい選抜を残ったな、お前ら」
「大したもんだ」(信)
「だがここまできたら絶ってェやり遂げて、さっさと一人前の兵士になりやがれ!!」
「お前ら全員もう、大武功めがけて走り続ける飛信隊なんだからよ」(信)
「”法の番人”の異名は伊達じゃない」
「李斯──奴こそ”法”の化物だ」(肆氏)
「法家は法学書を読み、新しき法の草案を考えるものだ」(李斯)
「俺に来ずともよい」
「俺が死んでもお前が死んでも、法は生き続ける」
「成長をとげながらな」(李斯)
「法とはそういうものだ」(李斯)
「中華を一国とした法治国家」
「お前のしゃべっていることは、法家の真髄に触れている」
「お前如きの理解が届く所ではない」(李斯)
「──中華を統一できたと仮定し」
「そこで単純に国民が増えたという認識で法作りに入ると大失敗に終わる」(李斯)
「(敵国の人間だから?) 違う、文化形成が違うからだ」(李斯)
「そもそも”法”とは何だ?」(李斯)
「馬鹿な!」
「刑罰とは手段であって、法の正体ではない!」(李斯)
「”法”とは願い!」
「国家がその国民に望む、人間の在り方の理想を形にしたものだ!」(李斯)
「統一後、この全中華の人間にどうあって欲しいのか、どう生きて欲しいのか」
「どこに向かって欲しいのか、それをしっかりと思い描け!」(李斯)
「中華統一の話を聞いた」
「統一後に制定される法についても…」(李斯)
「とてもここにいるお前達の手におえる代物ではない」
「それに着手できるのは、この中華でも俺と韓非子くらいだ」(李斯)
「かつての政争で恨みを抱いたのはお互い様だ」
「だがその時期は過ぎたと心得よ」(嬴政)
「誠に秦国一丸となって立ち向かわねば、中華統一の宿願は形も残らず崩れ去るぞ!」(嬴政)
「力を入れているということは、気を取られているという見方もできます」
「よって我々は西部攻略を”囮”にして南を抜け」
「一気に邯鄲の喉元”鄴”を攻め落とします!!」(昌平君)
「鄴と邯鄲は目と鼻の先」
「手前の攻略を無視しての鄴攻めが、童の夢想の如き話であることは重々承知です」(昌平君)
「しかしこれ程、突飛な作戦でなくては、あの李牧を出し抜くことはできません」(昌平君)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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